俳優・船越英一郎、新木宏典、崎山つばさ、猪野広樹、高橋健介、菅井友香、村山紅葉が28日、東京・明治座で明治座創業150周年記念『赤ひげ』(演出:石丸さち子)初日公開・合同取材を開催した。
作家・山本周五郎氏の小説『赤ひげ診療譚』を舞台化。江戸時代の小石川養生所を舞台に武骨で謎めいた医師・赤ひげと青年医師、貧しい患者や市井の人たちとの魂の交流を描く。船越は俳優活動41年目にして初舞台となり主役の“赤ひげ”こと新出去定役を。見習いと指定やってくる保本登役に荒木、若き医員の津川玄三役に崎山。森半太夫役に猪野と高橋のWキャスト、とある患者を献身的に看病する女中・お杉役に菅井が起用となっている。
初日公演後に会見が開催。船越は「今日が初舞台でございまして、初舞台の初日にあんなにお客さまたちから大きな暖かい拍手とスタンディングオベーションまでいただいて、カーテンコールもダブルまでは練習したんですけど今日あんなに何度も幕が開いて感激いたしました」と、万感といった様子。
そのけいこへ船越は「ほんとに大変な稽古をみんなで乗りきりました」としみじみ話せば、猪野も「本当に大変な1ヶ月半のけいこだった」と回想。具体的にどのへんが大変なのかへは、新井は「セリフ量(笑)。でも観ていただいたからわかると思うんですが、セットがすごく大きな建物を組み立てているので、あのセットを人力でいろんな転換でいろんな形でいろんな角度からお見せするというところがけいこ場では確認ができないので、あれだけ大きなセットだと。それをみんな想像して、台本だけじゃなくて頭の中であのセットを想像しながらけいこをしなきゃいけないというところで、もうセリフに追われるわけにはいかない。セリフは落とし込んだ上で、けいこ場では転換をイメージしてどういう風にお客さんに見えているのかっていうのを想像しながら作らなきゃいけなかったっていうところが1つ目の大変だったところです」とのこと。
2つ目の大変だった部分は菅井にいきなり振られ、「私ですか? え~! いろいろありますが、まず和装や動きとかが自分は初めてでいろいろ教えていただきながらでしたし、演出の石丸さんがすごく愛のある厳しさをたくさんプレゼントしてくださって(笑)」というと、船越が「ハッキリ言っていいよ、怖かったんだろ?」と促し、場内も「アハハハ!」と爆笑。
空気も和んだところで菅井は「そうなんです、怖かったんです(笑)。でもそれぐらい熱量もあるご指導を日々日々してくださって、朝から居残りまでしっかりとしてくださって感謝で、ついていくのがすごく大変でした。その分たくさんのものをいただいたなと胸がいっぱいです」と、明かす。
そんな菅井へ船越は、「とにかく会った時に、なんてこの子はかわいらしさと知性が同居しているんだろうっていうそういう印象をものすごく受けたんですね。たしかに彼女はその両方を持っていました。もう1つすごいものを持っている、強さですね。このけいこ場はかなり厳しいけいこ場でしたし、怒声が飛び交うけいこ場でしたけれども(笑)、でもその中でほんとに芯を貫いて一回も弱音を吐かない、くじけない。やっぱり櫻坂って厳しいんだな。そこのリーダーってほんとに大変だったんだな、それをしっかり乗り越えて…すごいしっかりしてるんですよ。でもほんとに強い女性だなと思いました、かわいいくせに」と、温かくイジると、菅井も「ありがとうございます」と、笑みが浮かんでいた。
さらに、高橋は「食事のタイミングですね。ほんとに船越さんは二日にいっぺんぐらいのペースで結構食事を入れてくださるので、自分が持ってくるとターハイ(※麻雀用語)になってしまうじゃないですか自分の分と。昨日来たから今日はないかなと思って自分が用意するとまた持って来てくれたりなんで、食事を余らせないための食事のペース配分が僕は一番大変だったことですかね」という。崎山も「個人的な事件としては船越さんに美味しいものをたくさん食べさせていただいたことと、紅葉さんのことをもみちゃんと呼べるようになったことが、これが個人的に一番事件だと思っています(笑)」と、交流も深めたようだった。
その差し入れの食事については、高橋は「ほんとにパンから始まって、カフェも来ちゃったりとか。実際にカフェが来るんですよ、店員さん付きで」と、相当に豪勢なものだったようで、「見たこともないおしるこ飲みましたよ僕は」と笑っていた。
ちなみに、高橋から初日の幕が降りる瞬間に「船越さんだけは気持ちが行き過ぎて誰よりも前に船越さんが出られていて、ほんとにそれほどのすごい光景だった」との証言も出たが、記者から深掘りされると、「本当は緞帳が下りてくるのでここで手を振らないといけないんです。演出家さんが袖から『下がってー!』って言ってました(笑)。でもそれぐらいすごい光景で」と、続ける。
これに船越は、「全然気づきませんでした」と苦笑いで、突如新木に向かって「お前、隣にいるんだから言えよ!」と話を向けたが、新木は「前出てるなぁ~って思ってました(笑)」とひょうひょうとしてかわすやりとりも繰り広げていた。
そして船越から、「この舞台はそれぞれが口にしていましたけれども、時代劇、江戸時代のお話ではなく、僕たちは現代のお話だと思って取り組んでおります。きょうのお客さまの素晴らしいお顔を拝見すると一人でも多くの方にこの舞台を観ていただいて、そして少しでもみなさんがなかなかこの大変な3年間を乗り越えて、そしてこのアフターコロナをどうやって生きていこうか。そんなヒントがこの舞台にはものすごく埋まってると思いますので、それを見つけにぜひこの劇場に足を運んでいただければなと思っております」と気持ちを語るとともに、キャストを見回し「頑張りましょう!」と声をかけると、全員が「はい!」と、気合を入れる様子を見せていた。