岡田麿里監督が手掛けるオリジナル劇場アニメーション作品『アリスとテレスのまぼろし工場』が9月15日より全国公開を予定していることが21日、発表となった。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の脚本を手掛け、『さよならの朝に約束の花をかざろう』で監督デビューを果たした岡田監督の最新作。ヒット作を手がけるアニメーション制作スタジオ・MAPPA初のオリジナル劇場アニメーション。ワーナー・ブラザース映画とMAPPAの共同配給で公開となる。
突然起こった製鉄所の爆発事故により全ての出口を失い、時まで止まってしまった町が舞台。その町で暮らす中学三年生の正宗は、いつか元に戻れるように、住人たちは変化を禁じられ鬱屈した日々を過ごす。謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れると、そこにいたのは喋ることのできない、野生の狼のような少女――。二人の少女と正宗との出会いが世界の均衡を崩していき、日常に飽きた少年少女たちの、止められない<恋する衝動>が世界を壊し始める――という物語となる。
メインキャストも解禁。退屈を持て余しながらも睦実や五実と出会ったことをきっかけに変化していく14歳の主人公・菊入正宗役には榎木淳弥。謎めいた正宗の同級生・佐上睦実役に上田麗奈。謎の少女・五実役には久野美咲がキャスティングされている。
この日は、榎木、上田、久野がステージに登場。榎木はとにかくネタバレに気をつけていると前置きしつつ「人間ドラマで濃厚に仕上がっていると思います。3人が主人公のようで、その成長描かれます」と話したり、緊張のあまりガチガチの久野へ、榎木が「飲み屋の久野ちゃんで行ったれ」と励ましたり上田も「お酒持ってこようか」と、助け舟を出すことも。
アフレコもすでに終わっているようで上田は「みなさんのお芝居の爆発力がすごいです。とくにお2人(榎木と久野)の爆発力が見どころになると思っています」というと、榎木は「上田さんすごかったです」といい久野も「あんな麗奈ちゃん初めて」というほど。
さらに、榎木は「リアルにやってほしいというオーダーを頂いて」というディレクションを受けたことや、「普段はお互いモニターを向いて演技をしていますが、今回は向き合って芝居をしたりしましたね。人間とかかわる話だから3人でトライアングルになってバチバチにお芝居して」と、珍しい形になったとも話していた。
そして久野から「全部ぶつけてアフレコをさせて頂きました」といえば、上田からは「恋っていいなと思ってもらえるような作品だと思いました。大人になると、恋で心が動くことって少なくなるなって思っていたんです。けれど、こんなに淡々とした世界のなかであふれて止まらないものがあって、恋っていいなって。フィルムから伝わってくるものだと思っています」と、感じたことを。榎木からは、「この映画は岡田監督100%という感じのこだわりにこだわり抜いたフィルムになっていると思います。フィルムでこんなに疲れたのは初めてじゃないかというくらいで、疲労困憊になって作りました。映画館で観たら、観終わったら呆然とするかもしれません。ぜひ楽しみにして頂けたら」と、メッセージを寄せていた。
今回の発表にあわせて特報映像とティザービジュアルも解禁。特報映像は、夕焼けが広がる空の下、光が反射する工場風景から始まる。14歳で時が止まった世界の退屈さを紛らわせるように、主人公の正宗と同級生の睦実がいらだちをぶつけ合っている中、空がひび割れ、突如、少女の泣き声が響き渡り、風が吹き荒れるシーンが続く。何かの衝動のように映像が加速していく中、「退屈、根こそぎ吹っ飛んでいっちゃうようなの……見せてあげようか」という謎めいた睦実の声が聞こえ、“恋する衝動が世界を壊す”という意味深なフレーズで映像が終わる。変化を禁じられた世界で果たして何が始まるのか、否が応でも胸騒ぎが止まらない衝撃の映像となっている。
ティザービジュアルでは、光に手をかざす少女の後ろ姿が描かれている。彼女の髪の毛は色濃く、その毛先には空のひび割れが続いており、謎めいた雰囲気を感じさせる。一体この少女は何者なのか?「この少女に近づいてはいけない」という怪しげなコピーが、物語の始まりを想起させる仕上がりとなっている。
また、本作の岡田監督書き下ろし原作小説が角川文庫より発売されることも発表。登場人物達の迷いや葛藤、誰かに強く惹かれていく気持ちなど、繊細な心の動きが岡田自身の言葉でつづられており、映画公開に先駆けて堪能できる。こちらは6月13日より全国の書店および電子書店で発売を予定している。
今回の発表にあわせて岡田監督からコメントが寄せられた。
『アリスとテレスのまぼろし工場』ですが、作品に関わってくれている多くのスタッフの情熱により、少しずつ作品の完成形が見えてきました。
この作品を作っている理由の1つに、自分が子供の頃に憧れた邦画や劇場アニメの空気を、現代の文法で作ってみたいというものがありました。抱いていた理想そのままに、どこか懐かしい、それでいてちょっと見たことがないような映像になってきていると思います。
少年たちが主人公の本作ですが、甘酸っぱい青春物とは全力で逆走している、ヒリヒリした青春を描いています。みなさんに楽しんでいただけますよう、スタッフ一同頑張ります。なにとぞよろしくお願いいたします。
■特報映像のYouTubeリンク
https://youtu.be/NvM28WMdRLQ
※記事内画像は(c)新見伏製鐵保存会