LIVE STAGE『ぼっち・ざ・ろっく!』(脚本・演出:山崎彬)が11日、東京・THEATER MILANO-Zaで開幕した。
2018年より漫画家・はまじあき氏が『まんがタイムきらら MAX』(芳文社)にて連載中の同名作が原作。22年10月から1クールでTVアニメが放送されると、魅力的なキャラクターが織りなす物語と、エモーショナルでキャッチーな楽曲が視聴者の心を掴み、劇中バンドのアルバム「結束バンド」は数々の音楽チャートでランキング1位を獲得。2024年春には劇場総集編の上映が発表されるなど、話題の作品の舞台化となる。
以下、ゲネプロ公式レポート部分。
本作は、はまじあきによる4コマ漫画「ぼっち・ざ・ろっく!」(芳文社「まんがタイムきらら MAX」連載中)と、同作のテレビアニメを原作とした舞台化作品。“超”人見知りで陰キャの高校生・後藤ひとり(ぼっち)が、“結束バンド”のメンバーとなり仲間とともに成長していくストーリーだ。
舞台×生歌唱×生演奏を大きな見どころとしている本作は、メインキャストである“結束バンド”のメンバーを、楽器の演奏を含めたオーディションで選んでいる。実力者たちによる本格的なライブシーンを体感できるほか、芝居パートでも見どころが盛りだくさんの本作。ゲネプロの様子と本作の魅力を、劇中写真とともにレポートする。
高校1年生の後藤ひとり(演・守乃まも)は、人と目を合わせられず、会話の前に必ず「あっ」とつけてしまうなどの重度の人見知り。その一方、動画投稿サイトで「ギターヒーロー」の名前で活躍している顔も持っていた。日々、自室の押し入れの中でギターを弾いては人気者になる妄想を頭の中で繰り広げ、学校では「誰か話しかけて」とさまざまな工夫を試みるもことごとく空回り。そんなある日ひとりは、公園で伊地知虹夏(演・大竹美希)と名乗る少女に「バンドメンバーのサポートに入ってくれないか」と頼まれ、流れで“結束バンド”に加入することになる。
メンバーの山田リョウ(演・小山内花凜)から「ぼっち」と初めてのあだ名をつけられたひとり。バンドのためにアルバイトを始めたりと生活に変化が生まれる中、同じ学校の、前向きで陽キャな喜多郁代(演・大森未来衣)もメンバーに加わり、仲間とともに“結束バンド”としての活動が始まった。
ひとりのギターへの思い、バンドメンバーそれぞれの成長と関係性、“結束バンド”を囲む人々のまなざし、音楽そのものの良さなど、原作には数多くの魅力がある。本作は、それらの魅力を生かしながら“生身の人間が演じる舞台”の強さを感じさせる作品となった。
前述のとおり、オーディションで選ばれた“結束バンド”のメンバーは、この人たちでなければならなかったと言えるキャストたちだ。本作が役者デビューとなるひとりを演じる守乃まも。Twitter(現 X)でのコメント動画や各メディアでのインタビュー記事などから「リアルぼっちだ」と感じた人も多いのではないだろうか。挙動、話し方、視線の動きなどはまさに日常生活におけるひとりそのもの。一転、ギターを握ればたちまち「ギターヒーロー」として痛快でシビれる演奏を聴かせてくれるところまでキャラクターにマッチしている。
明るく、芯のある強さを持つ虹夏を演じる大竹美希は、姉に憧れて幼いころからドラムを始めた経歴なども含めて、守乃と同じく虹夏の役柄にぴったりだ。力強く叩くドラムの音色が、“結束バンド”のリズム隊としての存在を証明しているだけでなく、バンドそのもののリズム調整役にもなっていると感じる。
山田リョウを演じる小山内花凜は、淡々として感情の動きが少ないながらもバンドへの熱い思いを秘めているリョウを好演。突然草を食べ出すなど、ひとりと同じく突飛な行動をおこすことはあるものの、特に、ひとりの書いた歌詞を読み込むシーンはリョウの内面が垣間見える良シーンに仕上がっている。
喜多郁代を演じる大森未来衣は、その歌声でライブシーンを強く印象づけているのはもちろん、舞台経験の多さを生かして芝居の面でも結束バンドのメンバーを力強くリードして舞台を締めている。「キターン!」は、照明などの特殊効果もあってまぶしいほどに輝いて見えるので楽しみにしていてほしい。
ひとりの妹・ふたり(岡 菜々美と津久井有咲のWキャスト)の無邪気なかわいさ、廣井きくり(演・月川玲)のへべれけになりながらも時おり見られるベーシストとしての自信と説得力、「STARRY」の店長である伊地知星歌(演・河内美里)のツンデレっぷりにもぜひ注目を。また、ライブシーンではPAさん(演・堀春菜)がこの効果を担当している、と考えるとまた楽しみがひとつ増えるだろう。
本作における演出は「人の力の強さ」を感じさせるものが多い。シーンの転換、セットの移動などはほとんどが人力によるアナログなマンパワーによるもの。ひとりの脳内の妄想やコミカルなシーンといった「舞台ではどう表現するのか?」と感じていたものも、“ぼっち~ず”たちの群舞などで表現している。
あえて大がかりなアニメーション効果の強いプロジェクションマッピングは多用せず、スクリーンに映し出される背景の映像や吊り下げられたセットで場面移動を表現。視覚情報を多く使わないことで逆に想像力が引き出され、頭の中にある理想の姿や記憶されていたものが舞台上に現れる体験ができる。だからこそ、特にコミカルなシーンでのビームや火山の噴火映像などがより効果的に感じられる。
冒頭から、録音されたBGMとひとりの生演奏で奏でられるギターが交差することでぐっと舞台の世界へ引き込まれる演出が用意されていたり、イマジナリーフレンドたちが集まった「ひとりの頭の中」をのぞき見て観客の想像力が刺激されるようになっている。
観客の想像力にゆだねる非現実世界と、リョウとひとり、虹夏とひとりの会話といったリアルな距離感で人間関係を描くシーンが、絶妙なバランスで織り交ぜられながらストーリーは進んでいく。そして、想像力が最大にまでふくらんだところで、“結束バンド”の生演奏と生歌唱が現実のものとして披露される。「満を持して」の登場に、よりリアルなものとして感じられるだろう。
“結束バンド”の演奏は、究極にアナログなマンパワー楽器である「声」と、人力で叩くドラム、つまびきかき鳴らすベースとギターで構成されている。歌声を含むさまざまな音圧は、その場で実際に浴びる体験をしないと感じられないものだ。ただ大きな音量で音楽を聴いたという「音量」の問題ではない。音そのものが持つ圧力に加えて、そこには人の熱と力が込められている。
ひとり、虹夏、リョウ、喜多ちゃん、それぞれの人物が持つ背景や「この4人で音楽をやりたい」「やっていきたい」という熱が音楽に乗って劇場を満たしている。その空気を多くの人たちと同時に味わう。これこそが生のエンタメの醍醐味だ。
もうひとりぼっちではないひとりと3人、“結束バンド”のメンバーが奏でる、4人の気持ちが込められたメロディを聴きに、そして、この4人が選ばれた理由を見つけに、ぜひ劇場へ足を運んでほしい。
以上
なお、本作のBlu-ray&DVDが2024年2月28日に発売することも発表となった。
■出演
後藤ひとり : 守乃まも
伊地知虹夏 : 大竹美希
山田リョウ : 小山内花凜
喜多郁代 : 大森未来衣
伊地知星歌 : 河内美里
廣井きくり : 月川 玲
後藤ふたり : 岡 菜々美/津久井有咲(W キャスト)
<ぼっち~ず>
PAさん、ほか : 堀 春菜
後藤直樹、ほか : 澤田美紀
後藤美智代、ほか : 斉藤瑞季
ギタ男、ほか : ピーターピータ―
ファン1号、ほか : やじりまおん
ファン2号、ほか : 園田 光
※記事内画像は
(c)はまじあき/芳文社・アニプレックス
(c)LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」製作委員会