アニメーション『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』(監督:大森貴弘、伊藤秀樹/配給:アニプレックス)完成披露上映会が8日、東京・ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で開かれ夏目貴志役の神谷浩史、ニャンコ先生/斑役の井上和彦、大森監督、伊藤監督が登壇した。
漫画家・緑川ゆき氏が2003年から連載している作品で、2008年に初のTVアニメ化。その後も17年までにTVアニメが6期まで制作されるという息長くファンに愛されている作品で、本作はTVアニメ化10周年を記念して制作されており、緑川氏が監修しているオリジナルストーリーとなる。小さい頃からほかの人には見えない妖(あやかし)が見えることから人と、距離をとることしか出来ず生きてきた夏目貴志(神谷)。亡き祖母レイコが勝負をしかけ、負かした妖に契約書の束「友人帳」を継いだ貴志は、自称用心棒のニャンコ先生(井上)とともに妖たちに名前を返す日々を送る姿が描かれる。
上映後の舞台あいさつとなったが、涙をぬぐう観客多数という、感動の仕上がりといった雰囲気。そんななか井上がニャンコ先生の声で「よく来たな」と、呼びかけ、歓声があがるなかスタート。
アニメ化10年にして初の劇場版ということで、井上は「きょうみなさんの顔を観て、すごいことやっちゃったんだなって思いました」と、劇場版となったことに実感が沸いてきたといえば、神谷は、「9月末から上映されることにピンとこない部分もあるんです」と、対称的なコメントも。
作品を観てみて、井上は「自分が出ているのを途中で忘れて優しい気持ちになりました」と、没入するほどだったという。神谷も「『無茶苦茶いい作品じゃん!』って思ったんですよね。『夏目友人帳の映画だ!』って。とても幸せな時間を過ごしているような気持ちになって、みなさんもそう思ってもらえてたら嬉しいなって」と、感想を寄せた。
アフレコでのエピソードについては、本作にはニャンコ先生が3体の“トリプルニャンコ”となり、その声も井上が担当していたということで、大森監督は「今回は和彦さんに働いてもらいますよと言っていたんです」というと、井上も「台本を見たときに、『やられたぁー』と思いました(苦笑)」と、セリフ量が膨大になっていたのだとか。それでも井上は、「監督からは好きにやってみたいに言われて。アフレコは3日とられていて、実は2日で終わったんですけど、3日はアドリブだけでした。調子がよくなってきたからアドリブをやろうと思って」と、裏話も。
神谷も本作に登場する高良健吾演じる椋雄(むくお)とのシーンで、「椋雄が(島本須美演じる)容莉枝さんのことを心配するシーンがあるんですけど、2、3回しか会ったことのないのない夏目というよく分からない少年に対して自分のことをしゃべるので、聞き入っているより距離を置いた方がいいのかなって思っていたんです」と、違和感を感じたそう。井上が「夏目には言いたくなっちゃうんだよ!」と、すかさずフォローし笑わせたが、神谷自身も「そのシーン台本を読んでいるときは違和感があったのに、見てみると全然違和感がないなって。音楽の力で、全然違うんだって感じました」と、しみじみだった。
さらに、大森監督が、TVアニメシリーズや本作に登場する河童を描くのが大好きと告白したところ神谷も「河童のシーンこだわりますよね!TVアニメでもペットボトル貸してくれとか、そのシーン拾うってところを拾ってますし」と、並々ならない思い入れを語ることも。
また、作品に流れるテーマにかけて、夏目友人帳にまつわる忘れられない記憶はないかという話題が振られると、神谷は「ドラマCDシリーズからスタートして、東京国際アニメフェアのステージでTVアニメ化の発表をさせて頂いたんです。ビジネスデーだったので人も少なくて、割と地味な始まり方で。それ以降、東京国際アニメフェアのような感じのイベントが毎春やってますけど、和彦さんの誕生日祝いを3月末にやるのと、10年やり続けられたというのは夏目っぽいエピソードですね」と、長年やっているからこその話も飛び出した。
最後に神谷は「なんかこう『カメラを止めるな!』くらいの勢いでヒットするといいな」と、アピールすると井上も「夏目を止めるな!」と、ノリノリでコメントし場内も大爆笑。しかし、神谷としてはそういった悪ノリ的な感じではなく、「地味といえば地味かもしれないですけど、丁寧に心に届く作品です。日本人らしい感性に響く作品だなって。ふとしたときにまた、あの作品を観たいなという気持ちになる作品だと思います」と、ゆっくりと呼びかけるように語っていた。
イベント終了後には本作にゲスト登壇の初日舞台あいさつが開催されることや、来場者プレゼントも発表となり再び場内は沸き返っていた。
『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』は9月29日より全国公開!