俳優・市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久、高畑充希、昆夏美、屋比久知奈が7日、都内でミュージカル『ミス・サイゴン』日本初演30周年記念公演製作発表会見に出席した。
1992年から1年半の帝劇ロングラン以来、通算上演回数1463回を重ねる人気公演。2020年にも上演が予定されていたが新型コロナウィルスの影響により上演を断念となったが、今回キャストが再集結した。物語の舞台は、ベトナム戦争末期のサイゴン。エンジニアの経営するキャバレーで知り合った、ベトナム人の少女キムと米兵クリスの2人の愛、別離、運命的な再会。そして、キムの子タムへの究極の愛を歌で表現している。この日は、エンジニア役を演じる市村、駒田、伊礼、東山、キム役の高畑、昆、屋比久が出席となった。
会見のスタート時間となると、場内には本作を象徴する爆音にも近いヘリコプターの運動音が鳴り響き、キャスト陣が登場と、作品の雰囲気を伝える。司会から「初演から30年間続投されています。世界でも類を見ません。エンジニア役の市村正親さんです」との紹介を受けて、「世界でも類を見ない俳優の市村正親です(笑)」と、お茶目に切り出し、場内を和ませた。
市村は「44歳のいまから30年前、脂の乗ったいい役者だったと思います。いまは枯れ切ってますが……って、そんなことないって言ってくれよ(笑)」と、ノリツッコミで共演陣の緊張もほぐしつつ、「2年前に上演を予定していましたが、そのときの28周年より、今回の30周年の方がゴロがいいのではないかと思っております。何事も、前向きにいいふうにとらえていまして、30周年をやれるのは幸せに思っています。私もこうして30年をエンジニアをやってきて、できるのかと思っていたんです。前の公演では、東宝さんから『“これが最後”として、宣伝して頂けませんか?』と言われたんです。でも、やった後に、もう1回やってくださいといわれて。今回は30周年となりますが、これが最後とは言いません。足腰が立つ限り、エンジニアをやっていきたいと思います。年は年ですけど元気な73歳でーす!」と、熱い胸の内を。
さらに、市村は、「傾斜の舞台からフラットになったので半永久的にやれるのでは。そのうち車椅子に乗りながら、しがみついてもやる。それがエンジニアという役の精神なので。たとえどのような状態になっても、この役を離すものかという気持ちでいることが今後の目標です」と並々ならぬ意気込みとともに、30年演じ続ける秘訣として、駒田、伊礼、東山を見ながら「日頃の努力です。それとほかのエンジニアが大したことがない」とユーモアたっぷりに言い放ち、これには駒田がアクリルパネルを笑いながら揺すって“大暴れ”。
そこから声のトーンを真面目に戻した市村は「お芝居の神様がエンジニアという役は市村が墓場に行くまではやらせてあげたいと思ってくれているのかもしれません」と、感謝の言葉を口にする。すると伊礼が「車椅子に乗ることになったら僕が押させて頂きたいくらい」と立候補し、駒田が「それは俺が押すよ!」と、和気あいあいだった。
そんな長く演じ続けている市村へ、これまで上演した歴史のなかで印象的だったことを3つ挙げてもらうことに。「まず思い出すのは『ミス・サイゴン』は帝劇でしか再現できないと銘打っていて、しばらくは東京の公演があったあとに再演がなかったんです。いつやるんだろうと思っていたところ、ついにもう1回やるとなったときに、福岡の博多座も帝劇と同じ規模でやれるということがあって、そのときは本当に嬉しかったですね。どのくらい嬉しかったというと心臓が口から飛び出るくらい(笑)。2つめは、ニューバージョンになったときに、広島の公演でヘリコプターの音が鳴ったときは帝劇でしかできないといわれていたことができたことが嬉しくて、ニューバージョンになってよかったと思いました」と、しみじみ。
そして3つ目として「初演は僕と笹野(高史)くんでWキャストだったんですけど、彼が間に合わなくて、僕が6ヶ月やったんです。あの頃は44歳でマッサージでケアしながらでしたが、週10回やれたんです。でも再演になってから週に3回はマッサージを受けないといけなくなって。これが驚きの3つ目です」と、からりと笑いながら話していた。
一方、2020年公演の際にオーディションでエンジニア役を射止めた東山としては、夢見心地だったそうだが一転、中止に。それだけに、「けいこが始まって夢のようなスタートとなったのですが、それが夢のようになってしまって。みなさん一緒にできるということを感謝しております」と、噛みしめるように語る。屋比久も同じくオーディションを経てキム役に選ばれ「中止になったときは本当に悔しくて悲しくて、もどかしい思い、いろんな思いが渦巻いていました。本番全公演ができることを祈りながら、悔しかったり悲しかったりしたキムの気持ちを昇華していきたいと思います」と、意気込んだ。
これに高畑も、「みなさんと楽しくけいこが始まって、『ミス・サイゴン』の歌を歌うことを楽しみに思っていたのが幻だったのかなと思っていたんです。また、そういう日々が始まると思うと嬉しいですし、30周年になったことだし、きっとすごくパワフルな公演になると思います」と、期待を寄せていた。
ほかにも、市村へプライベートで息子が2人できた経験も生きている?との質問も飛んだが「2人の子供は生きがいで、(劇中の名曲『命をあげよう』にかけて)子のために“命をあげよう”と思ってますよ。それくらい子供に対する気持ちは持ってみて初めて分かることもあります」と、しみじみだった。
そして市村から、「本当にいい作品です。絶対起きてはいけない戦争というものを目の当たりに見せることで、世界にそういうムードがなくなったらいいなと思っていますし、そういう力になれたらといいかなと思います。コロナ禍ですけど、とにかく感染しないで、頑張って乗り切って最高の舞台を見せたいなと思っています!」と、メッセージを寄せつつ、「そうだよな、みんな!」と全員を見回すと、いきなりの声だったが6人とも「おー!」と、腕を振り上げるチームワークの良さを見せていた。
ミュージカル『ミス・サイゴン』プレビュー公演は7月24日から同28日まで帝国劇場にて、東京公演は7月29日から8月31日まで帝国劇場にて、大阪公演は9月9日から同19日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて、愛知公演は9月23日から同26日まで愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、長野公演は9月30日から10月2日までに長野・まつもと市民芸術館、北海道公演は10月7日から同10日まで北海道・札幌文化芸術劇場 hitaruにて、富山公演は10月15日から同17日に富山・オーバード・ホールにて、福岡公演は10月21日から同31日までに福岡・博多座にて、静岡公演は11月4日から同6日までに静岡・アクトシティ浜松 大ホールにて、埼玉公演は11月11日から同13日までに埼玉・ウェスタ川越 大ホールにて計116公演で上演予定!