歌舞伎俳優・中村七之助(34)、中村梅枝(30)が13日、都内で渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三(きられのよさ)』製作発表会見を演出を務める串田和美氏らとともに開いた。
1994年から開催されている『渋谷・コクーン歌舞伎』の第16弾の新作。美男美女が別れと再会を繰り返す江戸世話物の人気狂言『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』に上演されることのない場面を加え、新たな演出で魅せる。江戸の大店の息子・与三郎役を七之助、与三郎と恋に落ちる美しい囲われ者・お富を梅枝が演じる。
七之助は、「父(中村勘三郎さん)が残してくれた宝物のコクーン歌舞伎をやらせて頂きます」と、切り出し、「立役(たちやく)ということで不慣れな状況ですが、(関係者から)素敵なキャスティングと言われましたがいまのところ自信はないですが、いいものになればいいなと思っています。けいこを頑張っていいものに仕上げられれば」と、意気込みを。
役の決まったときの心情へ七之助は「ずっと女形を務めておりましたので立役の方からしてみればやりたい役の1つだと思うんです。与三郎役が決まって公に出たときに、真っ先に楽屋に飛んで入ってきたのが、現(松本)幸四郎さんと(片岡)愛之助さんで、『傷はこうやって描くんだよ』と聞いてもいないのに教えてくれて、思い入れがあるんでしょうね(笑)。全く違う与三郎像にはなると思いますけど、先人たちが残してくれた思いはどこか腹にしまってやらないとと痛感していますね。あとは台本が出来上がってないのでどうなるか分からないですね」と、歌舞伎俳優の先輩方からの思いを引き継いだというエピソードも披露した。
一方、梅枝は本作がコクーン歌舞伎初参加となるが、「コクーン歌舞伎初挑戦ということで非常に不安とワクワクといろんな感情が入り混じっております。七之助の女形が見たかったなと言われないように一生懸命務めてまいります」と、女形で人気の七之助を意識したコメント。
記者たちからは、そんな七之助との共演ということへの思いを突っ込んだ質問も飛ぶと梅枝は、「高校1年くらいのころから何度も共演させて頂いて、一番年の近い役者仲間で、尊敬する半面非常に嫉妬することも多くて教えあいをすることもあったりするんです。七之助の兄さんにはない僕の良いところもあると思うので、そういうところがハマっていけばいいなと思っています」と、いいライバル関係にも様子を見せていた。
話が演じる役の方向へ。梅枝は、お富像へ、「現段階では出てくるたびに違う女性像になっているというのになっています。与三郎のことは本気で好きだったんですけど、その後、会うたびに好きなのかどうか。気持ちに一貫性を持ったほうがいいのか。そうではないほうがいいのか、というので、いまのところ一言で言えば性悪な女のような作り方にしようと思いますね」と、演技プランを思い描いていた。
ほかにも、もともと『切られ与三』との通称で有名だったものが『切られの与三』と“の”が入っていたことへ串田氏から「ちょっと違うぞと匂わせたいなって」と、笑いながら明かしたり、串田氏の絵をもとに作ったというポスタービジュアルへ、七之助が「最初のビジュアルは大きく『切られの与三』と描いてあって、刑事ドラマみたいだったんです。これはどうかなと思って、話し合いをしたいといろんなポスターや、写真で素敵なものも見せて頂いたんですけど、監督の絵がいいと言いまして。案外ごたごたがあり、デザイナーさんも降りてというちょっとした一悶着もあり、そのときに串田監督が出してくれた絵なんです」という裏話があったことも披露して報道陣を驚かせていた。
渋谷・コクーン歌舞伎『切られの与三』は5月9日から31日までBunkamuraシアターコクーンにて上演!