女優・水川あさみ（37）、俳優・浅香航大（28）、寄川歌太（16）が20日、東京・テアトル新宿で映画『滑走路』（監督：大庭功睦／配給：KADOKAWA）初日舞台あいさつを大庭監督とともに開いた。
歌人・萩原慎一郎氏による『歌集 滑走路』。あとがきを入稿した翌月、32歳の若さで命を絶ち、デビュー作にして遺作となった一冊の歌集が映画化された。いじめや非正規雇用を経験しながら、それでも生きる希望を託した歌を詠み、苦悩を抱える人へのエールとして多くの共感を集め話題に。新聞やTVなどでも次々と取り上げられ、歌集にしては異例のベストセラーを記録している。激務のなかで仕事への理想をも失い無力な自分に思い悩む厚生労働省の若手官僚が、ある日陳情に来たNPO団体から非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリスト持ち込まれ追求を受ける。そのなか自分に同じ25歳で自死した青年に関心を抱き調べ始めるのだが……。翠役を水川、若手官僚・鷹野役を浅香、中学二年生の学級委員長役を歌川が演じている。
飛沫防止のためにキャスト陣の前には透明のアクリルパネルが置かれるなかとあり、水川は登壇するなり「パネルに自分が映って自分と話してるみたい」と、苦笑い。
本作で、水川は今年12月に開催される『報知映画賞』で『喜劇 愛妻物語』ともに本作で主演女優賞にノミネートされるなど、公開前から話題となっており、そのことを司会から伝えられると「すごく嬉しいです。今年は映画に深く関われたので『頑張ったね』と言われているような気持ちになります」と、笑み。
作品へ水川は、「すごくいい意味で、グレーがかったような、もやがかかったような素敵なバランスの映画になったのではないかと思います」と、手応えありといった様子。そんな作品の撮影現場へは、「監督がやっぱり、何本も撮られてますし、たくさん素晴らしい監督の助監督を務めていらっしゃるので、だからこそ見える役者のこうしたいんです、ああしたいんですという部分の繊細な演出が行き届いていてメチャクチャ居心地が良くお芝居ができて、それが手にとるように分かりました」と、いい雰囲気を作ってもらったとも。
浅香も、「水川さんがおっしゃったように、僕が出演しているパートでは、水川さんのパートは知らなかったのですが、大庭監督の繊細で緻密なディレクションによってみんな同じ方向を観ていて、純度の高さを作品から感じました」といい、寄川も「それぞれがかかわる機会って、この作品は撮影のなかでないので、映画の雰囲気を統一するのが難しいと思いますし、自分の台本を読んで想像するとなると限りがあるから、撮影中はどうなるんだろうと思っていたのが崩れてなくて本当に監督の力を感じました」と、称えると、大庭監督は「このお三方がいたからこそです」と、謙遜していた。
作品の深堀りをすることとなり、劇中で人と人とのすれ違いが描かれているそうだが、浅香は作品を観て感じたことへ「僕が感じたのはいまのご時世と重なるのですが、世の中のせいにして本質的な問題に向き合っていなかったからじゃないかなと思いました」といえば、水川も、「自分のやりたいことだったりとか、対、人に対して思うことを素直に表現することが正しいとは思っていないというところがあるんです。ガワだけで接していることがとても本質的なことだと勘違いしているんだろうなと思います」と、作品内ですれ違いが起こる理由を推測することもあった。
ほかにも、作品にかけて、過去に後悔したことはないかとの問いかけに水川は、「10代か20代前半のころに、オーディションで洋服のタグが外に出る仕様の服を着ていたんです。そうしたら、列に並んでいるときに後ろに並んでいた女優さんが、『タグ出てるよ』と親切心から言ってくれたんです。私は当時、関西から出てきてそんなに経ってなかったから『出してんねん！』と、言ったんです。私の中ではツッコんだつもりだったんですけど、違う女優さんがその光景を見ていて、後ろの子がすごく傷ついていたと聞いて、なんでそんなことをしちゃったんだろうっていう後悔を、いまだに思っているんです」と、申し訳無さそうに話していた。
映画『滑走路』は公開中！
