声優・福山潤が9月30日、東京・新宿文化センターで一人舞台『福山潤スペシャルイベント2023~NUU DRAMA PARADISE!!~』を開催。その公式レポートが公開となった。
ライブパートありの有観客イベントは2022年3月の『福山潤スペシャルイベント2022-DIES IN NO TIME,JUN!-』以来で、約1年半ぶりとなる。
今回のイベントは、福山が架空のラジオ「福山潤のシンヨコナイトレディオ」のパーソナリティーとして番組を進行するというこれまでにない切り口で、声優界随一のトーク力を誇る福山の魅力が存分に発揮されたワンマンショーとなった。今回は豊富な写真とともにイベントレポートをお届けする。
会場の照明が落ちてイベントパンフレットのメイキングムービーが上映されると、いよいよショーの開幕。ステージ上のDJブースに座る福山の第一声は「今夜も始まりました!『福山潤のシンヨコナイトレディオ』!」で、あくまでラジオ番組の公開生放送という体裁で進行する。福山が「毎週この番組を聴いてくれている人はどれくらいいる?」と問いかけると、さっそく多くの観客が反応。もちろん「シンヨコナイトレディオ」は架空のラジオ番組なわけで、どうやらかなりノリの良いお客さんが集まったようだ。
OPトークが終わり、最初の企画は「史上最弱のザコ伝説」。TVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』で福山が演じている最弱の吸血鬼・ドラルクにちなみ、「日常生活のなかでダメージを受けて砂になってしまったエピソード」を披露するというもの。あらかじめ募集していた観客のエピソードを読み上げ、それに対して福山も自身のエピソードを返していく。最初の「パソコンの不具合で砂になった」という観客エピソードには、福山もパソコンは苦手だと告白し、起動するたびに使ったことのないアプリのウインドウが立ち上がってしまう切ない話を披露。
続く「服のセンスが悪くて砂」に対しては、福山が後輩に服を譲ろうとしたところ、「写真で確認させてほしい」と言われたほろ苦いエピソードを語り、会場の笑いを誘った。福山はその後も観客からの砂エピソードを受けつつ、続々と自身のエピソードを返していく。福山の知られざる一面やプライベートが垣間見える楽しい時間となった。
「史上最弱のザコ伝説」が終わるやいなや、間髪を入れずにライブコーナーへ。「それではここで曲をお聴きいただきましょう!」とラジオ風に曲名を告げると、そのままステージ中央へ移動して『NEW DRAMA PARADISE』を歌い始める。今まで和やかに福山のトークを楽しんでいた観客は、あまりにシームレスなライブへの移行に一瞬戸惑いつつも、会場のボルテージはぐんぐんと上昇していく。どこか郷愁を感じさせるメロディアスな楽曲を力強く熱唱する福山。
続いては『HEALTH-iNG』。イントロが流れ、会場がダークでロックな雰囲気に染まっていくなか、その空気を切り裂くかのように健康の大切さを訴えかけるMCを入れるのが、じつに福山らしい。それでも楽曲に入ると最後までクールに歌いきり、最初のライブコーナーは終了。すぐさまラジオブースへと戻った福山は、TVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』の関連曲である2曲の制作秘話を語った。
続いて「ザ・プレゼンテーションショー」のコーナー。これは箱のなかからランダムで引いたお題に対して、福山が即興でプレゼンテーションをしていくというもの。それだけでも十分に難しいが、さらに今回は、ランダムに表示される5枚の画像をプレゼンに盛り込んでいかなくてはならないという超難関企画。
お題と画像の内容については何も知らない福山だが、アドリブに絶対の自信を誇るだけに、この時点ではまだまだ余裕の表情を見せていた。こうして始まった1回目のプレゼン、福山が引いたお題は「モテる男の条件」。ところが最初の画像としてスクリーンに映し出されたのは「ゴリラ」で、これには会場も大盛り上がり。しかし福山はすぐさま「草食化している昨今の男子に必要なのは不変のオス性、つまりゴリラ」と滔々と語りだすなど、さすがの対応力を見せる。
写真はこの後も「ギター」、「クリスマス」、「ヤギ」、「タヌキの置物」と続くも、その都度「男のモテ要素」につなげて話し続け、「変化をしていくのは私のためと思わせてくれる人こそがモテる男の条件なのではないでしょうか?」と締めくくると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。さすがのトーク力を見せつけた福山だったが、その直後には「このコーナー、めっちゃ大変だよ!」と疲労困憊の様子。改めて、この企画が想像以上にハードであることが観客にもヒシヒシと伝わってくる。
そして第2回目のプレゼンのお題は「福山潤の野望」。自身のことでありながらも、プレゼンでは「果たして彼に野望はあるのでしょうか?」など、終始第三者目線で進行していく福山。最初に「家系ラーメン」の画像が表示されると、「じつは彼は家を大切にする家庭的な男」と、家系の「家」をピックアップして話を広げていく。その後もランダムに表示される画像に合わせて、「テリトリーを大切にする」、「愚直に基礎を積み上げる」、「人気を欲しがらない」、など、本当なのか嘘なのか分からない福山のパーソナリティーが明かされていく。
最後は「声の仕事を通して、ちょっとでもみんなの活力になれば」と結ぶも、これは本音であることを察した観客が熱心に聞き入っていたのが印象的だ。自分のことを最後まで「彼」と呼び続け、あくまで第三者の立場を貫いたのは、もしかすると自身の本音を語る気恥ずかしさがあったのかもしれない。ともかく、こうしてアドリブの極地とも言える過酷な企画は幕を閉じた。続いて本日2回目のライブパート。『Glowing with you』では爽やかで透き通った歌声を、『オレンジ色の手紙』ではバラードらしいしっとりとした歌声を聴かせて観客を魅了した。ラジオブースに戻った福山は、改めてこの2曲の印象を語った。『Glowing with you』は2019年のイベントでファンから募集したワードをもとに作られた曲。
とくに「髪型の情緒が不安定」という歌詞には「自分のことがバレているな」と感じていると話すと、ここ数年髪の毛を伸ばし続けている福山だけに、会場は拍手喝采となった。さらに『オレンジ色の手紙』についても、捻った歌詞や楽曲が多い福山のレパートリーで、珍しくド直球でノスタルジックであることを挙げて、強い思い入れがあると語った。
気がつけばイベントもいよいよ佳境。続くコーナーは観客参加型の「NUU PROFILE PARADICE」。福山のプロフィール欄に記入したら面白そうな「趣味」をX(旧Twitter)に書き込み、最終的にもっとも支持の高かった趣味をプロフィール欄に期間限定で追加するというもの。さまざまな書き込みが集まるなか、それらを拾いながらコメントしていく福山。「ハカダンス」(※ラグビーニュージーランド代表のパフォーマンスで有名)という書き込みを見つけた福山は、実際にハカダンスを披露して会場が大盛り上がりする場面も。
数多くのアイデアが出た結果、観客の拍手によって新しい趣味に決まったのは、なんと「リカちゃん人形遊び」。この結果には福山も「マジか!」と驚愕しつつ、それでも覚悟は決まった模様だ。さらにコーナー後半では、福山がクレイジーカートでのタイムアタックに挑戦。ステージ上に設けられた特設コースを走り、スタッフの出したタイム「29秒89」を上回ることができればチャレンジクリア。スタート直前、「頑張って?!」との黄色い声援に「頑張るよ!」と意気揚々の福山だったが、スピンを連発してしまいチャレンジ失敗、罰ゲームとして「スタッフ特製野菜ジュース」を飲むことに。「ちょうど水分補給がしたいので、ぐぐいと美味しくいただきたい」と強気に一気飲みするも、案の定、悶絶の表情を浮かべるハメとなった。
続いては本日3度目のライブパート。懐かしの歌謡曲テイストに溢れた『路地裏からの空』を渋?い低音で熱唱したかと思えば、続く『パース・オブ・パーソンズ』ではアーティスト・福山潤の代名詞とも言えるラップの魅力をたっぷりと感じさせてくれた。歌い終わった福山は、余韻に浸る間もなくすぐさまラジオブースへ戻って告知タイム。ここで「ミニアルバムの制作決定」という大ニュースが飛び出すと、会場からは本日イチとも言える拍手と歓声が沸き起こった。盛りだくさんだったスペシャルイベントもとうとうエンディング。
福山は「ラジオ番組という形であれば、僕らしさの提示ができると改めて感じた」と手応えを語ると、会場は大きな拍手に包まれた。観客への感謝を述べつつ「いい言葉だけは耳に残るので、その反応だけを受け取りたい」と福山らしいコメントで締めくくり、最後は『DIES IN NO TIME』を歌って終演となった。
福山潤による完全なる一人舞台。それ自体はこれまでも『ひとりのBOCCHI SHOW』などで貫いてきたスタイルではあるものの、約2時間に及ぶイベントで、一切の幕間パートもないのは珍しい。最初から最後まで数秒の沈黙さえも許さないとばかりに喋り続ける話術はもはや職人芸で、改めて「福山潤」の異質な存在感が浮き彫りとなった。福山が業界仲間から言われたという「あなたは業界に一人ならいいけど、二人はいらない」という言葉がしっくりくる、じつにオリジナリティー性に溢れたイベントだったように思う。今後の活動にも注目していきたい。
■福山潤スペシャルイベント2023~NUU DRAMA PARADISE!!~セットリストプレイリスト
M1.NEW DARAMA PARADISE
M2.HERLTH-iNG
M3.Glowing with you
M4.オレンジ色の手紙
M5.路地裏からの空
M6.パース・オブ・パーソンズ
M7.DIES IN NO TIME