俳優・広瀬すず(23)が15日、東京・新宿バルト9で映画『流浪の月』(監督:李相日/配給:ギャガ)トークショーを李監督(48)とともに開いた。
本作は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた作家・凪良ゆう氏の同名小説が原作。9歳のときに誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗(かない・さらさ)を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文(さえき・ふみ)を松坂桃李、彼女の過去を受け止め切れず自分を見失ってしまう更紗の婚約者・中瀬亮役を横浜流星が演じている。
上映後に拍手に迎えられるなか登壇した2人。この日は、李監督がトークを進行させることに。
まずは李監督がこの場に立って思い浮かんだという亮と更紗の関係として横浜が「人見知りなんでどう距離を詰めていくんだろうなって思っていたんです」というと、広瀬は、「肌と肌が触れ合う瞬間、私自身、信用できるようになったというか……なんか飛び込めるというか。撮影中、毎日、おはよう、おやすみだけでも言葉を交わせたらいいねと言われて、確かに距離は縮まるんですけど、心が近づかないというか……」と、役としての距離がうまく近づかなかったそうだがあるときにふっと、「一気に何も隠すことのない、遠慮のない状態になって。そういうのを感じたから余計に信用できたのかもしれません」といった感じで関係値を築いていったという。
しかし、そんな横浜と距離が近づいたことで起きた松坂とのシーンの“弊害”もあったそうで、「私自身が流星くんに信頼して近くなっていたので、文より亮くんの方が(気持ちが)大きくなってて切り替えが難しくなっていて。最初こんなに文が見えなくなると思わなくて」と、戸惑ったそう。
その後、文との関係値の築き方として、「似た感じの話かもしれませんけど、文に自分の思いを話すときの温度と、目が合った瞬間、目の前に存在していて……という気がします。こっちが止められなくなるというか、その瞬間があったのが、初めてのけいこのシーンだったと思います」となったそうだ。
続けて、台本読み合わせの話題へ。広瀬は「台本読みが上手になったと褒められましたね(笑)」と懐かしげだったが、李監督としては、「台本を読んでいるのを聞いているだけで、情景が見えたりSTORYが見えて上手だと感じたんですが、同時にこれでいいのかなって。更紗ってそんな簡単に理解できたりする話じゃないから、すず自身が暗闇の中にいないと見えないんじゃないかって」と、感じたという。そこで李監督は「だから、現場で僕の言ってることワケがわからないこと言ってたでしょ?」と、イメージのような抽象的な話を振ったようで、広瀬はこれに「はい」と笑っていた。
さらに、広瀬は李監督の映画『怒り』に出演したときのクランクアップの際は、「間違いなく終わった!」という気分になったそうだが、本作のクランクアップの際は、「スッキリしたというより不安の方が大きくなって」という広瀬。その理由として、「流星くんや桃李くんへのお芝居への向き合い方を見れたからこそ、焦りを感じて。文の大切なシーンの後は受け止められたんだけど、私自身のメンタルはズタボロな感じで」と、しみじみだった。
ほかにも、広瀬から「ラストシーンの結末がちょっと違ったじゃないですか。(映画の)ラストシーンをは更紗と文が手をつなぎながら布団で横で寝そべっていたんですけど、撮影のときはそのシーンはラストシーンの1つ前のシーンだったんです。だから、ラストシーンどこ行っちゃったんだろうなって」と、切り出す。
李監督によると、実はそのシーンの後に電車で笑顔を浮かべて向き合う文と更紗のシーンがあったそうだが、李監督は、「2人の旅立ちで終わっているんですけど、なんか幸せそうでした。なんかこう、満たされているというか……余韻がなかったんです。お客さんが見終わった後に、想像する光景なんじゃないかって撮った後に気づいたんです。直接的なことで、月を見上げているわけではないけど、また手をつないで、やっと2人が1つの月を見ているような深い余韻が生まれるなって。だからこっそり落としました(苦笑)」と、説明。それでも「ちゃんと特典には入れますので」というシーンになることも明かしていた。
トーク終盤には、李監督から、「本来男性の俳優さんがやれそうな、女優・男優を超えて、そういった何かを持っている稀有な人だと思って信用していますので、2度あることは3度目はありますか?」と、再びの李組への出演をオファーすると、広瀬は「えっいいんですか!?ぜひ!」と、声を弾ませていた。
ほかにも、今月19日に誕生日を迎える広瀬に李監督からサプライズで花束が贈呈されるなど、内容盛りだくさんのイベントとなっていた。
映画『流浪の月』は全国公開中!
※『流浪の月』過去記事
・横浜流星 噂を聞いてからなんとしてでもその世界観の一部になりたいと行動の裏話エピソード!映画「流浪の月」場面写真や広瀬すずとの撮影や「僕自身が誰よりも亮を愛した」
・横浜流星「愛に飢え、愛を求めている。脆く、人間らしい」演技へ意気込み!広瀬すず&松坂桃李W主演映画「流浪の月」に出演発表
・松坂桃李「夢は捨てました」と衝撃の挫折体験披露や李相日監督を唸らせたアドリブとは?多部未華子へは「僕が代わりに謝ります」と律儀に頭を下げる