佐藤健 石巻で主演作の凱旋舞台あいさつ開催で「立ち上がって前を向いた人達がいたから、復興に辿り着いたということに胸を打たれました」

佐藤健 石巻で主演作の凱旋舞台あいさつ開催で「立ち上がって前を向いた人達がいたから、復興に辿り着いたということに胸を打たれました」1

 俳優・佐藤健が13日、宮城・イオンシネマ石巻で映画『護られなかった者たちへ』(監督:瀬々敬久/配給:松竹)石巻凱旋舞台あいさつを瀬々監督とともに開いた。

 『このミステリーがすごい!』受賞作家・中山七里の傑作小説を映画化。東日本大震災から10年目の仙台で起きた不可解な連続殺人事件を軸に、その裏に隠された切なくも衝撃の真実を描く、感動のヒューマン・ミステリー。過去に起こした放火事件で服役し、出所したばかりだが今度は連続殺人事件の容疑者として追われてしまう主人公・利根泰久役に佐藤健、彼を追う刑事・笘篠(とましの)役を阿部寛が演じる。

 イベント前には、映画のロケ地ともなった石巻南浜津波復興祈念公園を訪れた佐藤と瀬々監督。『がんばろう!石巻の会』事務局長・黒澤健一さんの案内のもと、かつての南浜地区の街並みについての話を聞きながら園内をめぐり、『祈りの場』にて献花、被災地へ想いを馳せた。

 『一丁目の丘』からは、佐藤と阿部がラストシーンを演じた防潮堤も見え、佐藤は「撮影をしたときは、(公園から見える)道路の向こう側の景色は今とあんまり変わらず、僕と阿部さんで防潮堤を登って、公園側の景色を2人で見るというお芝居だったのですが、その時はほとんど更地で何もないような状況でした。きょうこうして訪れ、こんなにも美しい公園になったのを見て、震災から10年経ち、ゆっくりではありますけど前に進んでいるんだなと感じました」と語り、瀬々監督は「人々が生きていた記憶というのが、そのままここに根付いているというか、ここへ来て、みんながその記憶をひと通りより戻す拠点になっていると思うし、ここに住んでいた方々だけでなく、日本中の人たちがここへ来て、あの当時のこと、街の記憶など、そういう日々の生活の記録っていうものがここにあるんだという、そういうことを感じる場所になっているんじゃないかと思います」と、涙ぐみながら語った。

 そして観客の温かな拍手に迎えられ舞台あいさつに登壇した2人。佐藤から「撮影したのは1年ほど前だと思うのですが、当時すでにコロナ禍で、そんな中迎えてくださって、撮影に協力していただいた石巻のみなさまに非常に感謝しております。みなさまのご協力があったから、我々は最後まで撮影を終えることができ、映画が完成して、みなさんに届けることができました。みなさんが映画を観て感じたことを教えていただきたいですし、周りの方々に広めていただけたら幸いです」と、気持ちを伝えた。

 撮影地の宮城で作品が上映されることへ佐藤は「きょう、監督と一緒に石巻南浜津波復興祈念公園に行かせていただいて、その場所は撮影の時に阿部さんとロケでも行かせていただいたのですが、撮影の時点では更地だったのが、きょうは非常に美しい公園が完成していました。すごく広いので、その広さの分当時の被害の大きさも感じたのですが、立ち上がって前を向いた人達がいたから、復興に辿り着いたということに胸を打たれました。凄く力をもらって、そんな東北のみなさまにこの映画を届けることが感謝の気持ちを表すことになるかどうかわからないですが、少なくとも、我々は、祈りや、あらゆる願いを込めて作ったので、それが届いたら嬉しいです。もちろん、日本全国のみなさまに観て頂きたいですが、東北のみなさまには、特に届いたら嬉しいなと思います」と、思いの丈をぶつけた。

 撮影での印象的なエピソードへ佐藤は、「石巻で撮影させていただいた最後のシーン。先ほどもお話に出た祈念公園から道ひとつ隔てたところにある防潮堤を超えた海がラストシーンだったんですが、そこが凄く印象に残っています。今回、監督が水にこだわって演出されてるなと感じていたのですが、今回ラストシーンで、芝居の上で初めての感覚があって、“海を見る”感覚が変わったというか。ここは非常に複雑な気持ちで撮影させて頂いたのですが、映画としても意味のあるシーンになっているんじゃないかなと思います」と、思い入れを。

 一方、瀬々監督は「映画は架空の都市という設定にして、石巻や気仙沼、塩釜などいろいろなところで撮影しているのですが、印象的だったのは佐藤くん演じる利根が途中でフェリーに乗って、浦戸諸島に行くところ。風景的にほっとするような部分で、印象に残っています」と、それぞれ挙げた。

 宮城で、地元の空気を感じながら撮影をしたことに佐藤は、「非常に助けられたところがあります。東京で撮影しても絶対に撮れない景色が撮れますし、芝居をする上でも実際に震災のあったその場所に身を置くことで、感じることがありますし、そういった空気というものが映画には映るんですよね。そういった空気感に身を任せながら撮影できたのは、芝居をする上で助けられました」。

 最後に佐藤から「本当にきょうはありがとうございました。この映画に描かれていることが全てだとは思いませんし、きっと観る角度から、観る目線によって、その数だけ正義があって、その数だけ真実があるんだと思います。ただ、自分の大切な人を護れる社会であってほしいし、そういった社会を作るために、1人1人が声をあげるんだとか、どうやって生きていくんだと考えることが重要なんじゃないかと思いますし、そんな願いをこめて作られた作品です。みなさんに届きましたら嬉しいです」と、コメントを寄せれば、瀬々監督からは「今回の映画では、大変な状況でも人々は日常の生活を営み、そこには美しい瞬間や、楽しい瞬間があったりする。そういう小さな日常の大切さも描いています。そういったものが覆され壊れされていくことに対して、なんとかしたいという思いを持って撮った映画です。今後も未来へ希望が持てればと思っておりますので、みなさんとこの場で出会えて嬉しく思います。ぜひ気に入ったら、また映画館に来てください。ありがとうございました」と話し、場内は温かな拍手に包まれるなか幕を閉じた。

 映画『護られなかった者たちへ』は10月1日より全国公開予定!

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 ※記事内画像は(c)2021映画『護られなかった者たちへ』製作委員会