朗読劇『ネコたん!~猫町怪異奇譚~』が5月9日に東京・池袋のあうるすぽっとで開幕した。
大正・昭和初期に活躍した詩人 萩原朔太郎がひとつだけ残した小説『猫町』をモチーフにした、昭和モダンな世界観のなかで生きる猫たちの日常にミステリーを盛り込んだ作品。猫だけが暮らす町 “猫町” で巻き起こる連続猟奇猫殺し(ねこごろし)事件に、天真爛漫な探偵猫の迷路(まよいじ)ソマリが挑むというもの。
依頼主である優美高妙な富豪猫の財部梨杏(さいべりあん)、長老猫のサクタロー、事件の鍵を握る龍石李依(たついしりい)、そして切れ者刑事の雨宮将太(あめみやしょうた)との出会いから、知恵や力を得て事件の真相に快刀乱麻に迫る推理活劇を声優総勢47人が回によって担当を変えながら担当していることも特徴だ。
以下、迷路ソマリ役に伊達さゆり、雨宮将太役に高橋英則、財部梨杏役に相良茉優、龍石李依役に高田憂希、サクタロー役に安田陸矢、縫島くるみ役に永瀬千裕、弁士役に滝佳保による初日公演の公式レポート。
蒸気機関車の汽笛が鳴る、レトロ感のある出だし。昭和初期を彷彿とさせる。不穏な出だし、息を切らして走る、大きな音、叫び声。明らかに殺人(猫)事件発生。そして弁士の登場。鳴り響く三味線の音。これから始まる作品の説明が軽妙洒脱。名前も「野村ネコ」ノラネコから命名、ネーミングも洒落が効いている。
連続猫殺し事件、皮を剥がされている。そんな折に迷路探偵事務所に依頼猫、身なりの立派なおしゃれな雌猫・財部梨杏。大金を積む、驚く事務所の探偵・迷路ソマリ。殺猫事件には当然のことながら警察も動いている。巡査部長の名前は雨宮将太、勘の良い観客ならわかる、人気の猫の品種。ソマリ、梨杏、雨宮、そして、“青猫館”と呼ばれる旅館に居座る猫?・サクタロー。事件を追う警察、探偵、だが、思うように進まない、事件の真相は? というのが大体の流れ。
個性的な猫たちが次々と登場、言葉遊びと洒落の応酬、とにかく弁士の状況描写がイキイキとしており、朗読劇でキャストはマイクの前にいるのだが、観客の脳内は走りまわる猫たちの様子が手に取るようにわかる。
また、キャストが着用している衣装、昭和初期のモダンなファションをイメージしたそう。探偵のソマリ、マントに帽子、いかにも“探偵”な風情。依頼人の梨杏は明るい色のツーピース、雨宮のスーツも粋、そして猫なので弁士以外は皆、猫耳をつけている。猫にまつわるネーミングや言葉・ことわざ、「ソマリ」「雨宮翔太(ソマリから『アメショー』と呼ばれる)」「財部梨杏(サイベリアン)」「龍石李依(ドラゴンリー)」「縫島くるみ(ぬいぐるみ=ラグドール)」「萬田千香(マンチカン)」、「猫に小判」「好奇心は猫を殺す」「泥棒猫」など、もちろん、またたびも。
後半に大立ち回り、もちろん朗読なのでリアルに大立ち回りはないが、弁士の言葉と照明などの演出効果で。初日のキャストで観劇、迷路ソマリは伊達さゆり、可愛らしく闊達な印象でキャラクターに合っている。そのほか芸達者な声優陣が物語を紡ぐ。
弁士はベテラン俳優の滝佳保子、貫禄すら漂う弁士ぶりで、イキイキと場面を描写、単なる朗読劇ではなく、“活動写真”の語りのような、昭和感を感じる口調。照明がそれを後押しする。終始、“猫”を感じるこの企画、キャストがつけている猫耳は皆、異なる。小さいところかもしれないがこだわりを感じさせる。上演時間は1時間40分ほど休憩なし。余裕を持って観劇したい。
■脚本・演出:木村孔三コメント
それぞれの役に多面性、一筋縄ではいかない人間性…
いや猫性を膨らませてみました。耳馴染みの良い言葉の応 酬や言葉遊びも存分に入っています。
中でも小気味よくまくしたてていく話術、そして兼ね役をいかに演じ分けるかという部分を特に楽しみに観ていただけたら。
所々に醸し出す昭和モダンの雰囲気、キャラクターの猫種を表す猫耳も見どころの一つです。
弁士役とくるみ役は演劇畑のお二方、その他の五役は声優 が日替わりで務めます。その日ならではの化学反応もライブならでは。
特に龍石役は男性と女性どちらでも演じられるようにしたので、男性バージョンと女性バージョンでの 捉え方、
見え方の違いを観ていただくのも今作の魅力かなと思います。ぜひ、劇場へいらしてください。
■プロデューサー:慶長聖也
オリジナル原作をつくり、まず “朗読劇” という形で展開させて頂こう、せっかくなら “朗読劇”
だからこその良さを追求できる作品をつくろう、と始まりました。
稲川淳二さんが紡ぐ身の毛がよだつ怪談話のような『ホラーミステリー』、さらに具象表現ではなかなか描き難い不思議な『ファンタジー』要素を盛り込んで、せっかくなら愛くるしい個性豊かな『猫』が主役のお話にしたいと、話は盛り上がりました。
そこでパワーハウスの入江祥雄さんから、詩人の萩原朔太郎が書いた「猫町」を題材にするのはどうだろう、とご提案をいただきました。
できあがった原作を、木村孔三さんに見せると話は大いに盛り上がり、個性的なキャラクターがより濃く輪郭を帯びました。
大きく木村孔三版の脚本で変わったのは、しこたまコメディが増えたこと。けれども初稿を読んだ時も、稽古をしていても、その愛すべきくだらなさに腹を抱えて笑ってしまう、そしてそのくだらない描写が、実は後の心を揺さぶるドラマや戦慄するシーンへと繋がっていく。
そうだ、私たちがつくってるのは娯楽なんだから、これでいいんだ、と思いました。
皆さま、面白ければぜひ笑って頂き、怖ければよりお耳を欹てていただき、熱く演じるキャストの方々に惜しみない拍手でお応えいただければ、
関係者一同、この上なき幸せでございます。
以上
また、迷路ソマリ役の鈴原希実、伊達さゆり、吉武千颯が歌唱するテーマソングのライブ音源も販売決定したことも明かされた。
■配役
◯迷路ソマリ(思い立ったらすぐ行動、天真爛漫な探偵猫)
cv:鈴原希実、伊達さゆり、吉武千颯
◯雨宮将太(過去の因縁に縛られる、捜査一課のエース刑事猫)
cv:伊東健人、浦和希、大野智敬、神尾晋一郎、狩野翔、高橋英則、戸谷菊之介、中澤まさとも、中島ヨシキ、西山宏太朗、森永彩斗、山口智広
◯財部梨杏(ソマリに依頼を持ち込む、優美高妙な富豪猫)
cv:大橋彩香、工藤晴香、久保ユリカ、駒形友梨、相良茉優、佐々木李子、涼本あきほ、瀬戸桃子、髙橋ミナミ、立花日菜、田中ちえ美、土屋李央、豊田萌絵
◯龍石李依(型破りな雰囲気を漂わせる曲者で、事件の鍵を握る重要参考猫)
cv:市川蒼、石見舞菜香、小市眞琴、榊原優希、諏訪ななか、高田憂希、橘龍丸、土屋李央、中澤まさとも、野口瑠璃子、増元拓也、Machico、峯田茉優
◯サクタロー(飄々とした生き字引、猫町の長老猫)
cv:赤羽根健治、市川太一、井上和彦、大場真人、笠間淳、神尾晋一郎、高橋英則、橘龍丸、浜田賢二、増元拓也、安田陸矢、山下誠一郎
◯縫島くるみ(甘い香りに派手な風貌のお調子猫) cv:永瀬千裕
◯弁士:滝佳保子
※キャストによっては、回によって配役が異なる場合がございます。 詳しくはスケジュールの出演表にて
※記事内写真は撮影:金丸雅代
(c)ネコたん!パートナー