高橋恭平「メタモルフォーゼの縁側」原作者驚きの裏話な舞台挨拶

高橋恭平「メタモルフォーゼの縁側」原作者驚きの裏話な舞台挨拶1

 俳優・芦田愛菜主演で宮本信子が共演し6月17日より公開中の映画『メタモルフォーゼの縁側』(監督:狩山俊輔/配給:日活)。本作の大ヒット舞台あいさつが12日、東京・渋谷のシネクイントで開催され原作者の鶴谷香央理氏、劇中の『君のことだけ見ていたい』の作画を担当した漫画家・じゃのめ氏、狩山監督、河野英裕プロデューサーがトークを繰り広げた。

 本作は『このマンガがすごい!』『文化庁メディア芸術祭 マンガ部門』など数々の漫画賞を受賞した漫画家・鶴谷香央理の同名作の実写映画作品。周囲に馴染めずひとりこっそりとBL漫画を読むことを毎日の楽しみにしている17歳の女子高生のうらら(芦田)。そんなうららが、夫に先立たれ孤独に暮らす75歳の老婦人・市野井雪(宮本)がたまたまキレイな表紙に惹かれて買った漫画がBLだったことをきっかけに友情を育んだり、挑戦したりする姿が描かれる。芦田演じるうららの幼馴染・河村紡役にアイドルグループ『なにわ男子』高橋恭平らが起用されている。

 以下、公式レポート部分。

 上映後に拍手で迎えられた登壇者。公開4週目を迎え、監督・プロデューサーが感謝の気持ちを伝える中、「私自身も大好きな作品ですが、読者の方や周りの方からもこんなに素敵な作品にしていただいてよかったね、と言われてまして、こんなに幸せなことはないなと思います」と鶴谷氏。

 さらに、じゃのめ氏も電話で登場し、「公開4週目ということで、私の元にも感想が届いていて、この素敵な映画が広がりを見せていて、大変嬉しく思っております」と話した。

 原作から映画化への流れについて聞かれると、「私が漫画を紙で読むのが好きなタイプで、ルーティンワークとして本屋に行くことが多くて、本当にたまたま見つけたんです。絵が素晴らしいじゃないですか。すぐ手に取って、帯のキャッチコピーも良くて、家に帰って読んで、オーバーじゃなくて1巻で涙が出たんですね。それで、その場でペラの企画書を書いて、KADOKAWAさんに送って、というのがきっかけです。鶴谷さんの絵、縁側でうららと雪が漫画を読んでいる絵がすべてでした」と振り返る河野P。

 鶴谷氏も「すごい熱い企画書だったのを覚えていて、“人って優しいんだなと思いました。”と書いてあって、そんな風に受け取ってくださったんだ、と思って、ありがたかったです。映画にしていただけるなんてとても嬉しくて、おねがいします!という感じでした」と、当時のことを振り返る。そこから撮影に入るまでも「なんとなく本はあって、コロナ禍の中で4年間うごめいていたので、なんとなく準備はしつつ、いつの撮影時期でいつのキャストでできるかが大変なタイミングだったので、ちょっと時間がかかりましたね」と振り返る河野P。

 そこから監督との出会いの話になり、「狩山が『野ブタをプロデュース。』というドラマにフリーの助監督で来たんですね。僕が知っている人とはレベルが違う“スーパー助監督”だったんです。デザインもできて、台本の表紙もつくってもらって、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』でまた助監督に入ってもらい、“日本テレビに入ってもらったほうがいいんじゃない?”と思って入ってもらったのがスタートだったので、上から目線で話すと、狩山さんという人をディレクターとして引っ張りあげなきゃというところがあって、ずっと一緒にやってきました」と話す河野Pに「頭上がらないです」と恐縮する狩山監督。

 じゃのめ氏が作品への参加した話になると、「最初に河野プロデューサーからメールいただいて、作品を楽しみにしていたのですごく驚いたのですが、河野プロデューサーのメールの感じがすごく良くて、悩むことなく受
けようと思いました。映画ができ上がった時は、自分のところをチェックするつもりでかけたんですが、映画に見入ってしまって、チェックにならなくて、3回繰り返しました(笑)自分の地元の映画館で見たんですが、周りの人と同じようにサイン会のところで泣いちゃいました」と、当時のことを振り返る。

 河野Pも「突然TwitterのDMで連絡をしたんで、信じてくれないと困ると思って、より一層丁寧に書いた記憶があります。絵を始めて拝見した時に“どうしても描いていただきたい”と思ったので、なんとかして、というところで力が入ったんじゃないかなと思います」と驚きのエピソードを披露。

高橋恭平「メタモルフォーゼの縁側」原作者驚きの裏話な舞台挨拶2

 ここから、キャスティングの話になると、「原作が全てだと思うんですが、うららと雪を誰にやっていただくかが、次の全てだと思いました。こだわったのは、うららに関してはごく近い年齢の方にやっていただきたいというのが大事だと思っていました。本当に10代だからこそ、カメラの前で醸し出せる空気感が必要だなと思って。そこで誰だろうとなった時に、本当に芦田さんしかいなくて。プラス、芦田さんは僕から見たら“オタク気質”だなと思っていて、あれだけ本が好きで、優秀で、全てこなせるというのはオタク気質だなと思っていて。うららとはタイプが違うけど、根本は一緒なんじゃないかなと思いました。雪さんも年齢感と、狩山とも仕事をしたこともあったので宮本さんというところがありました」と経緯を明かす河野P。

 監督も芦田と宮本との撮影時を「2人が並ぶと、原作から飛び出してきたようだったので、いわゆる演出を執拗にやらないようにして、その時に生まれたものを大事にしようと思っていました」と振り返る。紡を演じた高橋恭平についての話になると、「恭平くんとも以前ご一緒したことがあって、緊張するタイプの子なんですけど、1番お芝居を重ねたのは恭平くんでした。10回20回お芝居して、1回忘れて、ジャンプして、もう1回やったのが、大体OKテイクです。今日ご覧いただいたお芝居に至るまで、彼は 2、30回やっています」とエピソードを披露し、会場からも驚きの声が上がる。「そんなにいっぱいやってらっしゃったとは知らなかったです。本当に自然でしたよね」と鶴谷氏も驚き、河野Pは「デビュー前で、芦田さん相手で緊張していて、その場でジャンプ、ジャンプ、ジャンプ、ジャンプという繰り返ししたよね」と振り返る。

 ここで Twitterで集まった質問を尋ねるコーナーに。

 「主題歌の決め手は?」という質問には、「うららの縁側で撮影している時に、“これ何撮ってんの?”という瞬間があって、狩山に聞いたら“エンドです”ってその時初めて言われて。なので、全部あの人です(笑)」と指差す河野Pに、狩山監督は「エンディングをずーっとどうしようか悩んでいて、お2人が歌うというのはなんとなく動いていて、この映画らしい方法ってなんだろうなと思っていたんですよね。縁側を撮りたくて、撮影の日に思いついて、“2分間回そう”と、本当思いつきですね」と振り返り、会場を驚かせる。

 また、作中で登場したBLのコミックの話になると、選定に関わった鶴谷氏が「私は5冊選ばせていただきました。イサムさんの「五十嵐くんと中原くん」、犬井ナオさんの「ミッドナイト・コンフリクト」、中野シズカさんの「てだれもんら」、蓮地さんの「バケモノとけだもの」、和山やまさんの「夢中さ、きみに。」を選ばせていただいて、うららさんが割と不器用な人なので、作品も不器用な人たちが温かな関係を築くようなものを選んだのと、高校生でいまBL好きだったらこれありそうだなと思って和山さんのを選ばせていただきました」と選定理由を明かす。「選定には関わっていないです。前提として、うららが紹介するものを、いわゆるつくりものでやりたくない、というのがあって、リアリティのある、うららのある段ボールに隠してある本ってなんだろうなと思って、原作者の先生が選んでいただいたものが正解だろうなと思って、丸投げしました。(笑)」と狩山監督。

 丸投げされた鶴谷氏だったが、「私の好きな作品を選びすぎて、じゃのめさんに『高校生にしてはBLを知りすぎているライン』と言われてしまって、ハッとしました(笑)」と話すと、じゃのめ氏も「映画を見ている間、うららさんすごいと思っていました(笑)」と話し、会場を沸かせた。

 お互いの作風についての印象を尋ねられた鶴谷先生とじゃのめ先生。鶴谷先生はじゃのめ先生について、「まずは妥協のない方だなというのが1番大きいイメージです。じゃのめ先生の絵を真似して描いたことがあるんですが、自分が描くと、色気が抜け落ちるというか、一本の線にこだわって書いていらっしゃるんだろうなと思いましたし、すごく華やかなんですが、それだけではなく泥臭さとか生々しさも持っていらっしゃるのがすごく素敵なところだなと思いました」と話す。

 じゃのめ氏も鶴谷氏について「全部大好きなんですが、絵に関してお話しさせていただくと、何が素晴らしいのかいろいろ考えたのですが、生きているキャラクターがいるからなのかな、と思うんです。ただ描いているのではなくて、理由があるから絵に反映されるんだなと感じます。バスに乗っている時にうららさんがリュックを抱えて座っていたり、その人らしい仕草が出ていますよね。よく、“画力で殴られる”という言い方をしますけど、鶴谷さんの絵は、ぎゅっとされるような、“画力で包まれる”という印象を受けて、そういうところが好きです」と熱弁。そんな熱いメッセージに「ウルっとしてしまいました。」と鶴谷氏。

 公開直後から多かった、“コミティアに参加できない”という原作からストーリーが変更された部分の質問になると、河野Pは「実は、原作に出てくるイベント2つとも描いてみたかったんです。台本上では作っていたのですが、こういう状況になってきて、イベントが持つ様相が変わってきて。イベントをそのまま描いたところで映画が変わってしまうんじゃないかと思って、思い切ってイベントに行けなかったらどうしよう、コロナでイベント開催できなくなってきたし、行きたくても行けないという人がいる中で、発想を切り替えて、台本上は切り替えていきました。イベントシーンって物語のピークになると思うんですが、なくなったところで演出をどう盛り上げていくかというのは狩山がすごく大変だったと思います」と、今だからこそ話せる裏話を披露。

 狩山監督も「イベントに行きたくても行けない、という方向で舵を切ろうというのは賛同したのですが、イベントというものが
どういうものなのか、というのが謎に包まれてしまう部分もあって、撮影の時に無理を言わせてもらったのですが、イベントの一角はこの映画に必要だというところで、実現できるようにしてもらいました」と、撮影を振り返る。

 鶴谷氏は「私は実はそこがすごく嬉しくて、頂いていた脚本では無いことになっていたのですが、実際に映画で観て入っていたのがうれしかったです」と絶賛。そんな鶴谷先生に河野Pは「実は僕は最後まで反対していたのですが、最終的に“嫌です”と(狩山監督に)言われてやりました。(笑)結果的に良かったんですね」と安堵した様子。

 古川琴音の演技についての話を尋ねられると、「私もびっくりしました。すごく上手だし、サインする様もすごくかっこよくてびっくりしました。私自身は演技指導はしていなくて、監督に動画をお渡ししました」と話すじゃのめ氏。狩山監督も「じゃのめ先生が佑馬くんと咲良くんを描いてもらうところ動画に撮って頂いて、それを古川さんにお渡ししました。じゃのめ先生をコピーしてもらいました(笑)」と、ここでもキャストの熱のこもったエピソードが明らかに。

 最後に、「遅い時間までありがとうございました。私もとても楽しかったですし、皆さんにまたこの映画の良さが伝わったらいいなと思います」とじゃのめ先生が、「この映画は好きなものについて語り合う映画だと思うのですが、観たものについて、誰かと話すのは、どんな感想であっても元気が出ることだと思うので、みなさんも良かったら今日見たものを好きな人と話してみてください。今日は本当にありがとうございました!」と鶴谷氏が、あいさつをし、舞台あいさつを締めくくった。

 ※「メタモルフォーゼの縁側」過去記事
 ・高橋恭平 芦田愛菜&宮本信子共演の映画「メタモルフォーゼの縁側」に主人公の幼馴染役起用で見守る姿の演技披露!映画「メタモルフォーゼの縁側」キャストやポスタービジュアル解禁
 ・高橋恭平 映画初出演でクランクインの日のアドリブはハンバーガーだった理由とは?芦田愛菜に「アドバイスを頂きたい」に場内爆笑で教えてもらったものも
 ・高橋恭平 学ラン姿に自信で「着ちゃえば格好いいと思います」!アイドルになりたい方へ「自分の好きな部分を押していく」とも

 ※記事内画像は(c)2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会