俳優・東出昌大が5月22日に東京国際フォーラム ホールCで開催された映画賞『第33回 日本映画批評家大賞』授賞式に主演男優賞を受賞したことから登壇した。
『日本映画批評家大賞』は1991年に水野晴郎氏が発起人となり、淀川長治氏、小森和子氏といった当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された映画人が映画人に贈る賞となっている。33回目の今回は「進化し続ける力」をテーマにして展開している。
東出は2023年3月に公開された映画『Winny』に出演。東出はファイル共有ソフト「Winny」の開発者・金子勇役を演じており、同ソフトを使用した違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまい、弁護士・壇俊光(三浦貴大)と協力して法廷で検察との闘争を繰り広げることとなる。
受賞理由のなかに「東出に限らず、著名人の中にはマスコミ報道などによってスキャンダラスな事象が表面化し、表舞台から姿を消した者たちがこれまでも沢山いた。だが、どんな役を演じたとしても東出昌大という俳優はその役に近づこうとするし、『東出昌大は、東出昌大である』という唯一無二の個性が、映画そのものを輝かせる要素のひとつになる」と評価を受けた。
壇上で東出は「栄誉ある賞を頂いて、嬉しく思います。映画の現場を経験したのは22歳のときでした。それから14年経って、ずっと演じるとか、お芝居ってなんだろうって考え続けて、今もその問いは消えません。役者の仕事は、映画にとって必要な地味な準備なんです。『Winny』でいうと金子さんの裁判記録とか体型とかを増やすことで、それが唯一の縁(よすが)だと思います。役者をどうしたら続けていけるんだろう考えながら、ずっとし続けています」と、心境を話すとともに、「根拠のない自信のなかで続けていくことだと思うのですが、それが過信になっておごりが生まれたりする。そのおごりを持った人が市井の人を念じることはできないのでは、遠のいてしまうのではと感じています。これからも準備を怠らずに、映画の現場に戻ってこれたらと思います」と話した。
また、本作を演じることで「自分のためにお仕事をするというくほどでないのですが、今回は金子勇さんのご遺族や弁護団の方が喜んでくれて、初日舞台あいさつのときにこんなに直接的に喜んでくれる方がいるんならって、嬉しく思いました」と、思い出も語っていた。
ほか授賞式には俳優・筒井真理子、磯村勇斗、新垣結衣、木野花、小林薫らが登壇し、司会は松尾貴史が務めた。
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ