歌舞伎俳優・中村七之助(34)、中村梅枝(30)、中村萬太郎(28)、笹野高史(59)、片岡亀蔵(56)、中村扇雀(57)が8日、東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三(きられのよさ)』(演出・美術:串田和美)公開ゲネプロを前に囲み会見を串田氏とともに開いた。
1994年から開催されている『渋谷・コクーン歌舞伎』の第16弾の新作。美男美女が別れと再会を繰り返す江戸世話物の人気狂言『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』に上演されることのない場面を加え、新たな演出で魅せる。江戸の大店の息子・与三郎役を七之助、与三郎と恋に落ちる美しい囲われ者・お富を梅枝が演じる。
まずは七之助から、「不慣れ立役(たちやく)なものでなかなかみなさまのお力を借りて舞台に立っていて、どう立っていいのかとか余計なことを考えすぎて、まだまだダメだなと思うんですけど、一生懸命いいものをと思ってゲネプロをしたいと思います」と、意気込むと、梅枝が「不慣れな舞台で……」と七之助と同じように切り出し報道陣の笑いを誘いつつ、「右も左も分からない舞台です。みなさんい助けられながら、まだまだですけどもっともっと良くしていこうと、精進している最中です」と、しみじみ。
続けて、笹野は「いつも楽しみにしてくださっているお客様のことだけを考えて、勘三郎さんの遺志を継いで頑張っています。また出てほしいと言ってもらえるような舞台にしたいと思います」と、意気込めば串田氏は「歌舞伎に初めて触れる人に、歌舞伎ってこんな感じなんだという思ってもらえるような、歌舞伎で再発見もしてもらえればと思っています」と、作品への思いを語った。
与三郎を演じるということへ七之助は「まさか与三郎をと思っていて。脚を見せるということも抵抗がありますし、お尻まで白くするとは思いませんでした。お尻まで白くするのでTバックをはいっているんです。それを見て、ああ女形なのになって」と、戸惑いも告白。「立ち方からどうしていいんだろうって思うんです。男っぽく演じなきゃいけないのかなとか考えたりしますよ。舞台に立ってもギアが入るまで時間がかかって。女形だとギアをトップに入れたりセカンドに落としたりは自在なんですけど、ちゃんとしないとエンストしちゃう」とも告白すると、笹野が「宝塚の人じゃないんだから」と、ツッコミを入れて盛り上がっていた。
そんな試行錯誤している七之助へ串田氏は「戸惑いも大事だと思うんです。先輩の立役の方がこう動いているというのを確かめる。なんとなく習慣でやっていたことを確かめる。自分たちの動きを探そうよということがかえってできるということで、僕らもこうやった方がいいのか、どうしようとか、そうじゃなくてもいいんじゃないかとか、かえって再確認するというのが素晴らしいなって思うんです」と、考えを披露。
それを聞いて七之助は「歌舞伎の与三郎が好きな方が見たら金返せと言われるかもしれません。でも、どういうふうに与三郎という人間が人生を歩んできたかということをメインに1人の人間を演じようと努力しています。僕も歌舞伎役者なので与三郎、お富のイメージが強いのでそこの葛藤はあります。古典のイメージがこびりついているので、そこから脱却するのが大変で。でもいつもやってるようにやると違うなと思うし、美しくしていくと歌舞伎に寄っちゃうし、いまのところ答えが見つからないです」と、率直な心情を吐露していた。
七之助から「一生懸命31日までやらせて頂きます。ぜひお時間ございましたら、お足を運びくださいませ。よろしくお願いします」と、呼びかけていた渋谷・コクーン歌舞伎『切られの与三』は9日から31日までBunkamuraシアターコクーンにて上演!