女優・倍賞千恵子、俳優・藤竜也、市川実日子、小市慢太郎、西田尚美が10日、東京・新宿ピカデリーで映画『初恋~お父さんチビがいなくなりました』(監督:小林聖太郎/配給:クロックワークス)初日舞台あいさつを小林監督、劇中に登場する“チビ”を演じた猫・りんごとともに開いた。
漫画家・西炯子氏の漫画が原作。50年連れ添っている無口な夫・勝(藤)とその妻で専業主婦・有喜子(倍賞)の秘めた想いと愛を一匹の猫と、その子どもたちとの関係とともに描いた。派手なCGや演出などはないが、心に温かさが残る仕上がりだ。
倍賞と藤は本作で熟年夫婦を演じた。倍賞は「映画の中に強い愛があるというので、この仕事をを受けさせて頂いたんです」と言いつつ、藤と28年ぶりに夫婦役だったことへ、「頑固なお父さんというのがあって映画のときはあまり口を聞いてくれたなくて、寂しかったんです」と、心情を。ただし「本当の藤さんは優しい方で、こんなに優しい方が居たらどんなに素晴らしいだろうと思って」と、勝とは正反対だったとフォローもするバランスのいいコメント。
一方の藤は演技のディレクションへ「『日本中の奥様方に嫌われるように演じてください』と言われました」と明かしたり、語ったり、作品を通しての感想へ「この仕事をしてあらためて分かったことがあります。私も50年亭主稼業をやっています。結婚して、子供が生まれて、その親子関係と子供の関係は誰が何をしようと切れないんです。でも、夫婦は50年連れ添っても、紙1枚で他人になれるというのを映画を観てゾッとしました。夫婦の関係は大変脆弱なんだ、油断しちゃいかんというのを思うようになりました」と、背筋が引き締まる思いだったそうだ。
そこで司会から「どうしたら夫婦関係は強くなる?」と質門が飛んだが、藤は「『俺はあんたを失いたくないんだ』というのを思うようにしています」と、少々照れくさげに明かすと、倍賞は「藤さんのご家族とは家が近くて時々食事するんですけど、『いつもありがとう』とおっしゃっていて、見習わないといけないなと」といい、小市がメモる様子も見せていた。
一方、市川、小市、西田は3人兄妹役だがお互い本当の家族のように温かい声をかけあって小市が瞳を潤ませたり、市川と倍賞で認識が違った話で盛り上がったりと、ほのぼのする雰囲気に。
そんななか、本作に出演し昨年5月に亡くなった女優・星由里子さん(享年74)のことに触れることもあり、倍賞は、「撮影が終わって1ヶ月後くらいでしたか……。本当にビックリしましたね。そんなふうに見えませんでしたし、私はいい加減なところがありますけど、彼女は背筋をピシッと伸ばしていて。お芝居をやっていてもすごい噛み合って面白いんです。セリフを言っているとトントントンとセリフがあがってくるような感じでお芝居をやっていてすごい楽しかったですね」と、懐かしげで、藤も「お会いしたのが初めてだったんです。あっ!若大将の星さんだ!という気持ちが最初でした。大スターの方とご一緒するときには本当にミーハーになります。ああ、長生きして良かったなみたいな感じで、1言1言が、優しさとキャリアからくる重みを感じましたね」と、エピソードを披露していた。
倍賞から「映画を観て、夫婦ってもっといろんなことを考えるといいんじゃないかなと思っています」と、アピール。その後、りんごも加わり記念撮影となったが、藤がりんごを愛おしそうに抱き、キャストみんなでニコニコと1人と1匹を囲むほっこりする一幕もあった。
映画『初恋~お父さんチビがいなくなりました』は公開中!