ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』(演出:白井晃)歌唱披露会が26日、都内で開かれダニエル役の木村達成・小野賢章、アンダーソン役とジャック役の加藤和樹、アンダーソン役の松下優也、ジャック役の『CHEMISTRY』堂珍嘉邦、グロリア役のMay’n、ポリー役のエリアンナ、モンロー役の田代万里生が登場した。
本作は韓国で大ヒットを記録した作品。19世紀末にロンドンで起こった、未解決連続殺人事件とその犯人・通称“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”をモチーフにチェコで創作された。それを原作に韓国独自のアレンジが施され、2009年の初演から人気演目となり日本初上演となる。
キャスト陣は役柄の衣装で登場し6曲を披露。楽曲『最後のチャンス』を小野&加藤&田代で歌唱となったが、犯人を知っていると証言するダニエルと刑事・アンダーソン、新聞記者・モンローが、殺人鬼・ジャックの逮捕に向けて、おとり捜査を計画する際の曲。殺人事件に心を痛めるダニエルの繊細さ、犯人逮捕に躍起になるアンダーソンの力強さ、2人を煽るモンローの高揚感を音楽にのせて描き出し、同時に3人の畳みかけるような掛け合いの芝居の面白さを感じさせるものとなった。
2曲目はダニエルとグロリアの出逢ってすぐに惹かれ合うラブ・デュエット『もしかしたら』を木村&May’nで。2人はのびやかで透明感のあるハーモニーを美しいメロディにのせ、恋の甘酸っぱさとひとかけらの不安、未来への希望を表現した。
3曲目『特ダネ』は田代。おとり捜査が実行されるスクープを掴んだ新聞記者・モンローが、ついに連続殺人鬼逮捕の特ダネが出せることを、記者たちとともに高らかに歌う一曲。田代は、スクープのためには手段を厭わないモンローの、世間を動かすことへの強い欲望を歌で表現した。
4曲目『捨てられたこの街に』をエリアンナ。一音一音噛みしめるような歌唱を見せ、在のみじめな現実を憂いつつも将来を夢見て生きるポリーの心情を丁寧に描写して、この作品に一層の奥行きを与える。
5曲目『俺はこの街が嫌いだ』を松下。アンダーソンがロンドンという街を引き合いに、自分の気持ちを吐露する楽曲で、ロンドンという街から、そして行き詰った現状から逃げ出せず、元恋人のポリーを思いながらも自分が進むべき道を迷うアンダーソンの焦燥感を、哀愁漂う歌声で醸し出した。
6曲目『こんな夜が俺は好き』を加藤&堂珍。殺人鬼であるジャックが、亡霊を引き連れて新たな狩りに向かう様子を描いており、ほかの楽曲とは全く印象の違うロックテイストの曲に乗せられた、ふたりの柔軟で伸びやかな歌声は、まさに人間離れしたジャックそのもの。各自が持つキャラクターをいかんなく発揮し、二人それぞれ異なるジャック像を魅せてくれるだろうと期待が膨らむものとなった。
歌唱後には演出家・キャスト1人1人からコメントが寄せられた。
○演出・白井晃
韓国でロングランされている大人気作品ですが、いまの我々が台本と音楽から感じられるものを、自分たちの肉体に即した物語としてお届けしたいです。
実際の未解決事件から想起して書かれましたが、なぜこんなにも長く、我々の中に記憶が残っているのかをヒントに、描いていこうと思っています。登場人物はとても一途で、“止められない感覚”があります。それが今の我々の状況で、生きることを止められない感覚と繋がるのではないでしょうか。
○ダニエル役 木村達成
ある歌詞の中で「もう止められない」と歌う部分があって、それがすごく僕の背中を後押してくれる印象的な歌です。もう後戻りできない、突き進むしかないという覚悟をくれます。
グロリアに対してもともとある前のめりな気持ちを後押ししてくれると共に、さらには悪に走る後押しすらもしてしまう。
あと個人的にマント捌きをやってみたいと思っていたら、白井さんの方からその歌の終わりでやってほしいと言われて、自分の気持ちが通じたようで嬉しかったです。
○ダニエル役 小野賢章
けいこを始めた頃は、歌や動きなど、やらないといけないことに必死になっていましたが、ようやく体になじんできました。稽古場で役を追い込んでいくと、グロリアに対しても愛情だけでなく怒りなども芽生えてきて、日々の変化を感じています。自分自身の課題も変化しているので、ひとつずつクリアしていきたいです。
○アンダーソン役/ジャック役 加藤和樹
アンダーソンは、一匹狼なところもありながら、本心を伝えたくても伝えられない不器用さがあります。僕自身は器用ではないので、そういうところには共感しつつ、彼の心の中にある光と闇を意識してやっていきたい。
ジャックはつかみどころがない役で、彼がなぜ娼婦たちを手にかけていくのかを紐解きつつ、彼が持つ狂気性を、彼に寄り添いながら見つめていかなければと思っています。
○アンダーソン役 松下優也
アンダーソンという人物の内面が見えるのは、ポリーと一緒にいるときだと思っていますが、その場面は多くないうえに、言葉数も少なく、2人で歌っているわけでもないんです。
台詞が少ない分、どうやって表現するかを考えがちになりますが、今回はポリーの歌や芝居に引っ張られて、居心地がよく演じられています。
○ジャック役 堂珍嘉邦
ジャックという人間を演じるとき、人をたきつけることだったり、悪の心そのものに染まり、自分以外の人間に移り変わることで快感につながることを、もっともっと増やすと、ジャックというキャラクターに厚みが出ると思っています。これから本番初日までに、さらにジャックの気持ちにダイブしていきます!
○グロリア役 May’n
グロリアが最初ダニエルと出会って、ロンドンから抜け出すんだという、力強い前向きさには、私も心が震えますし、自分自身が夢を信じて1人で上京してきた気持ちも思い出します。
大切なものを信じて、未来に向かって歩んでいく!というグロリアの姿に、とても共感しながら演じています。
○ポリー役 エリアンナ
私は、人間らしい感情的でロマンスのある役を演じたことがあまりなかったので、ポリーという役はチャレンジだと思っています。ポリーが娼婦として生きるために鎧を取って気持ちを吐露するシーンで、アンダーソンに寄りかかったら、感情があふれて涙が出そうになりました。ポリーの気持ちの根源が感じられた、ブレイクスルーの瞬間でした。舞台は、誰かと一緒に作り上げていくものだとあらためて体感しています。
○モンロー役 田代万里生
新聞記者であるモンローが、「ジャック・ザ・リッパー」という言葉を世に広めていくように、僕らのミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』を早くみなさまにお届けしたいです。
ほかの役は苦悩していることが多いけれど、モンローは快楽として特ダネを求めながら終始ワクワクしているので、常に楽しそうです。稽古が佳境を迎えるなか、どんどん元気になっていく感覚があって、このエネルギーを劇場で爆発させたいです。
ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』東京公演は9月9日から29日まで日生劇場にて、大阪公演は10月8日から同10日までフェニーチェ堺 大ホールにて上演予定!
■Story
1888 年ロンドン。
刑事のアンダーソン(加藤和樹・松下優也)は娼婦だけを狙う、“ジャック・ザ・リッパー”と呼ばれる殺人鬼(加藤和樹・堂珍嘉邦)を追っていた。残忍な犯行で解決の糸口も見えないため、マスコミを排除し非公開で捜査を進めようとする。 しかしロンドンタイムズ紙の記者、モンロー(田代万里生)はスクープ記事のネタを狙って アンダーソンに近づく。 モンローは、麻薬中毒者で金が必要なアンダーソンの弱みにつけこみ、情報提供の取引に応じさせてしまう。
4度目の殺人現場で、アンダーソンの前に男が現れ「犯人を知っている」と告白する。「そいつの名前はジャックだ」と。 彼は、7年振りにアメリカからロンドンにやってきた外科医ダニエル(木村達成・小野賢章)。 7 年前、ダニエルと元娼婦のグロリア(May’n)はジャックと出会っていた。
犯行が重ねられ事件は混迷を極めていく一方。 アンダーソンはダニエルの告発に基づき、おとり捜査を計画するが、ロンドンタイムズ紙は “ジャック・ザ・リッパー”の殺人予告記事の号外を出してしまう。 そして、アンダーソンと彼のかつての恋人だったポリー(エリアンナ)までもが事件に巻き込まれる。
果たして、殺人鬼“ジャック・ザ・リッパー”の正体とは…?
そして、本当の目的とは…?