映画『COWBOY BEBOP 天国の扉』スペシャル上映会が9月23日、東京・新宿ピカデリーでEMOTION 40th Anniversary Program『COWBOY BEBOP 天国の扉』スペシャル上映会が開かれ、渡辺信一郎監督、スパイク・スピーゲル役の山寺宏一、フェイ・ヴァレンタイン役の林原めぐみ、エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世役の多田葵が登壇し、司会は作品の舞台設定と脚本を担当した佐藤大氏が務めた。
オリジナルアニメ『COWBOY BEBOP』は、1998年に放送されたアニメーションで、そのテンポのいいストーリー展開にセンスのいいミュージック、それぞれのキャラクターにスパイスの効いたエピソードがあるなど、観る者を熱狂させたことで知られている。その劇場版となる『COWBOY BEBOP 天国の扉』は2001年9月に上映されバイオ兵器を使用したテロにいつのまにか巻き込まれてしまった主人公のスパイクたちの姿が描かれる。今回の上映は、テレビ放送25周年と、EMOTIONレーベル40周年を記念したイベントとなっている。
以下、公式レポート部分。
司会を務める佐藤さんが呼び込む形で、渡辺監督、多田さん、林原さん、山寺さんがステージに登場。順番に登壇の挨拶をする中で、山寺さんが「今日の出演はこのメンバーですが、きっと石塚運昇のオヤジが、信本さんと一緒に上の方に来ていると思うので。運昇さんはいじられるのが大好きだから、滅茶苦茶面白い話をして明るく過ごしたいと思います」と語った。2018年に亡くなられたジェット・ブラック役の石塚運昇さん、2021年に亡くなられたシリーズ構成と脚本を担当した信本敬子さんという『カウボーイビバップ』にとって無くてはならないふたりを偲び、みんなで天に向かって手を振りつつ、それでいて明るい雰囲気でトークショーがスタート。
まずは佐藤さんが、「25年経ったことに対して、改めて感じた気持ちをお願いします」と渡辺監督に振ると、「歳を取ったなと。大体アニメって放送が終わったら忘れられてしまうと思うんですが、25年経ってもイベントに来てもらえるというのは本当に嬉しいですね」と感想を述べた。
そうした冒頭のやり取りを経て、トークショーのメイン企画となる、事前にウェブサイトを通してファンから寄せられた質問に対して、登壇者が答えていくコーナーへ。
最初の質問は、「アフレコ収録や制作現場など、当時の様子で今も印象に残っていることはありますか?」というもの。
この質問では、収録当時は高校生だった多田さんがルーズソックスにミニスカートという制服姿でアフレコの収録に来ていたこと、収録の後は毎週飲みに行っており、キャスト・スタッフともに仲が良かったことなどが語られた。収録現場の雰囲気の良さに対して林原さんは「毎週飲みに行っていた影響は大きかったですね。ご飯食べて、話をしてその場で出る話し方の癖が収録にフィードバックされたりして」と関係者同士のコミュニケーションが作品の雰囲気に影響していたことを思い出していた。
さらに飲みの席では石塚さんと信本さんが仲良く話していたこと、音楽を担当した菅野よう子さんも度々飲みの席に参加したことなど、スタッフとキャスト間の中の良さが改めて語られた。
続いては「制作していて、または演じていて皆さんの中で思い入れの強い話数、個人的に好きな話数はありますか?」という質問。これに対して多田さんはエドが初登場し、佐藤さんの脚本デビュー作でもある第9話「ジャミング・ウィズ・エドワード」、林原さんはマッドピエロ・東風が登場した怪奇色の強い第20話「道化師の鎮魂歌」とお気に入りの話数を語った。
一方山寺さんは、トークショーでこの質問があるだろうと予想し、そのために全話を見直し、スマートフォンに各話の感想をメモしていたと語り、本イベントへの気合の入りっぷりが明かされた。山寺さんは、なかなか気に入ったエピソードを絞りきれない中で、スパイクの過去の話が絡むエピソードから最終話の第25話、第26話の「ザ・リアル・フォークブルース」をチョイス。さらに付け加える形で、スパイクの宿命の相手であるアンディが登場する第22話「カウボーイ・ファンク」も挙げると、佐藤さんから信本さんの書く脚本の幅の広さが指摘され、みんなで驚くひと幕もあった。
渡辺監督は、自身が意味のないB級映画が大好きだったからこそ、自分でもB級映画のようなエピソードを作ろうと臨んだ謎の宇宙生物が登場する第11話「闇夜のヘヴィ・ロック」を挙げた。ちなみに、劇中に登場する“開かずの冷蔵庫”のモデルはプロデューサーの南雅彦さんの引っ越しに立ち会った際に体験したことがヒントになっているという話も披露された。
その他には、「ビバップを制作していた、またはキャラクターを演じていた当時(25年前)の自分に今、声をかけるとしたら何と声をかけますか?」といった質問が寄せられた。
長いつきあいである登壇者同士の息の合ったやり取りで約1時間にわたるトークは大いに盛り上がりをみせ、あっという間に終了の時間に。最後は登壇者ひとりずつ、ファンのみなさんへ挨拶を行った。
「こうして見ると、本当に様々な年齢層、性別の方に見ていただいているんだなと実感して、やっぱりすごい作品に関わっているんだなと思いました。毎回イベントに呼んでいただいて、こうして皆さんと直に会う機会を設けていただけてすごく嬉しいです。これからもずっとずっとずっと、孫、ひ孫の代までずっと“いい作品だよ”って言い続けて、ファンの分母をどんどんどんどん広めていっていただけたら嬉しいです」(多田)
「こういう“いい作品”っていつ見ても楽しめる。25年前の自分に戻る人もいるだろうし、今ここから見始めてこの作品から何かをもらう人もいるだろうと。そういう感じで、本当に『ビバップ』の見方には正解も不正解もないと思います。この作品には「〇〇みたい」もないし、「〇〇すべき」もない。この作品の緩いけど骨太なところを、末長く味わっていただければいいなと思います。またどこかでお会いしましょう」(林原)
「今回、改めて第1話から見直してみて、やっぱり最高に面白いなと思ったんです。本当にいろんな要素が詰まっていて、渡辺監督を中心にこの奇蹟のような作品ができたと思います。今は配信でいつでも作品を楽しめるし、サブスクで菅野さんの音楽も聴くことができる。いろいろな楽しみ方ができるので、これからもずっとこの作品を愛し続けていただければと思います。さらに監督をはじめこの作品に関わったスタッフの皆さん、キャストの皆さん、そして信本さんに運昇さん、皆さんに感謝しています。そして、何よりもずっと『ビバップ』を愛し続けている皆さんに一番感謝しております」(山寺)
最後は渡辺監督が、「『カウボーイビバップ』は本当にいいスタッフやキャストに出会えた作品で、一緒にやった人たちは戦友みたいな感じなんです。戦友の何人かは亡くなってしまった方もいるんですが、信本敬子脚本で「ちょっと久々に一緒にやろうぜ」と言って始めた『ラザロ』という作品を今は制作しています。初期の企画段階は信本と一緒にやっていて、途中で亡くなってしまったんですが、これを引き継いでちゃんとした作品として残したいなと。それがこの『ビバップ』から繋がることの、ひとつの供養になるのかなと思っています」と語り、25周年を記念したトークショーは大盛況のまま幕を閉じた。
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