落語家・林家正蔵、林家たい平、俳優・毒蝮三太夫、演芸評論家・長井好弘氏らが21日、東京・浜松町の文化放送内で『昭和落語名演 秘蔵音源CDコレクション』 創刊記念 及び 創刊記念ラジオ特番放送 記者発表会に登場した。
三代目古今亭志ん朝をはじめ7名の名人による至高の高座の音源がCD付きマガジンシリーズ 隔週刊 『昭和落語名演 秘蔵音源CDコレクション』として14日より創刊。「真打昇進披露興行」 での高座音源をはじめ、志ん朝の高座音源を所有するすべての民放ラジオ局(TBSラジオ/文化放送/ニッポン放送/ABCラジオ/STVラジオの5局) が、本商品に対し、現存が確認できた音源を余すことなく提供していることが特徴。今月25日の「落語協会百年」を目前に控え、『落語協会百年記念商品』となっていることや、特別番組を後日放送を予定している(※詳細は文末にて)。
志ん朝の出囃子『老松』が場内に流れるなか本日のゲストが登壇する雰囲気満点ななか、トークがスタート。それぞれ、志ん朝の思い出を語っていくことに。
正蔵は「志ん朝師匠がいなければ落語家にならなかったと思います。父(初代 林家 三平)の芸風はあまり好きじゃなかったんです。楽しませる芸風だったんですが、騒がしくてやだなって」という時期に、演芸場に行ったところ志ん朝から声をかけられ高座を観たという思い出とともに、「師匠がそのとき40なんですけど、それより若い時代の音源が出た」ということに興奮しているそう。「本当に素晴らしい噺家さんだなって。噺家の倅(せがれ)として教えてもらった部分もあるので、そういった視点からお話できればと思うのと、いまの私がいるのは、志ん朝師匠……そして、蝮さんのおかげだと思っています(笑)」と、しっかり毒蝮を持ち上げるオチまでつけて、会見場を沸かせる。
たい平は、志ん朝の落語を聴いて「こんなすごい落語があるんだなという衝撃があって」と、驚いたそうで、その後、「志ん朝師匠の周りで働いていましたら、気に入って頂いたみたいで」と、長く一緒にいたという。そのなかで「志ん朝師匠が出てくると出てきただけで、ものすごい大きな江戸という空気を客席まで持ってきた江戸という空気に変えてしまうです。江戸の中にのんびり浸かることができる。そういう空気があったんです」。
毒蝮は正蔵とたい平を見ながら、「2人と違って恋敵なんです。うちのかみさんがゾッコンなんです」と切り出す。新型コロナウイルス禍で志ん朝をはじめとした落語家お映像作品をプレゼントされ、そのときに「ラジオ代わりに聴いているんです。寝る前にも『志ん朝、志ん朝』って言って(笑)」と、時を越えていまだ魅了し続けていると証言した。
トークでは登壇ゲスト陣が次々と志ん朝の洒落た一面を窺わせるエピソードを次々披露。正蔵は浅草のトンカツ店でヒレではなくロースを注文するとともに、ご飯ではなく、日本酒と一緒に食べていたといい、なぜ日本酒かへ日本酒の原料は米だから合うという話を始め、志ん朝の食事は「また格好いいんだ。何食べてても」と、懐かしげ。さらに話に熱が入ってくると志ん朝を『矢来町の師匠』と、二つ名で呼び、正蔵自身の着物の着方などをはじめ「すべて影響を受けている」とも。
たい平も、お寿司屋さんに連れていってもらったときに、“芸人の香り”を教えてもらったといい「『芸人臭いのはダメなんだ。このお寿司屋さんはナマモノ扱ってても、ナマモノ臭くないだろ』って。芸人らしさや、香りって、どういうものだっていうことを、お寿司屋さんに行って、なにげない会話で教えてくれるんです」「『中途半端に売れるんじゃないよ』とだけ言われたことがあって。落語界にはスターが必要で、“自分だけ食えるように鳴るんじゃないよ、たくさん売れて、ほかの人も売れるように”と、ちょっと謎めいて考えろということだったんじゃないかな」と、心にストンと落ちてきたことを話す。そんな話だけではなく、出待ちのファンが駐車場で待っていた際に、志ん朝が乗りそうな自動車の前で待ち構えていたところ、乗りそうなイメージのないNSXに乗ってその場を後にしたということも。
毒蝮といえば、毒舌でも鳴らしていることで知られているが、こと志ん朝に関しては「志ん朝さんを悪く言う人は誰もいない。芸が飛び抜けてて人柄も飛び抜けている」と、たたえる。その芸は「シンフォニーのよう」とたとえ、「リズムでいうか心地よさというか、いい音楽を口調、調べという形で。カラヤンとか、バーンスタインとか、良いクラシックは何度聴いても良いもの」といい、これに正蔵も膝を叩いてうなずいていた。
今回リリースされる『昭和落語名演 秘蔵音源CDコレクション』 へたい平が落語本編に入る前に行う『枕』も志ん朝は凄かったと話すと、正蔵は「立川談志師匠は『世間話じゃ、志ん朝には敵わない』って言っていて」というと、毒蝮もその話を聴いたことがあるとうなずいていた。
そして正蔵から「落語界の宝が(63歳と)早くに亡くなられましたが、音源で落語の手本を残されているということを感じています。落語の心、頼もしさ、強さ、心に響く話芸。落語の力を感じています」と、メッセージを寄せていた。
なお、本CDリリースを記念した特別番組『ちょいといい噺を聴きたくなってきた 今、ふたたびの古今亭志ん朝』は毒蝮をパーソナリティに23日午後8時からTBSラジオで。正蔵がパーソナリティを務めたい平がゲストとなる特別番組『古今亭志ん朝を語る夜』は23日午後7時より文化放送などで放送予定!