ロックバンド『くるり』のボーカル&ギターの岸田繁、ベース&コーラスの佐藤征史、元メンバーの森信行が14日、東京・新宿ピカデリーでドキュメンタリー映画『くるりのえいが』(監督:佐渡岳利/配給:KADOKAWA)公開記念舞台あいさつを佐渡監督とともに開いた。
1996年に結成し、日本のロックシーンで異彩を放つ『くるり』。本作では新作アルバム『感覚は道標』の制作を軸に、プロモーション映像やライヴ映像を交えてつづったもの。岸田と佐藤とともにオリジナルメンバーの森も交えて曲作りをしていることも特徴となっており、その創作の秘密に迫っている。
上映後、温かな拍手が場内を包む中、登壇した『くるり』メンバー。岸田は「映画・アルバムを完成させられて嬉しいです」と笑顔を見せると、佐藤は「自分たちの映画を観てもらっているという感覚がなくて。誰かと一緒にと思って、妻に『行かへん?』と聞いたんですけど、『あんたとは行かへん!』と言われて。誰か一緒に行きましょう(笑)」と話しつつ、「観られたみなさんにあいさつするという感覚が分かりませんけど、よろしくお願いします」と、心境を。
一方、森は、「オリジナルメンバーの森です。僕がいたときの『くるり』っていうものへ、どういう感想を持たれるのかは分からないですが、見たことない人はこれが実物です!(笑)20年の時を経て出るのは信じられないですけど、楽しんで頂けたら光栄です」と、笑みを浮かべた。
撮影の話題となると、岸田は「エビフライが印象深いです(笑)。3本あって、それが何よりで。もちろんエビフライ以外も頂いてますけど」と音楽ではなくいきなり食の話題を切り出すお茶目さを見せて会場を沸かせつつ、普段の自身なら「カメラ向けられたら後ろを向いてしまうくらいあがり症なんです。でも、撮られてるのが分からないくらいで」というと2人もうなずきつつ、カメラマンとお酒を飲んだりと距離が近かったことも明かされていた。
森との収録へは、佐藤は、「最初の10分間は緊張があったと思うんです。けど30分っ経ったら知った者同士という感じで。ちょととした緊張感は、なかなか向けられることはないので」といい、岸田は、「ギアが上がった2人の状態だと、面白いことしようとするんですよ。なんでやねん!とか、彼らは彼らでそういう似たようなものを持っているのかなって。似たような部分を持っていると言えばそうなのかも。バンドでやっているのはそうですけど、ふだん一人で曲を作ることも多いんですが、3人でやるというのは面白いですよね。反応があるので」と、曲作りを楽しんでいたそうだ。
デビュー当時のエピソードについて話が振られると、岸田から、「京都に住んでいたとき……って、いまも住んでますけど、東京の綾瀬の知り合いのスタジオで録音に行ったんです。映画みたいに、遊んでいる間に『東京』っていう曲のガワができたんです。歌詞を書こうと思った時、お金を5円くらいしか持ってなくて。佐藤さんは、このバンドの中でも豊かで。といっても800円くらいですけど。佐藤さんにお金を借りて、缶コーヒーを買いに行ったんです。いまでも覚えていますが、ダイドーのデミタスコーヒーってあるでしょ。そうしたらそこにデミタスティーっていうのがあって。小銭もらって飲んでそのとき、僕、あまり自分の実体験をあまり具体的に書かない方なんですけど、『東京』という曲に飲み物買いに行きますという歌詞は、佐藤さんが僕に120円くれたんで」ということから出来上がったそうで、森は「初めて知った、俺」と驚く様子も。ちなみにその120円はちゃんと返されたのかへ佐藤は「貸したお金が溜まったら、ラーメンで返してもらっていたし、学生のころのは全部チャラですよ」とのこと。それでも、岸田は「ラーメンおごりますよ」と、きっちりしており2人の関係性を窺わせる一幕もあった。
ほかにもアルバム『感覚は道標』の中で好きな曲を挙げていくこともあり、佐藤は「きょうこのまま帰るなら『In Your Life』。歌舞伎町で飲み明かすぞー!ていうならアッパーな『no cherry no deal』かな」とシチュエーション別に挙げたり、森は「『window』という曲を聴くと自然のことを思い出すかな」とのこと。岸田は、「『お化けのピーナッツ』っていう曲かな。アルバムの中では異彩を放っているかもしれないですけど、なんとなくああいうの好きなんです」と、感覚を伝えていた。
そして岸田から「音楽を作るのが好きでずっとやってきましたけど、それを映像にしていただいて観て頂けて幸せです。みなさんの拍手にお応えできる音楽をまた作っていきたいと思います」と、メッセージを寄せ、温かな空気感のなかイベントを終えていた。
ドキュメンタリー映画『くるりのえいが』は13日より3週間限定公開&デジタル配信中!