映画監督の庵野秀明氏、出渕裕氏、アニメ・特撮研究家の氷川竜介氏が10月6日に東京・新宿ピカデリーで『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年記念上映会トークショーに登壇した。
『宇宙戦艦ヤマト』TVシリーズ第一話の放送がスタートして50年を迎え、その周年を記念した特別企画のプロジェクトの一環としての上映イベント。シリーズの大ファンを公言する庵野監督の企画・プロデュースによる一夜限りのスペシャルイベントとなっており、1974年10月6日午後7時30分に『宇宙戦艦ヤマト』第一話が放送されたことにかけ、本日同時刻に上映するというもの。劇場初公開となる幻の8mmフィルム版(劇場版とは異なるTVシリーズ総集編)の上映というのもイベントの目玉となっている。
会場では『宇宙戦艦ヤマト』TVシリーズ 第1話「SOS地球!! 甦れ宇宙戦艦ヤマト」。劇場初公開となる『宇宙戦艦ヤマト』TVシリーズ総集編8㎜フィルム版(第1部「さらば地球よ」/第2部「神よ、ガミラスのために泣け」/第3部「愛に生き 愛に死す」)上映後に3人によるトークショーが開催。
庵野氏といえば今年7月31日に左脚複雑骨折していたことを発表しているが、この日も出渕氏から「足大丈夫?」と声がかかるとともに、裏で実は車椅子で移動していたことが出渕氏から明かされ、庵野氏は「なるべく移動を減らそうと思って」と、苦笑いしながらイベントをスタート。
庵野氏は本日は司会というスタンスで、「僕はあまりしゃべらないように司会をしているんです」と話していたが出渕氏は観客たちに「期待してこられましたよね?」と、声をかけると拍手が返る。しかし、庵野氏は「きょうはヤマトの素晴らしさを伝えようと思ったんです。けれど、きょう集まるみなさんには釈迦に説法だと気づいて……」と、詳しい方々が集まっていると気づいて詳細を話さなくてもいいのではないかと感じたという。そこで、『宇宙戦艦ヤマト』を知らずにこの場に来た方はいるのか緊急アンケートが行われ、実際にいたことに庵野氏は「よかったー!」と、安どしていた。
TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の好きなポイントの話題へ。出渕氏は「構成が素晴らしいんですよ。主役の船が1話で出てこない。ラストに出てくる象徴的な絵」に見入ったといい、庵野氏は2話の「(ヤマトの)主砲と(女性キャラクターの)森雪です。あの主砲は素晴らしい。(作画を担当した)友永和秀さんの作画にはやられました。責任取ってください(笑)」と会場に来場しているという友永氏に直接訴えて、笑いを誘っていた。
さらに庵野氏は「波動砲にシビレました。古代君がカチッと押すまで2分10秒あるんです。大砲を撃つのに2分10秒かけているのは、その当時はなかった」と見入ったという話や、出渕氏は「あのときまでは波動という設定と言われても分からなかった。波動砲を撃ってはじめて、この船は大砲なんだって」と理解したという思い出を披露。
さらに、TV放送当時の話題となり、当時のTVはその作りとしてつまみを回してチャンネルを変更していたということで、「テレビのチャンネルを回す」という単語に苦笑いした『宇宙戦艦ヤマト』によって「それまで円谷一筋だったのが裏切った」とまで惹きつけられたとも告白していた。
そこから2012年から2013年にかけ出渕氏が監督した『宇宙戦艦ヤマト2199』の話題にも触れる。同作で『宇宙戦艦ヤマト』で理論的にあやしい部分も辻褄を合わせるために出渕氏は「理論武装をした」と苦労をにじませる。
さらに出渕氏は、「あれは憑き物というか禊というか。あのとき、50歳の折り返しで、ヤマトを中学とか高校のときに観ていた世代にあったんで、その世代でもう一度作ろうというので。あのときOPに参加してほしかった(絵コンテは参加している)んですけど、庵野くんが降りたから俺がやっているわけじゃないですよ。老後の楽しみにやれるといいねって話してて」というと、庵野氏が「抜け駆けしたよね(笑)」とボソリ。しかし、出渕氏はちゃんと“仁義を切って”庵野氏へ声をかけたと2人でわちゃちゃと盛り上がったうえ、庵野氏から出渕氏へ12年の時を超えてダメ出しまでしていた。
イベント後半には、発掘されたというノンテロップ版のオープニング3本とエンディングが上映。そこはテンションが上がったそうで、「あった!それも3つ!!」と庵野監督も声を大にして叫ぶほどだった。
「これがなかったらアニメをやってない」という庵野氏だがそこから『ガンダム』シリーズの生みの親の富野由悠季氏に話が向く。出渕氏が「ガンダムも1話はよくできているんです。けれど、見返しが効くのはヤマトの1話なんです」と熱弁。すると庵野氏は「僕はガンダムの1話。やっぱ富野さんはすごい」と、返して楽しげだった。
イベント後半には、5つの発表が行われ庵野氏が代表を務める株式会社スタジオカラーが『宇宙戦艦ヤマト』の新作アニメの映像権を得たことがなどが発表されたり、その最後には『宇宙戦艦ヤマト』OP映像とともに会場一体となって合唱したりと、一体感あるままにイベントは終演を迎えていた。
取材・撮影:水華舞 (C)エッジライン/ニュースラウンジ