常田大希、勢喜遊、新井和輝、井口理によるミクスチャーバンド『King Gnu』が15日、東京・国立代々木競技場第一体育館でアリーナツアー『King Gnu Live Tour 2021 AW』ファイナル公演を開催した。
本ツアーは10月29日のゼビオアリーナ仙台を手始めに全国7会場14公演で開催された。
以下、オフィシャルレポート部分。
会場にいた誰もが思ったはずだ。とんでもなく素晴らしいライブを体験したことを。パンデミック下の鬱屈した感情を、心の奥底から解放してくれたステージ、それが全国ツアー『King Gnu Live Tour 2021 AW』だ。
しかし、コロナ禍であることがこんなに悔しいと思ったことはなかった。今のKing Gnuの経験値と実力であれば、世界のロックシーンを制覇できたのではないだろうか? そんな妄想めいた、いち音楽ファンの戯言が間違いでなかったことを確信した圧巻のステージ。12月15日(水)ツアー千秋楽、国立代々木競技場 第一体育館での公演をレポートしよう。
オープニングは、モノクロの映像とノイズが混じり合いヘヴィなビートに乗せてスタジアム・ロックなサウンドを轟かせる「飛行艇」からスタート。今年2021年に開催された『東京2020オリンピック』でも様々なシーンで耳にした魂に火を灯すナンバーだ。常田大希(Gt.Vo.)は、まずあいさつがわりに「東京!」とシャウトした。勢いそのままに、井口理(Vo.Key.)&常田によるツインボーカルがインパクト絶大なアッパーチューン「千両役者」へと突入。ここでも常田は「King Gnuはじめっぞ!」と熱い叫びを響かせる。緑のレーザーが縦横無尽に飛び交うなか、唯一無二の4人によるダイナミックなプレイで一気に会場の空気をヒートアップさせていく。
グルーヴは止まらない。今やKing Gnuの歌えるポップナンバーの代表曲となったメロディアスな「Vinyl」。そのままトップギアへと可変しながらキャッチーなリフが耳に刻まれる「Sorrows」へと流れ込む。本日初MCでは、井口が「こんばんは、King Gnuです。ツアーファイナルということで、みんなで有終の美を飾ろうと思います。よろしくお願いします!」と、ツアー千秋楽というプレミアムなチケットを手にしたオーディエンスへ素直な気持ちを伝えた。
ここからはKing Gnuが、多彩な音楽センスに満ちた特異な音楽集団であることを証明するレパートリーのオンパレードだ。「ユーモア」、「白日」、「破裂」、「Prayer X」という、紅白歌合戦でも歌われたポップ・ミュージックを交えながらも、シリアス・ミュージックの魅力をも秘めた恐るべき自由度の高さを解き放つ楽曲たち。
そして、深遠なる雰囲気を漂わせるドラマティックなKing Gnuワールドの真骨頂「The hole」という、決して他のバンドでは生み出せないであろう、井口によるシアトリカルなボーカリゼーションの魅力、テクニカルなグルーヴを構築する野生的な勢喜遊(Drs.Sampler)と、安定感ある新井和輝(Ba.)による見事なコンビネーション、さらにギターでの狂騒極まるステージから一転、常田による静謐なピアノへと視線が集中していく。まさに、どこにも属さない誰にも似ていない、オリジナリティーの高いスペシャルな空気感を生み出すプレイに心が奪われていく。
前身バンド、Srv.Vinci時代に生み出した「ABUKU」のリメイクであるアブストラクトな「泡」。イントロから没入感高く引き込まれていく「Hitman」。そして、井口による究極のオペラボイスを堪能できる「三文小説」が繰り広げられ、バンドの想いはオーディエンスへと届き、ライブ会場はせつなさのミストで満たされ一体感でいっぱいとなる。
King Gnuは、日本の音楽シーンのクオリティーを確実にアップデートした。しかしながら、とある音楽評論家は言った“アメリカのビルボードチャートを見てごらん、ロックは終わった”、と。だが、King Gnuを観ていればロックはまだまだ進化できるし、ポップはリスナーにおもねるだけのものでないことを、次々と繰り広げていくライブ・パフォーマンスによって証明してきた。
長めのMCでは、井口が「皆さんのおかげでツアーファイナルを迎えることができました。ありがとう。」と感謝を語り、
そして、「ただいま中盤かな。ここからぶちあがっていけますか?」と煽りながら、ライブは後半戦へと加速していく。
常田が拡声器片手にシャウトするパンキッシュな「Slumberland」の登場だ。止まらないラップの応酬に煽られまくるフロア、しかしながらパンデミック化ではコール&レスポンスは禁じられている。そんな悔しい思いを乗り越え、感情の憤りを昇華していくかのように、常田は“Opne your eyes”と聴くものに訴えかける。続く、オーディエンスの一体感の熱さは人気チューン「Tokyo Rendez-Vous」でよりアッパーに弾けていく。
オーラスへ向けて爽快な「傘」、ロック濃度高めの「どろん」によってグルーヴィーに脳内のアドレナリンがかき混ぜられつつ。とどめはアグレッシヴなビートチューン「Flash!!!」における、煌めくライティング&バンド・アンサンブルによるダイナミズムだ。そして、井口による「なんか踊るとかじゃなくって、狂ってください!」と、バンド史上最も青春ロック度の高い、ストレートなナンバー「Teenager Forever」を痛快に繰り広げていく。注目は、“きらめきを探してよ”のフレーズで、井口と常田がひとつのマイクスタンドを挟んで二人で向き合いシャウトするシーンに胸ときめいたオーディエンスは多かったのではないだろうか。忘れられないワンシーンだ。
やりきった感でいっぱいのメンバーの表情に、フレッシュな魂がシンクロするオーディエンスたちの笑顔の連鎖がとても良い。
アンコールでは、King Gnuならではのポップ鮮度をさらに更新していくニュー・ポップチューン「BOY」。そして、新曲「一途」のミュージックビデオ映像を瞬間的に挟み、ダブルアンコールとして、ライブでは初解禁。ツアー千秋楽だけのお楽しみとなる最新曲「一途」をサプライズで披露。早くもチャートなど27冠を記録し、大ヒット中のナンバーだ。常田と井口による、まるで溶け合うかのように早急な掛け合いが感情をアップリフトしていく、白いレーザー光線とサウンドが爆裂するキラーチューン。途中、勢喜による「とべー!」のシャウトでさらにぶち上がるオーディエンスたち。声を出せないライブ空間ながら、ありえないほどの一体感が生まれた瞬間だ。本作は、世界中から待望されているアニメーション映画『劇場版 呪術廻戦 0』主題歌でもある。映画は『呪術廻戦』の原点であり“愛と呪いの物語”だ。
ここで、息の上がった井口が気力を振り絞るように「明日は仕事だ、家庭だなどあると思いますけど、楽しくやってください。揺れて帰りましょう!」。そして、今回のツアー途中から、ライブ中にオーディエンスによるスマホのライティングが自然のうちに定番化した、たゆたうようにサイケデリックなポップナンバー「サマーレインダイバー」をプレイ。客席からの、きらびやかな光の瞬きに見守られながら、大団円を迎えていく輝く巨大音楽空間。愛おしき、余韻の美しさ……。
King Gnuはビッグなライブ会場が似合う。“キング”率いる“ヌー”の群れは、仲間やオーディエンスを巻き込みどんどん大きくなってきた。泣きが続いたコロナ禍のリベンジ、ついに国立代々木競技場 第一体育館を制覇したのだ。2022年も、さらなる進化と驚異のライブ・パフォーマンスを期待したいと願う。
テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
■セットリスト
M1 飛空艇
M2 千両役者
M3 Vinyl
M4 Sorrows
M5 ユーモア
M6 白日
M7 破裂
M8 Prayer X
M9 The hole
M10 泡
M11 Hitman
M12 三文小説
M13 Slumberland
M14 Tokyo Rendez-Vous
M15 傘
M16 どろん
M17 Flash!!!
M18 Teenager Forever
EN1 BOY
EN2 一途
EN3 サマーレイン・ダイバー
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