劇場アニメーション『さよならの朝に約束の花をかざろう』(監督・脚本:岡田麿里/配給:ショウゲート)完成披露イベントが13日、東京・新宿バルト9で開かれ主役のマキア役を務める石見舞菜香、岡田監督、P.A.WORKS社長でプロデューサーの堀川憲司氏が登壇し、司会はニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが務めた。
感動を呼んだ名作アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(通称:あの花)、『心が叫びたがってるんだ。』(通称:ここさけ)の脚本を手掛けた岡田氏が監督として初めて世に送り出す作品。そのポスタービジュアルから単純なラブ・ストーリーのような印象を受けるかもしれないが、その内容は大河ドラマのような感覚で楽しめ、思いもしないような大きな感動が待っている仕上がりとなっている。
上映後の舞台あいさつとなったが劇場内で涙をぬぐう観客が続出するなか、石見は初々しさ全開のあいさつで和ませながらのスタート。
5年前に構想し、3年間は制作に費やしたという本作。そのなかで堀川氏から岡田監督へ「『いつか岡田麿里を100%さらけだした作品を観てみたい』と言われて。でも、アニメーションは共同作業だから自分が観たい作品なら近づけるんじゃないかと思って、勢い込んで監督をやらせてくださいとお願いしました」と、監督となった経緯を。
岡田監督が監督を引き受けるにあたっては相当な覚悟があったようで堀川氏は「飲み屋でお刺身が出てきて醤油を小皿につごうとして醤油を撒き散らしながら『監督やらせてください』って言われて」と、そのシーンがアニメーションで思い浮かびそうなドラマがあったのだとか。これに岡田監督は恥ずかしげだったが、堀川氏は「僕もグッと来ましたね。そんな一面を見たことがなかったので、よっぽど覚悟を決めてるんだろうなって思いました」と、自身の肚も決まった瞬間だったよう。
そして岡田監督は、作品を作るに当たり繊細な表現や「普段より型にはまらない感情地続きの感情を描いてみたい。『凪のあすから』という作品みたく時間経過で生まれる感情の物語をオリジナルだからやってみたい」という気持ちから、現代劇よりファンタジーをチョイスしたそうだ。
本作にオーディションで選ばれたという石見は、ほかの作品と違いキャラクターの絵がない状態で演じてほしいと言われたと明かし「マキアの感情が爆発するシーンだったりしました」と、しみじみ。
そんな石見を主演に選んだことへ、岡田監督は後でメモを見返したところ「本当に『見つけた!』って書いてました」と、裏話が語られ、石見もこれには「泣きそうです!私日記とかに反省をばーって書くんですけど、この日の日記には反省点だらけで、このままじゃダメだというのがすごく書いってあって。だから、マネージャーさんから教えて頂いたときに本当に嬉しいのと同時に、結構通じる面と言うかマキアの性格に似た部分はあるのかなって思いました」と、喜びとともにプレッシャーも感じていたと告白。
それはアフレコにも出てしまったようで、石見は「私は割と最初は背伸びをして、大げさに近づけてしまって声も演じていたんですけど、岡田監督から『舞菜香ちゃんのままで演じてください。そのままを選んだから』と言われてそうするようにしていました」と、より石見本人に近い感じが出るものになったようだ。
さらに、作品の台本読み合わせのときのことへ石見は、「言葉にならない感情がただひたすらに『ううっ……』て、なって。いろんなスタッフさんがいらっしゃったんですけど、みんなで泣いてたくらい。キャストの方でも『次の現場どうしよう……』って感情を引きずるくらいで」と、キャスト陣も感動するものだったと証言。
堀川氏も「できあがって観たときに、スタッフみんなが喜んだ顔を見て、僕も監督に感謝しました。スタッフを満足させてくれてありがとうという気持ちになりました」と、お礼したくなる仕上がりだったそう。
また、話が脱線して、P.A.WORKSの代表作の1作となったTVアニメ『花咲くいろは』の際にはもともと温泉旅館を描くつもりはなかったという話が持ち出され堀川氏は「あれは感謝していて、僕の出すテーマは、岡田さんいわく売れないらしいんです」と、漏らすと岡田監督は「そういうこと全部私が言ったことにするんですよ!(笑)」と、“抗議”もし笑いを誘う一幕もあった。
最後に岡田監督から「本当にいろんなスタッフ全員気持ちが込められたものになります。アニメのスタッフって『すげーな!!』って思う作品です」と、スタッフに感謝を伝えていた劇場アニメーション『さよならの朝に約束の花をかざろう』は24日より全国ロードショー!