創作あーちすとで女優・のん(27)、大九明子監督が9日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された『第33回 東京国際映画祭』(通称:TIFF2020)クロージングセレモニーで映画『私をくいとめて』(監督・脚本:大九明子/配給:日活)が観客賞に選出され、終了後に会見を開いた。
本作は作家・綿矢りさ氏原作の同名小説を実写映画化。31歳のおひとりさまで脳内に相談役「A」のいる黒田みつ子(のん)が、みつ子は年下の営業マン多田くん(林遣都)に恋をしてしまうという、あと1歩踏み出せないむずがゆい恋模様を描いたロマンス作品となっている。2人のほかにも、結婚しイタリアで暮らすみつ子の親友・皐月には、のんとは朝の連続テレビ小説『あまちゃん』以来約7年ぶり共演となる橋本愛。さらに、臼田あさ美、片桐はいり、若林拓也も出演となる。
会見では大九監督から「今年さまざまにいろいろな映画館、映画関係者、脚をはお運びになるお客様、この映えある観客賞w頂きまして本当にありがとうございます。まさか私の作品が観客賞を頂けると思っていなかったので嬉しいです」と、笑みを浮かべた。
一方、のんは受賞の話を聞いたときに「私はきのう、スタッフから聞きました。きのうは私、毎月生配信の音楽ライブをやっていてその本番だったんです。終わった直後にスタッフが『受賞しました!』と、教えてくれて、私も嬉しくてうわーってなっちゃって。ライブのスタッフもいて『ウォー!!』ってなってくれて、みんなで嬉しい気持ちを共有しました」と、喜びあったそうだ。
観客賞はその名の通り、観客からの投票で選ばれたもの。それだけにのんは、「純粋に嬉しい気持ちです。観てくださった方々の心に届いて、たくさんの方に届いてこういう賞という形になって頂けるのは大興奮でした」と、気持ちを語った。
記者からはのんをキャスティングした理由について質問が。大九監督は、「小説を読んでいるときもシナリオを書いている時でも、このみつ子という役をお願いしたら良いか私のなかでは真っ白だったんです。そんなときプロデューサーから話があって」という形で決まったそうで「こう(のんへ)言うのが初めてですけど、年齢が不詳な感じがある輝かしくチャーミングな方でありながら、みなさんの会社の部署で働いていそうという感じでもある。その後、ご活躍もしていて、『この世界の片隅に』で声の表現だけでもご一緒したいと思いました」と、大九監督を存在と演技で魅了していたそうだ。
逆に、のんは本作起用の今回のお話が来た際に、「台本を頂いたときに、『うわ、これ、絶対に私がやりたい!!』と思って。綿矢さんのセリフも、大九監督が付け足したシーンも、いい感じでやりたいなというくらい、もうなんかやりたいなという気持ちが強く芽生えていたので、参加できて喜びでいっぱいです」と、諸手を挙げて喜んでいたとも。
記者からは、のん自身にとって映画はどういうものなのか、女優業はどういうものなのかへ質問があると、「大好きでここに一生いたいと思うのですが、10代のときに私は女優をやってなかったらなにをやっていたんだろうと思ったら何もなくて、実家の妹に聞いてみたことがあったんです。妹からは『そのへんで野垂れ死んでいると思う』って言われて、腑に落ちる部分があって、よかったやっててと。これは自分の生きる術だと思って、それまでも大好きで生きていきたいと思っていたんですけど、“あっ、ここしかなかったんだ”と気持ちが固まりました」と、エピソードとともに披露。
さらに、「主演というのは特別だと思うんです。たくさんシーンがあって、1番セリフがあってずーっと演技をしていられる。それが至福で幸せだなと思います。映画は、映像の作品作りは、本当にたくさんの人が集まって、それぞれの技術を持ち寄って、私も役者としてその一員に加わって、みんなで作り上げていく。監督の演出にどう返していくのかというのを、一点集中でたくさんの思考が同じ方向に向かっているのがたまらない現場だと思います。それが主演だと、ずっと(現場に)いられるので、めちゃめちゃくたびれますし、きょうどうだったかな……と、落ち込んだりするときもありますけど、みんなで、“これ絶対いいシーンだったよね!”という手応えがあると、幸せな気持ちになります。それが私の中で映画が特別な部分だなと思います」と、自身の中での映画への思いを語り続ける一幕もあった。
映画『私をくいとめて』は12月18日より全国ロードショー予定!