俳優・吉沢亮が9月21日に東京・新宿ピカデリーで主演映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(監督:呉美保/配給:GAGA)公開記念舞台あいさつを俳優・忍足亜希子、今井彰人、烏丸せつこ、でんでん、呉美保監督とともに開いた。
作家・エッセイストの五十嵐大氏の自伝的エッセイ『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』が原作。脚本は『ゴールド・ボーイ』、『正欲』などを手掛ける港岳彦氏が担当している。耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大(吉沢)の心の軌跡を描いている。
耳の不自由な忍足、今井のために手話通訳の方も入るなか、吉沢は深いグリーンのセットアップで登場。吉沢演じる大の両親である五十嵐明子役の忍足と五十嵐陽介役の今井、そして破天荒な祖父・康雄役のでんでん、祖母・広子役の烏丸と劇中の“一族”が勢ぞろい。キャスト陣からも、吉沢の“人気ぶりイジり”を受け、照れ笑いと和気あいあい。笑いすぎるあまり、吉沢は後ろによろっとバランスを崩しかける一幕もあるほど楽しげな様子が。
父親役を演じた今井とは本イベント直前のエレベーターを待っている時に年齢を聞かれたそうそうだが、「“30になりました”ってお伝えしたら、(今井は)『33なんです』と言われて。さっき初めて知った衝撃の事実でした。全然年上だと思ってました。ごめんなさい」とやりとりを繰り広げて和気あいあいな様子も。
オファーを受けたときのことへ吉沢は、「いやもう純粋に嬉しかったですね」という。それは「呉監督の作品は元々好きで観させていただいてましたし、いつかご一緒したい っていうのはずっと思ってて。その中で今回のお話いただいて、すごい特殊な難しい環境ではあるんですけど、この作品の描いてる普遍性みたいなものがすごく素敵だなと思って」と、心が動いたそうだ。
主演の吉沢について、共演者からはさまざまなコメントが。でんでんが「みなさんお芝居が真面目なんです。私なんかは不真面目な人間ですので」という演技だったり、忍足は「吉沢さんは一生懸命努力をして手話を習得してくださったんです。本当にすごいと思いました。もう本当に満点!最高の息子です!!手話だけではなくて、セリフもありますし、感情を込めた表現をしていく。この3つを合わせ持って、きちんと気持ちを込めて息子役を演じてくださって、きちんと表現してくださって、本当に素晴らしいと思いました」と、たたえると、吉沢も『ありがとう』の手話で深々と頭を下げる。
今井も「吉沢さんは、片手で本当にナチュラルに生活の中で使われるリアルな手話を表してくれました。この温かい家族の関係性、対話が表現できたと思います。ほんとに素晴らしいです、彼は!」と、思わず身を乗り出してアピールすると、吉沢もこれには2度『ありがとう』の手話で厚い感謝を伝えていた。
さらに呉監督からは起用へ、「ファンで」と笑いつつ、「彼の内面にあるものもっともっと見たくて。今までの作品を観させて頂いて、たぶんもっともっとあるだろう、もっとあるだろうといち観客として思ってたんです。今回の役はそんなに感情表現を出さないけれども、手話という技術も含めて、ものすごくなんかいろんな要素を持ってないと、表現してくれないと成立しない主役なんです。見えないからこそ、 なんかそれを吉沢さんならやっていただけるのではないかなと思って」と、気持ちが固まっていったといい、結果、吉沢の演技は「もう想像以上」と、大満足だったそうだ。
イベント終盤には今“伝えたい気持ち”をフリップで発表するコーナーも開催。ここで忍足が『ありがとう』としたためたフリップを出した瞬間に、なぜか吉沢は大爆笑。そして吉沢の順番が巡ってくると、そこには忍足と同じく『ありがとう』と示されており、吉沢は「そりゃそうなんですよ!(笑)」と言いつつ、一致をみたことに「すごいですね」と、楽しげ。
この『ありがとう』の意味として「もちろん観てくださったみなさんへ“ありがとう”っていうのも、もちろんありつつ、お母ちゃんに“ありがとう”だなと思うんです。こういう映画だし、なかなか“ありがとう”とか言わないし、言えないじゃないですか」と、この場所を借りて言いたいことや、「うちは男4人きょうだいで、めちゃめちゃうちの母ちゃん苦労してたと思うんです」と、自身の母親の苦労に思い至る様子が。
その母親は舞台あいさつなど「結構観に来てくれるんです。ただマネージャーさんとは連絡とってるんで、僕には(情報が)入ってこなくて。もしかしたらいまいるかもしれないですし、いないかもしれないです」と、プライベートも少し話していた。
映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は公開中!
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ