アイドルグループ『SixTONES』松村北斗、上白石萌音W主演で9日に公開を予定している映画『夜明けのすべて』(監督:三宅唱/配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース)。本作を鑑賞した各界の著名人からコメントが寄せられるとともに、イラストレーター・丹地陽子氏が手掛けたイラスト版ビジュアルも解禁となった。
作家・瀬尾まいこ氏の同名作。PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる会社員・藤沢美紗(上白石)と、パニック障害を患って気力を失っている同僚・山添孝俊(松村)が恋人ではない特別な関係を築いていく物語。
オピニオンコメントは、代表作『ドライブ・マイ・カー』(21)が映画賞レースを席巻した映画監督の濱口竜介氏、『先生の白い嘘』『サターンリターン』などで知られる漫画家の鳥飼茜氏、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏、お笑いトリオ『3時のヒロイン』福田麻貴、お笑いコンビ『蛙亭』イワクラ・中野周平、映画オリジナルの要素として加えられた“宇宙”や“星”のテーマにちなんで宇宙飛行士の野口聡一氏。さらには、松村を『すずめの戸締まり』、上白石を『君の名は。』のメインキャストに抜てきしたアニメーション監督の新海誠氏からのものとなる。
以下、全文。
・濱口竜介(映画監督)
幾つかの人生が「よく変わる」その様を劇的でなく次第次第に、光や動きの具体として見たのはいつぶりか。もしかしたら初めてかも知れない。『夜明けのすべて』を見て、まるでこれまで映画を見てきたことのご褒美をもらったような気分になった。ただ普段は映画を見ない人もきっと、これを見たら「これまでの一日一日」を肯定できるような気持ちになれるはず。21世紀の日本にもたらされた宝石のような映画。
・新海誠(アニメーション監督)
なんて美しく愛おしい映画!
僕にとってもとても大切な二人──北斗くんと萌音さんが主演とのことで、心待ちにしていた作品です。
二人の声と姿、息の吸い方や歩き方、蜜柑のむき方や目の閉じ方がすべて、
作品の優しさとぴたりと重なっていました。 ※X(旧 Twitter)より
・佐久間宣行(テレビプロデューサー)
人にはそれぞれの形があるそれがたまたま社会とあってたらまともって言われるのだろうすべての人の形が削られすぎないで過ごせますように上白石さんと松村さんの演技がさりげなくて凄まじくてたくさんの人の心を軽くする気がする優しくてとても強い映画だ
・野口聡一(宇宙飛行士・東大特任教授)
PMS、パニック障害、燃え尽き…。みんな、誇りを持って自分の弱さを公開して、自分に合った生き方を選択できるといいな。それが僕たちにとっての夜明けなのかも。だって、夜明けは希望そのものだから。
・蛙亭 イワクラ(芸人)
社会で上手に生きていくコツは、自分に嘘をついて人に迷惑をかけず、普通にとにかく普通に生きる事。
変な人に見られない様にする。これが一番暮らしていきやすい生き方だと思います。
自分らしさなんて捨てて生きた方が楽だと思います。
自分らしく生きる方がとてもつらいと思います。
この作品では、世の中が決めてしまった普通からはみ出てしまった人たちが、毎日やってくる朝を一日一日踏ん張って過ごしている。
周りにいる優しい人たちに支えられ、貰ったものをゆっくり少しずつ自分の暮らしの中に取り入れている。
そんな姿に自分もただ生きているだけでいいのかもしれないと思える事が出来ました。
私は夜になると色んなことに思い悩んで、このまま夜が明けなければいいのに。そう思ってしまう日が多いです。
そんな時は星を見上げて、自分だって遠くにいる誰かに頼りにされているんだと考えてみることにしようと思います。
みんなが『孤独なもの』です。
本当はとても美しく輝いている存在なんですね。
自分ではなかなか気付く事は出来ないけど。
近くに孤独に苛まれている人がいたら、生きているだけでいいんだよと星を見ながら話したいと思います。
・蛙亭 中野周平(芸人)
自分のことでいっぱいいっぱいのはずなのに、相手を思いやる気持ちが自然と溢れていて温かかったです。
ほんの少しの変化で、大きく変わること、前に進み出すこと、何かに気づけること。
いろんなことがふんわりと繋がっていって、心にじんわり沁みました。
そっと寄り添ってくれる、優しい時間でした。
・3時のヒロイン 福田麻貴(芸人)
理解されることを諦めて、やっぱり理解されたくて、でもまた心折れて…そうするうちに塞いでしまって、理解者は自然や芸術の中にいるのかもしれない、なんて思う日もあるけれど、やっぱり人なんだなぁ。
それは言葉であったり態度であったり、はたまたそのどちらにも出さないことだったり。難しいけれど、「理解」を諦めないでいたい。
リアルで等身大だけど理想郷のような優しい世界。間違いなく理解者になってくれる映画です。
・鳥飼茜(漫画家)
弱さは自らを苦しめるけれど、欠けたものだけが埋め合わせられる場所がきっとあちこちにあるでしょうと、この映画は間接照明のように世界をひっそり心地よく照らしている。
・カツセマサヒコ(小説家)
「助けたい」という切実で、軽率で、おこがましさすら感じられる願望が、控えめにもまっすぐに肯定されたときに生まれる特別なあたたかさ。この二人をずっと見ていたかった。
・古市憲寿(社会学者)
小説を小説のまま映画にしたような2時間でした。日常をとにかく丁寧に描くこの物語は、エンドロールと共にぷつっとは切れたりしません。山添くんと藤沢さんが、物語のあとも、ずっと幸せでいて欲しいと願ってしまうような、そんな作品です。
・児玉雨子(作詞家・小説家)
あのひともそのひとも、きっと傷を抱えているのだろう。
目を覆いたくなるほど大きな傷から、目を凝らさないと見えない極微な傷、生々しく燃える傷、治りかけの傷まで。
そんな〈誰か〉たちの星空が、この世界のすべて。
・柴崎友香(作家)
最初は居心地悪く思えた人の間の距離が、映画の時間の中でだんだん人と人が関わっていくためのささやかな豊かさに満ちたものに変わっていった。この映画を見たあとは、いつもの風景がきっと違って見える。
・玉田真也(劇作家・映画監督)
ほんの一瞬だけでも、人と心が通じたと思える瞬間がある。それは、一緒に神棚を拝む瞬間だったり、差し入れのお菓子を買っていこうと思った瞬間だったり、取るに足らないような生活の流れの中にある。もしかしたら通じたと思ったこと自体錯覚かもしれない。でもそういう瞬間を経験することこそ生きている価値で、そういう瞬間にこそドラ
マがある。「夜明けのすべて」を観て、そういうことを感じた。
一方、丹地氏からのビジュアルでは、絶妙な距離感で佇む山添くんと藤沢さん。その周りにはふたりが働く栗田科学の人々、山添くんの恋人や前職の上司、藤沢さんの母親など、ふたりの日常を見守るキャラクターたちがまるでプラネタリウムの夜空の星のように映し出されており、柔らかなタッチと色合い、それぞれの表情に癒される優しいイラストに仕上がっている。丹地氏は「映画を観て、私たちは一人ひとりがかけがえのない星だなというようなことを感じました」と、コメントを寄せている。
※記事内画像は(c)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会