俳優・磯村勇斗が5月22日に東京国際フォーラム ホールCで開催された映画賞『第33回 日本映画批評家大賞』授賞式に助演男優賞を受賞したことから登壇した。
『日本映画批評家大賞』は1991年に水野晴郎氏が発起人となり、淀川長治氏、小森和子氏といった当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された映画人が映画人に贈る賞となっている。33回目の今回は「進化し続ける力」をテーマにして展開している。
磯村は2023年10月に公開された宮沢りえ主演の映画『月』に出演。『月』は、実際の障害者殺傷事件を題材にした作家・辺見庸氏による同名小説。重度障害者施設で働き始めた元・作家の堂島洋子が垣間見た世界を描いており、磯村は理不尽に誰よりも憤っている絵の好きな青年さとくんを熱演した。
その選評には、「理不尽のまかり通る重度障害者施設で献身的に働く青年が、いつしかゆがんだ正義感と使命感に取りつかれ、恐ろしい殺人者に変貌を遂げていく姿を、不思議な説得力を持って演じている。入所者に読み聞かせをするための紙芝居の稽古に励む姿や、底意地の悪い先輩に小突き回されてニヤニヤする様子に、不気味なリアリティーが漂う」「磯村はいとも軽々と「理路整然とした狂気」という得体のしれない恐怖を具象化する」との言葉が並んでいる。
ステージには、黒のフォーマルなセットアップで登場した磯村。「非常に嬉しく思います」と笑みが漏れる。
「作品の内容と自分の演じた役を考えると、ありがたい賞との間で悩んでいます。役者としも嬉しい賞でもあって。素晴らしい作品に出会えて感謝しています。映画作りは思白いところもありますが、ときに鋭く冷たい部分もあるんです。だからこそ、映画・映像作りの現場はやめられないなって感じてます。長い役者人生で、一歩一歩進んで映像に華を添えられるような役者にと思っています」
とスピーチした。
選考委員からは「彼はすごいよね」と手放しで褒めつつ、頭のキレる役から平凡な男まで演じ分ける磯村へ「これからも楽しみで仕方ないです」と、伝える。司会の松尾貴史からも実際の死刑囚のバックボーンを演じるにあたって「やりすぎてはいけない。サイコパスになってはいけないという思いで監督とともに深く作っていきました。本当に難しかったです。監督にはとにかく普通の青年でいてほしいと言われていました」と、振り返っていた。
ほか授賞式には俳優・東出昌大、筒井真理子、木野花、小林薫らが登壇た。
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ