俳優で歌手・星野源が12月31日にパーソナリティを務めるラジオ番組『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送、月曜・25時~)を生放送し、大晦日に出演した『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK)に弾き語りで披露した楽曲『ばらばら』への思いなどを語った。
『第75回NHK紅白歌合戦』で当初、星野は楽曲『地獄でなぜ悪い』のパフォーマンスすると発表されていた。しかし、同楽曲が2013年公開の園子温監督の同名映画の主題歌で、園監督の過去の報道を引き合いに疑問視する声が寄せられ、今月26日にNHKから楽曲『ばらばら』に変更となった。このことに、星野側も12月26日付の公式サイトで『「第75回NHK紅白歌合戦」出場楽曲変更について』と題して掲載しており、「先日発表された『第75回NHK紅白歌合戦』の、星野源の歌唱楽曲についてご報告させていただきます。楽曲『地獄でなぜ悪い』は星野源の曲です。星野は2012年にくも膜下出血で倒れ、その闘病期に病院でこの楽曲の作詞をしました。詞の内容は、星野の個人的な経験・想いをもとに執筆されたものです。後述する映画のストーリーを音楽として表現したものではありません。星野源の中から生まれた、星野源の歌です。一方で、すでにSNS等で指摘されているように、のちに性加害疑惑を報道された人物が監督した映画の主題歌であること、映画タイトルにある『地獄』というワードにヒントを得たこと、映画タイトルと同名の楽曲であることもまた事実です。この曲を紅白歌合戦の舞台で歌唱することが、二次加害にあたる可能性があるという一部の指摘について、私たちはその可能性を完全に否定することはできません。今回の歌唱楽曲は『アーティストの闘病経験を経て生まれた楽曲で、いま苦しい時代を生きる方々を勇気づけてほしい』という、紅白制作チームからの熱意あるオファーを受けて選定された経緯があります。しかし、そのオファーの意図から離れ、真逆の影響を与えうるのであれば、それはオファーを受けた私たちの想いに反してしまいます。そのため、今回同曲を歌唱することを取りやめることにいたしました。私たちは、あらゆる性加害行為を容認しません。この曲が多くのファンの皆様に愛していただいている楽曲であることを、私たちはよく理解しています。また、星野自身もとても大切にしている楽曲であることはこれからも変わりません。紅白制作チームと協議の結果、今回は曲目を変更し、『ばらばら』を弾き語りします。ご期待いただけますと幸いです。星野源&スタッフ一同」と明かしていた。
そんな状況を経て『第75回 NHK紅白歌合戦』で楽曲『ばらばら』をパフォーマンス後の生放送。
番組冒頭で「誰も聴いてないと思うんですよ。年越しの大晦日」「深夜1時ってさ、1番メディアから遠ざかりたいっていうか、初詣行こうとかの時間で誰も聴いてないと思うんです。空(くう)に向かってしゃべるラジオ」と笑いつつ、番組放送1時間前の鈴木杏樹が担当しているラジオ番組『24時オールナイトニッポン MUSIC10』の締めの言葉として「さよなラッキョウです。あれ誰も聴いてないと思ってるのかもしれない(笑)」といいつつ、その鈴木から番組前にいつもあいさつをされるそうで「いつもその明るさに救われますよね」と、感謝から始まる。
そこから、紅白歌合戦出演まで先週から日常を過ごしていたことや、『オールナイトニッポン』スタッフの対応にお互いの関係性だからこそ言える細々としたツッコミを入れつつ「そういう人もいると思うんですよ、俺。新年めでたいってみんな言うじゃないですか。あけましておめでとうございます。今年はいい1年になる……でも、しんどい人もいると思うんですよ。もし聴いている方がいたらメールを頂ければと思うんですけど、普通に“おめでとうございます”“今年はこんな抱負もあります”っていうメールもいいんですけど、“大変なんすよ”とかさ……僕も、くも膜下出血で倒れたのは年末だったからさ、年末って倒れた人が救急で病院に来るんですよ。もちろん、飲み会で酔っ払ってという人もいるし、全然違うことでも……。年越しでさ、みんなが『めでたい!』って言っているときにさ、静かな部屋で1人でじっと過ごしている人もいるわけじゃん。この番組、本当にいろんな年齢層の方が聴いているんです。メールを頂きたくて、なんでもありって思っています」と、呼びかける。
そんな星野の声に応えるように番組中盤にはさまざまなメッセージが寄せられる。歯科矯正中のためにモチが新年食べられないという方や、インフルエンザを患っている方らへの気持ちを寄せつつ、「つい先程、第75回 NHK紅白歌合戦に出場してきまして、感想メールをたくさん頂いて、そのメッセージを読んでいきたいと思います」と切り出す。
その中で紅白歌合戦で披露した『ばらばら』に触れた18歳の高校生からのメールがあり「『わたしは偽物』という歌詞だった歌詞が『わたしは本物』という歌詞に変わっていることによって、(その後の歌詞の)『世界はひとつじゃない』という言葉がよりストレートに心に響き、黒くまっすぐな源さんの瞳は何かを伝えようとしていると強く感じられ、聴きながらドキッとしました。自分と他人の関係性に悩んでいた時に『ばらばら』に優しく救われたこと、不登校気味だった高校1年生のときに(星野がもともと紅白歌合戦で歌唱予定だった楽曲)『地獄でなぜ悪い』によってどうしようもない状態だった自分を明るく肯定してくれたこと、絶対に忘れません」。
26歳の方からは「『ばらばら』最高でした。格好良すぎて怖いと思ったことは初めてです。電波を通じて、テレビの画面を通じて、重みと圧力を感じました。源さんの思い、しかとテレビの前にいる私まで届いております。年末に本当に素敵なステージをありがとうございました」。
23歳の方からは「私は自分のこと、周りの環境、いろいろなことで心休まることが少なかった1年でした。でも、紅白での『ばらばら』、いろんな感情、思いを持った人たちに伝わったと思います。(紅白歌合戦で歌唱した歌詞の)『本物はあなた わたしも本物』。歌詞が変わった『ばらばら』に込めた、いまの源さんの姿を見ることができて、とても幸せでした」。
そんなさまざまなメッセージを受け止めた星野は嗚咽を漏らすような声と間とともに「これからも大好きですというメールを頂きました」とのコメントで締めくくる。
メッセージを読んだ後に楽曲をかけることとなったが『ばらばら』をかけることに。その直前に、楽曲の説明として「自分にとってはとても大事な曲で、25歳くらいのときに作りました。その曲を作って、自分の歌ができた感じがするなって。そのときは、(自分の中の)言葉の言語化という感じではなかったんですけど、結果的にそういう感覚だったなって思います。誰にも似ていない自分。音楽が好きですからいろんな人から影響を受けているのはもちろんですが、自分の音楽、自分の歌、星野源の歌、星野源の音楽というものができたなって、はっきり感じた1曲でした。ちょっと昔の曲ではありますが、きのうも歌いましたけど、自分の中ではリアルタイムの曲だなって思っています。このモチーフっていうか、テーマっていうか、歌詞の言葉というのは、ほかの自分の曲にもその都度都度テーマとして現れてきていると思いますし、自分の人生とずっと並走する歌だなと感じています」と、思いを語ってから曲をかけた。
その後もメッセージが寄せられ続け、やりとりやコーナーを楽しんだ星野。終盤に再び、メッセージで「星野源の楽曲が大好きです。私は誰が何と言おうとこれからもついていきますので、突き進んでください」とのコメントに「ついてこい、好きにやるから、みんなついてこいや」と穏やかそうな声とともに気持ちを口にしていた。
文:水華舞