俳優・池松壮亮、三吉彩花、水上恒司が11月4日に都内で映画『本心』(脚本・監督:石井裕也/配給:ハピネットファントム・スタジオ)公開直前〈ヴァーチャルトーク〉イベントを開催した。
映画『月』、『舟を編む』などを手掛けた石井監督最新作。作家・平野啓一郎氏の同名長編小説作。デジタル化が進み、“リアル”と“ヴァーチャル”の境界が曖昧になった近未来を舞台に、亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也(池松)と、彼を取り巻く人間の【心】と【本質】に迫っていく。
会場には池松と三吉のみが登場。2人が最先端のVRゴーグルを装着すると、その仮想空間上に水上がおり、その模様が会場の大モニターにも投影されることに。そこで現れた水上は、どこかお札に印刷されるような、いわゆる“ガンクビ”状態のものだったが、池松は「現場でこんな感じだったので違和感があまりないです。目は太ってる感じ?」と尋ねると、水上も「ちょっと太ってる感じ」と、画面写りが自身でもそうなっていると笑う。三吉は水上の姿を「怖い」と漏らして、記者たちを爆笑させていたが、その後、握手やじゃんけんをしたりと楽しみ、池松はその光景を見て「舞台あいさつもうこれからこれでいいんじゃない。おうちから、失礼しますって感じで」と、提案してさらなる笑いを誘った。
近未来でのモデルはこうしたVRゴーグルをしてポーズをとるのではと池松と三吉が盛り上がるなか、三吉は「VRゴーグルを装着するとより没入感があって、好奇心と怖さがあります」と、現実とバーチャルの境界がより近くなっている様子を窺わせる真面目なトークが。その後ろで、水上はウインクしたり変顔をしたりしており、司会にそれをツッコまれ「“本心”出ちゃった」と、作品のアピールまで組み込んだ高度さで、会場を沸かせた。
そんなバーチャル演出でのトークの後に水上がリアルに登壇。水上は「人前に出るのがスタッフさんが本当に大変そうで。僕らがいいモデルになったらなと思いました」と話したり、「テクノロジーは人の心という生物を敏感にとらえようとしている人間からするとちょっと怖い気持ちにもなりますし、なんとも言えない感情です」と、しみじみ。
ここからは先程とは打って変わって真面目なキャラクタートークに。朔也を演じて、池松は「テクノロジーもそうですし、貧困格差、温暖化とかの未来が拡張したなかで、朔也は時代に置いていかれて迷子になっている。AIとリアルな人間より、心がどこにあるのかというので自分たちの存在価値が、テクノロジーが日常になってきたからこそのSFと感じました」。
三吉は、三好彩花役を演じることとなり、「いままで演じてきた中でダントツに難しくていい意味で悩んだ夏でした。コンプレックスや悩みを抱えながらでした。演じていて、彼女のことを考えながら過ごしてたの夏でした」。
水上は、「岸谷は僕を含めた、若い方々の象徴だなと思うような感じなんです。夢を持つことは大事と言われて育ったけど、“といってもなぁ”と思って生きている若者は多いと思うんです。これだけ多様化というか、いろんな立場の方々を守ろうというなかで、正解はないけど、やっちゃいけない間違いはあると思うんです。その間違いが増えすぎてて、生きづらさを感じることがあって。そういった中で必死なときに、岸谷が起こすことがあるんです。それは許されないことですが、そこに行き着く過程を見ていると、心から悪いと言えない部分があって。岸谷のような人間が増えないことを祈りたいと思いますし、シンプルな気持ちでは演じていませんでした」。
その後、「仮想空間上で会えたら嬉しい?」もしくは「リアルにあえて嬉しい?」人を挙げるコーナーに入ると、池松は「大喜利タイム……」とぼやいて、爆笑をさらうなか、池松は映画デビュー作という『ラストサムライ』主演の渡辺謙との再会を果たせたこと、三吉はニコール・キッドマンと会ったことを挙げるなか、水上は『北斗の拳』のラオウの愛馬・黒王を挙げ「小学三年生のときに両親化rあ買ってもらった黒い自転車を黒王と名付けてました」と、大喜利のオチをつけるようなトーク回しで楽しませていた。
そして池松から「世界のトピックを扱っているような映画です。テクノロジーの進化は止められないものだと思いますので、映画を見ながら1つ考えるきっかけになれば」と、願いを込めていた。
映画『本心』は11月8日より全国公開予定!
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ