声優・神谷浩史が発起人となり『案内人』を務める朗読劇「Staging!! Vol.1『四月十一日を千二百回繰り返したと主張する男』」が6月から7月にかけて上演予定であることが16日、発表となった。
『Staging!!』は、ひとつの物語を「素材」として、さまざまな演出家(ディレクター)が独自の解釈とキャスティング、演出により自由に「料理」。音響監督、映画監督、舞台演出家など様々なジャンルの演出のプロが「原作」を読み、解釈したうえで、キャスティング、音や光、音楽、演技などを自由に演出する、「演出」にスポットをあてた企画となっている。
本公演では神谷は案内人という立場に。「最高の素材」から生まれる、演出の違いによる「極上の味(舞台)」を楽しむというコンセプトとなっている。第1弾の原作は小説家・小川哲氏が担当。演出を担当するのは数々のアニメ作品で監督を務める水島精二、音響監督として活躍する若林和弘、舞台の演出家であり役者としても活動する伊藤マサミが演出を担当する。
本公演の記者会見が7日、Mixalive TOKYO【Hall Mixa】で開催。その公式レポートが公開された。
以下、公式レポート部分。
朗読劇『Staging!!』は、ひとつの物語を「素材」として、演出家(ディレクター)が独自の解釈とキャスティング、演出により自由に「料理」する企画。音響監督・映画監督・舞台演出家など様々なジャンルの演出のプロが「原作」を読み、キャスティング、音や光、音楽、演技などを演出するという、新感覚の朗読劇だ。
その第一弾となる『四月十一日を千二百回繰り返したと主張する男』の原作を担当したのは、小説家の小川 哲。小川は本作のシナリオについて、「ひとつの物語を複数の演出家が演出すると聞いていたので、解釈の余地があるものがいいと思った」とコメント。また、何度も同じ日を繰り返すというループものがテーマとなっていることについては、「公演を複数回見る人にとってはステージ自体がループもののような体験になると思った」と前置きしつつ、「シナリオ自体をループものにすれば見る方の解釈の余地があっておもしろいかなと思い、こういう話を考えた」と語った。
本企画の発起人でもある神谷は、小川に原作の執筆を相談したときのことを振り返り「よくわからない企画を説明するところからのスタート。受けてくださったことにまずは感謝」と一言。また、本作のシナリオについて「すごくおもしろい。どっちにも解釈できる、玉虫色の原作を小川先生が用意してくださった」と率直な感想を述べた。
本企画は、演出家それぞれの演出の違いを楽しむのが醍醐味。第一弾では、数々のアニメ作品で監督を務める水島精二、音響監督として活躍する若林和弘、舞台の演出家であり役者としても活動する伊藤マサミが演出を担当する。
現段階での演出プランを聞かれた水島は、「朗読劇だけど、見てくださる人の没入感を邪魔しない程度の映像も使おうと考えている。脚本を余さず役者に読んでもらって、お芝居をしてもらって、それがストレートに伝わる形を模索中」、若林は「音を中心に(した仕事を)やっていることもあり、オーディオドラマに近い感じになりそう。絵が浮かぶようなオーディオドラマができれば」、伊藤は「考察の余地がある作品が大好き。視覚的に見せる部分とあえて見せない部分の隙間に、きっとお客さんが想像する余地があると思う。謎解きをしながら進んでいく雰囲気が作れれば」と、三者三様の構想を語った。
会見では、本朗読劇のキービジュアルも公開。今回の企画は「演出家」にスポットが当たっているということで、キービジュアルも案内人の神谷と水島・若林・伊藤がスタイリッシュな姿で佇んでいるものに仕上がっている。水島は「着飾って撮影されることがない。口角を上手にあげることができなかった」と感想を述べると、若林も賛同。役者として活動する伊藤は「役として撮ることはありましたが、演出家として撮られるとなると、また違った感覚でした」と、緊張しながらの撮影だったことを露わにした。
その後、会見に参加した記者からの質問で「朗読劇のおもしろさ」を聞かれた神谷は、まず2009年に青二プロダクション創立40周年の朗読劇『サイボーグ009』について振り返る。当時行われた『サイボーグ009』の朗読劇は、石ノ森章太郎の原画に合わせて朗読するもので、神谷はそのときに「演出によって朗読劇ってこんなにも広がりがあるんだ」と思ったのだという。
続けて、「舞台に行くといろいろな体験をさせてもらえる、そんな役者に憧れがあって声優の仕事をしている気がする」と言葉にしたうえで、「声優の本分として、普段通り台本を持ってパフォーマンスをしてお客さんに拍手をいただけたら僕は素直に嬉しい」「映画なども好きですが、(音の情報で出しているものがみなさんの頭のなかで具体的に像を結ぶ)朗読だったら、皆さんの想像の中でそれ以上のものがビジュアルとして描けるのではないか」と“声の仕事”に対する熱い気持ちを吐露しながら、朗読劇のおもしろさについて語った。
会見の最後には改めて登壇者それぞれが挨拶。小川はシナリオをすでに書き終えたこともあり、「純粋にひとりの観客として公演の日を楽しみに待ちたいと思います。みなさん頑張ってください」と登壇者にエール。
水島は「新しいことをチャレンジさせてもらえるいい機会だと思うので、いい作品にできれば」、若林は「本業以外で作品に参加するのは初めて。まだ煮詰まっていないところもあるので、公演までに形にしたい」、伊藤は「いい意味で苦労して作り上げたものが愛おしく思えれば、この企画を立ち上げた神谷さんに恩返しできると思う。何より見てくれている人に楽しかったと言ってもらえるのが一番だと思うので、まずはそこをゴールにいろいろと悩んでいきたい」と言葉にした。
そして神谷は「最近の朗読劇はキャストに注目が集まることが多いという印象ですが、今回の企画はキャストがメインではありません。ここに座っている三人の演出家が主役です」と本朗読劇の趣旨を改めて強調。そして、「僕は基本的に出ないです。作っていく人たちの一番近くにいる立場として、メディアなどを通じて朗読劇を作る過程のおもしろさなどをお伝えしていき、みなさんに感じてもらえればと思っています。ひとりでも多くの人にエンタメの本質に触れていただけたらなと思っていますので、ぜひよろしくお願いします」と挨拶し、ステージを後にした。
「Staging!! Vol.1『四月十一日を千二百回繰り返したと主張する男』」は2024年6月14日より、Mixalive TOKYO ・Theater Mixaにて開催。6月14日~16日は水島演出回、6月28日~30日は若林演出回、7月13日~15日は伊藤演出回となる。朗読劇の出演者は後日発表。
(取材・文=M.TOKU)
■『四月十一日を千二百回繰り返したと主張する男』あらすじ
午後六時、私の部屋のインターフォンが鳴った。恋人のアキラ君が予定より早く来たのだろうか? モニターを見ると、見覚えがあるような、ないような男が立っている。
「突然すみません。蘇我慶太です。僕のこと、覚えていますか?」
中学時代の同級生で、サッカー部のキャプテンで、生徒会⾧を務め、定期テストはいつも満点、県内で最も偏差値の高い高校に進学した蘇我君。
現役で東大に進学して、在学中に司法試験と医師国家試験に合格して、論文で何かの賞を受賞して、当時は天才としてテレビなんかにもよく出ていた。卒業後はしばらく研究者をしていたようだったけれど、三年前に投資会社を設立して、そこでも成功して上場したらしい。
でも、彼とは十三年間一度も会っていない。なぜいきなりうちに?
「僕は、あなたを救いに来た」驚く私に蘇我君は、「僕は二〇二二年の四月十一日を約千二百回繰り返しています」と告げた――。
半信半疑の私をよそに、蘇我君は誰も知らないはずの私の秘密を次々と言い当てていく。何度も私を助けようとして、その度に私は死んでしまったという。この男を信じていいのだろうか、そして私は死んでしまうのか? 不思議な、けれど途方もなく⾧い夜が始まった。
©小川哲・講談社/「Staging!!」vol.1 製作委員会