俳優・林翔太、松本幸大、陰山泰、藤田玲らが1日、東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで舞台『DOLL』(演出:元吉庸泰)公開ゲネプロを開催した。
作家・玉梨ネコ氏の『リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩』(TOブック)が原作で、初の舞台化。人形師の日本一となったいろは(林)がある事件に巻き込まれ腕に大火傷を負い二度と人形が作れない腕に。そんないろはのもとに、謎の差出人からDギアというVRマシンが送られてくる。それは『DOLL’S ORDER』という仮想世界で最強の「DOLL」を目指すゲームだった……。ゲームでは人形を作り上げることができ、のめりこんでいくいろは。しかし、なぜかいろはに執着するズィーク(松本)という男が現れ……。ゲーム世界と現実世界、リンクする2つの世界を行き来しながらいろはが行き着く先とは……。
ゲネプロでは、DOLLたちの華やかな衣装をはじめ、舞台美術、色使いや照明、仮想現実を描きながらも演劇的表現を凝らし世界観に没入できる工夫が息づいたものに。そこにキャスト陣の感情が乗り、より作品世界を膨らませる仕上がりを見せた。
終演後には演出の元吉氏も交えて囲み会見が開催。初日を前にしたゲネプロということで、林はまずは、「初日を迎えられて安心しております」と胸をなでおろし、松本は「アート感が強く、ストレートプレイとは違っていて、苦労しながら作りました。今回僕に追手もズィークという役は初めての境地というか初めて演じさせて頂く役です」と、挑戦的な舞台になっているそう。
キャストの好きなシーンの話題となると、林はとくにレトロ/祖父役の2役を演じる陰山の祖父とのシーンだそうで、「しっかり向き合ってお芝居をするシーンは、いろはとしてもじいちゃんと会えてホッとするというか、本当のおじいちゃんみたいで……」と、言葉に詰まると陰山は「(林が)泣いちゃうんじゃないかって」と、とくに気持ちが入っている様子をニコニコと語る。
松本も林と同じように泣いてしまうシーンがあるそうで「葛藤や正義があるなかで、自分の中での敵だと思いこんでいるいろはの首を締めるシーンなんですが、けいこをしてきたなかで、いろんな感情があるなって思っていて」と、込み上げてくるものがあるという。
さらに、林と松本はジャニーズJr.内のユニット『宇宙Six』(現在は解散)としてともに活動していたこともあり、松本が「林と初めてここまで濃くお芝居をするのが初めてなので、感じるものがあるなって。味わいが違っていて」としみじみ。林も「本当に子供のころから知っているので、変わってなくて安心したというか。芝居に対する姿勢もけいこ場で見ていて、刺激になったんです。きのうも衣装のトラブルがあったんですけど、『こうしてみたいです』と意見を突き詰めていて、その姿勢が見ていて勉強にもなるし刺激にもなるし」と、感じ入ったといい、これに松本は「あざーす!(笑)」と、わざとおどけて返して笑いを誘う。
そんな林のコメントに松本は、「僕にとって林は林で変わらないというか。お互いいろんな舞台を経験する中で、不安が1個もなかったというか。林は林のアプローチできて、僕は僕のアプローチをして、それがうまく絡むように元吉さんにバランスを見てもらっていたかなって。けいこをしていて楽しかったなって。ここをこうしようと話していたかというと、そうでもないんです。けいこのときに、元吉さんに許可をもらってからいままでやったことないことをぶつけても、それをしっかり受けてくれる。林は林なので、変わっていないので信じてやりたいなと思います」と、信頼を寄せていた。
一方、元吉氏は「この作品は選択肢の話だと思っているんです。何を選んでも正解で、何かをもらったり失ったりして、最終的にそれを振り返るのではなく、何を選んでいくかというお話にしたいなって。この人は何を選んだかをこだわって作らせて頂きました。お芝居を観終わった後に自分の選んだものに自信が持てるといいなと思っています」と、込めた思いを。
さらに、VR表現を演劇的な身体表現で行ったことへ、「ネットのなかなので、リアルとエリアが変わることをどうやろうかなと思ったんです。いろいろ考えているときに、人の心はネットの中でも、現実で傷ついても、それはリアルだと思っていて。その境界線が簡単に飛び越えられるもの、かつ簡単に飛び越えられないもの、抜けられるけど抜けられないものをどう表現しようかなって思ったんです。映像を使っちゃうと一元的になると嫌だなと思っていたときに、DOLLたちがアンサンブルでいて、彼ら彼女たちの人形劇にしようとコンセプトで見つかって、境界線やウインドウや扉で表現して、ある人には簡単に超えられるもの、ある人には全然超えられないものというのを、スタッフと一緒に考えていくうちに見つかって、ラッキーだったなって(笑)」と明かし、藤田も「僕は普通にゲーマーなのですが、格好いいなと思うのがデュエルの申請シーンで」と、バッチリと作品にハマっているそうだ。
そして林から「台本を読ませて頂いたときと、いまとは印象が全然違っていて、こんなに生々しい演劇になると思ってませんでした。さすが元吉さんパワーと感じています(笑)。ここにいるメンバーだけではなく、DOLLの役をやられている方も動きが多く、アンサンブルの方はアンサンブルっぽい動きをするのではなく、みんながメインキャストという気持ちでやっています。元吉さんの言葉で『お客さまが最後の共演者』と言っていて、この後、お客さまの反応を観るのが楽しみです。千秋楽までお客さまと一緒に育てていければ」と、メッセージを寄せていた。
舞台『DOLL』東京公演は1日から5日まで渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて、京都公演は6月16日から同18日まで京都劇場にて上演予定!