俳優・市村正親、鹿賀丈史、村井良大、上原理生、高野菜々、実咲凜音、福井晶一、鶴見辰吾が20日、都内ホテルでDaiwa House presentsミュージカル『生きる』（演出：宮本亜門）製作発表会見を開いた。
1952年に黒澤明監督が世に送り出した映画『生きる』が原作。定年を間近にした平凡な男が、死を目前に見つけた夢を実現するために、懸命に生き抜く姿を描く。2018年に日本発のオリジナルミュージカルとして上演され、20年に再演、そして今回3度目の上演を果たす。初演よりダブルキャストで主人公・渡辺勘治を演じている市村、鹿賀はそのままに、メインキャストの多くを一新し、フレッシュなキャストが出そろっている。
会見前に、まずは6曲の楽曲が披露。キャラクターの心情や性格が感じられるような歌唱で魅せる。そのなかで鹿賀が歌唱した3曲目『二度目の誕生日』は今日から生まれ変わる新しい人生を生きる決意を誓う、明るいナンバーに。市村はその鹿賀の楽曲とは対になるような、夢の実現のあと一歩というところころで身体に強い痛みを感じ、それでも生き抜こうとする楽曲『最後の願い』を切々と歌い上げた。
その後会見へ。3度目の上演へ市村は初演の思い出として、「けいこしていて、毎日台本が変わって行って、台本というものがなかたんです。毎日変わっていくスリリングなけいこでした。そして、いざ幕が開くと、お客さんに爆発的な拍手を頂いて、ああ、いい作品なんだなと思って。2020年の再演は、コロナに痛めつけられている雰囲気のなかでやっている『生きる』がそれはそれで合っているなという感じがしていました。そして本公演は、（この時期に）バッチリ合っている感じがしています」と、5年という時間の流れを踏まえて話をしつつ、「今回濃いキャストがそろっているので僕が霞むんじゃないかなって」と、キャスト陣を見回すと、隣の席にいた鹿賀は「そんなことない（笑）」と、2人の関係性を窺わせるようなツッコミを見せた。
続けて、鹿賀は、「3度できる。そういう喜びに浸っております。“市ちゃん”（市川）が今言いましたけど、初演は緊張もあり台本を直して直してのものでした。今年はどうかなと初演から5年ですか。この間に世界の勢力地図というものはずいぶん変わりました。われわれ日本はどう生きていくのかとか、物価高をどう乗り切るんだろう……とか、直面する『生きる』ということに戸惑っている時期だと思います。われわれもそれは同じで、昔より仕事が減ったりしていますが、だからこそ、『生きる』というのは深いテーマです。ぜひ劇に足を運んで頂いて、われわれ日本人はどう生きていこうかということを前向きに捉えて頂ければ、われわれ出演者一同の喜びはありません。感動と生きる力を持って帰ってもらえたらと思います」と、メッセージを寄せた。
今回からの新キャストとして高野は、作品から感じたこととして、「1人1人が1つの目標に向かって生きていかなければいけないというテーマではなく、どこにでもいる男性が自分の人生をどう生きるか向き合ったときに、日常性の中に感じるプレゼントを感じていい作品だなと思いました。死生観をテーマにしているのですが、歌ありダンスありで、そのギャップもこのミュージカルの魅力だなと感じています」と、実感を。
福井も「こんなにもミュージカルの題材に適しているんだなという印象があります。そんななかオファーを頂いて、自分が大好きな作品だったので嬉しく思いました。個人的には劇団四季の大先輩がいらっしゃって、ずっと共演を願っていたので、背中を見ていろんなことを学びたいと思います」と、噛みしめるように話す。ちなみに、福井は「以前、北斗の拳という作品でラオウ役を演じていたので、また暴力で支配する役なのかと（笑）」と、冗談めかして、会場を爆笑に包んでいた。
そして鹿賀から「『生きる』ということへの、正面切っての舞台です。ぜひご覧頂ければ」と、コメントを寄せると、市村は「自分が出ている作品を褒めるというのも恥ずかしいですが、初演のときに志村けんさんが観に来てくださったんです。本当にこの作品が気に入って、涙を流しながら、『これが本当のミュージカルだ』と、言ってくださったことを思い出して。その後、けんさんの誕生日もお祝いに行ったんですけど、そのときにも周囲の方に宣伝してくれていたんです。天下のコメディアンの志村けんさんお墨付きです。彼も天国でこの芝居を観て、まわりに観ようよと言ってくれていると思います。そして、またやれることが、本当にありがたいなと思うのと生きてこの芝居に参加できることが素晴らしいことではないかということを、みなさんにお見せしたいと思います」と、エピソードとともに意気込みを。その最後に、市村は「新国立劇場で“しんこく”にならないように（笑）」とダジャレを飛ばし、鹿賀から「言わないと思ったのに～！」と、ツッコまれていた。
Daiwa House presentsミュージカル『生きる』は東京公演は9月7日から同24日まで新国立劇場 中劇場、大阪公演は9月29日から10月11日まで梅田芸術劇場メインホールにて上演予定！
