アニメ『怪人開発部の黒井津さん』ステージが3月24日に東京ビッグサイトで開催されたAnimeJapan 2024のABCアニメーションブースで開かれ黒井津燈香役の前田佳織、カノン・サンダーバード役の土岐隼一、メルティ役の富田美憂が登場した。
漫画家・水崎弘明氏が『COMIC メテオ』に連載中の同名作で2022年1月に1クールでTVアニメが放送された。悪の組織の怪人開発部に所属し、予算や上司に振り回されながらも奮闘する主人公・黒井津燈香の姿を描く、コメディでありつつお仕事ものを楽しめる作品だ。
前田から「みんなバタバタななか、ありがとうございます」と、ブースの前に詰めかけた方々へ手を振ったりあいさつするなか登場。観客とキャスト陣の距離は近く2メートルもない間近。ステージには椅子も用意されていたが座ってしまうと後ろの方が見えなくなってしまうということで、3人で立ったままで行こうとうなずくと、土岐も「われわれ、立って仕事をするのは得意なので」と、声優という職業を踏まえたコメントで観客たちを沸かせた。
それぞれが演じたキャラクターのことをあらためて紹介しつつ、2022年放送当時のことへ前田は「収録が終わって時間経ってるけど、黒井津さんを観てると、声優のお仕事をして大変なことがあるときに、黒井津さんが一生懸命頑張ってて、この苦しみ分かるなっていうことを笑いのパワーに変えているというかに感じるんです」とキャラクターから励ましを受けているような気分になるといい、富田は、「逆に私は中学生の頃からこのお仕事をしていて、社会人の経験がないので、すごく新鮮でした」とも。
土岐が「僕たちが録ったのはだいぶ前じゃないですか。その時新社会人になった人たちも、いまはベテランになっていると思うんです。そんな方々に、もう1度観て頂ければ嬉しいですね。特撮からもゲストで、すごい人たちも来てくれたんです。今観ても新鮮に観れるのではないかなと思っています」と、振り返った。
トークでは、新年度の新社会人へ向けた3つの心構えを伝えていくコーナーを開催。
1つ目は『企画がそのまま通ることはない』というものだったが、観客から思わず「重いよ……」との声が漏れるほど現実感を伴ったものに。これに前田は「黒井津さんを演じた後に、SNSを見ていてバズっていたのが、企画が最後に行くと原型をとどめてないってあるあるだなって。商品開発の方とか、広告担当の方とか、いろんな意見を聞いていくと変わってることがあるんです」と、しみじみ。続く土岐はカノンのことを引き合いに「みなさん僕の考えた最強の怪獣やロボとかを考えたことがあるかもしれませんけど、それってコストが掛かりますよね。そうするとコストを下げるためにデフォルメされていくんです。何かグッズを作るときに、小さくすると子供が誤飲しそうでどんどん大きくなっていて、銘菓ひよこのような美味しそうなデザインになってしまう」と、哀愁のような雰囲気を漂わる。これに関連して前田は「カノンくんは2話のラストが忘れられないんです!絶対に観てほしい!」と、熱弁を繰り広げた。
また、土岐はここで「漫画原作の方が『この声優さんがいいんだけどねぇ』って……ということもあるんだよね」と、突如、業界裏話のようなことを言い出し2人から「リアルだー!」との声が上がっていた。
2つ目の心構えは『自信をもって仕事に取り組み、先輩や上司と競い合える』とのお題が提示されたが、土岐は「これなんかのセミナーですか!?」と、思わずツッコミ。それでも、土岐としては、「波風は立てちゃいけないっていうのは事務所でもそうじゃないですか。下の子たちがオーディションを受かってくると上の人たちはもやもやしてくるんですよ。でもその子を嫌うというわけではなく切磋琢磨できるんじゃないかなかって」と、こちらも実感のこもったコメントを残していた。
3つ目の『企業の経営理念・経営スタイルの中に、コンプライアンスを反映させる』ではTVアニメ6話で異物混入により廃棄の憂き目に遭ったメルティを引き合いにした富田が「これ切なかった。ウキウキしてアフレコに行ったんですけど、まさかの廃棄処分ですか!?って」と、当時の心境を話していた。
この心構えの総括として、作中の参謀・メギストスの言葉『どんな事でも失敗やミスはある!だが、それで真に優秀な人材を失うなど、大変な損失である!』を3人でリレー形式で読み上げていたが、前田はノリノリで指をさすようなポーズを決めながら言い切っていた。
後半の告知コーナーでは『怪人開発部の黒井津さん』が再放送を予定していることが発表。「嬉しい!また、みんなに観てもらって楽しんでほしいです!」と、呼びかける。さらに前田としては、「いつまででもアニメ2期をやりたいって思っているんです。大好きな作品で黒井津さんがいるから、いまここにいると思ってるし、作品を通じて素敵な共演者にみなさにも出会えたし。また、黒井津さんのシリーズでずっと待ってます」と、心境を伝えブースは大きな拍手で包まれる様子も。
このブースの熱に土岐も「カノンくんは僕の中でも大好きなキャラクターで、楽しい!でも、時々格好良いカノンくんなんです。コロナ禍で収録が少人数ずつでしかできなくて悔しかったなっていうのがあるんです。でも、みなさんお応援があれば、続きがカノンくんもまた……」と乗っかり、富田はも「今の時期に2期があったら、コロナ禍からアフレコの形態も戻ってきている状態ではあるから、アフレコスタジオが賑やかなものになるだろうなって思うし、次があると信じたい!」と、メッセージを送った。
あらためて前田から「アニメ自体が終わっても輪は広がっているし、水崎先生も頑張って執筆されているという情報を耳にしています。次のシリーズを発表できる日が来たらいいなって思っています」と、TVアニメ2期が来る日へ期待を寄せつつ、イベントを締めくくっていた。
撮影・文:水華舞