俳優・岡本圭人、岡本健一父子が19日、都内で舞台『La Mere 母』『Le Fils 息子』(ともに演出:ラディスラス・ショラー)制作発表会見を俳優・若村麻由美とともに開いた。
フランスの劇作家フロリアン・ゼレール氏が手掛け、2010年にパリで初演され、さまざまな国で上演された2作品が東京芸術劇場にて同時上演。
『La Mere 母』は愛する子どもたちのために家庭を第一に過ごしていたアンヌ(若村)を描いたもので、子どもたちもすだち、夫までも去ろうとしている悪夢のなかで思い出を回想するというもので圭人は息子役、健一は夫役を演じる。一方、『Le Fils 息子』は両親が離婚してしまい、学校を退学になってしまったニコラ(圭人)と父親ピエール(健一)との関係性を描く。
圭人は「同時上演で大変だと思います。けれど新しい演劇体験になると思います」と、胸を弾ませれば、健一は思い入れが強いのか、2作を熱弁。『Le Fils 息子』へは「良かれと思ってやっていることが子供にとってみたらそうじゃない、うまく伝わらない」ことが「誰にでもあることで、フランスだけじゃない日本にもある、親子の関係を痛烈に描いているなって思いました」。『La Mere 母』へは、「母は1番大切な存在だと思うんですけどそれを教えてくれる気がしています」と話すとともに「これはおかしくなっちゃうのというのが分かる。だけど、離れる寂しさを感じています」と感想を寄せた。
圭人は21年の際の思い出として、「自分にとっては初めての舞台、俳優になって父親との憧れの親子共演で、いろんな思い出があるんです」と切り出すと、そのなかでとくに健一からの、「初日15分前の楽屋に来てくれてすごくいい言葉をくれたんです。『これから、お前の新しい人生、新しい道が広がっていく。自分を信じてこれからもやっていってほしい』と」と、一見とても心温まるものだったが、その瞬間だけは違い「今じゃないでしょ!」という気持ちになったという。それもそのはず、ニコラという役は満たされない少年という役どころだったが「これから不安定なニコラを演じるのに、自分がそのとき心が満たされそうになって、どうしようって思って、涙しそうになって。だから『今じゃないでしょ!』って。だからといって、父親は悪くないんです(笑)」と、ありがた迷惑な状況に陥ってしまったそうだ。
ちなみに、圭人は今回翻訳にも関わったとそう。英語版なども参照にしながら、フランス語の主語などにも気をつけ、「直訳すると翻訳調になってしまうので、家庭内で行う会話のように翻訳した方が、フロリアンの届けたかったメッセージにより近いのではないかと思ってやってみました」と話していた。
3人はショラー氏の演出の薫陶を受けており、圭人は21年に『Le Fils 息子』で初舞台、健一と若村は同舞台で共演、さらに若村と健一は以前公演された『Le Pere 父』にも出演とお互いの関係値がすでにある程度出来上がっている状況でのけいことなる。そんなショラー氏はまず「日本の家族と言える人たちと仕事をできることを嬉しく思います」と、親しみを込めて話だし、「健一さんは動物的な勘がいいんです。ですから、ライオンの調教師になったような気分です」と笑いを誘う。
さらにショラー氏は、「圭人は舞台デビューをご一緒した名誉になりましたが、3年前に最初は私からいろいろ教えた記憶がありますが、最終的に彼が到達したのは私の期待を超えたところで本当に驚かされました。ですからまたご一緒できることが嬉しいです。演出家にとっては、役者さんがどれくらい進歩したかを見るのが感動の経験になるので、それを期待しています」と、圭人にほほ笑みかけ、これには圭人も胸に手を当ててホッとした様子。21年の『Le Fils 息子』以降も何かと圭人と共演が多く、「健一さんより私のほうが親ではないかと感じるくらい」という若村も、「会うたびに成長していて(ショラー氏も)驚くと思いますよ。今回の再演で、その成長ぶりに(ショラー氏から)『おい若村、何やってんだよ!』って言われるかも(笑)」と、太鼓判を押していた。
舞台『La Mere 母』は4月5日から同29日まで東京芸術劇場シアターイーストにて、『Le Fils 息子』は4月9日から同30日まで東京芸術劇場 シアターウエストにて上演され、後に全国8都市で上演を予定している。