俳優・大泉洋主演で公開中の映画『室町無頼』(脚本・監督:入江悠/配給:東映)。本作のVFXメイキング映像が1月31日に公開となった。
直木賞作家・垣根涼介氏の、自らの力で時代を切り拓く「無頼」たちを描いたアクション・エンタテインメントの同名作が原作。大泉は、己の腕と才覚を頼みに世直しの野心も持つ蓮田兵衛役で作品を主演する。ほか、兵衛に拾われ、身も心も成長する才蔵役に『なにわ男子』長尾謙杜、才蔵に棒術を教え込む老師に柄本明、民を虐げ、ぜいたくにふける有力大名・名和好臣に北村一輝、高級遊女にして男たちの間を漂う絶世の美女・芳王子(ほおうじ)役に松本若菜、幕府から治安維持と取り締まりを任される悪党一味の首領・骨皮道賢に堤真一がキャスティングされている。
公開されたのは、室町時代の作りこまれた世界観や、一揆の迫力がVFX技術を通してどのように作られたのか、そして長尾演じる棒術の達人・才蔵の圧巻の1カットアクションがボリュメトリックビデオによってどのように生まれたのか分かる映像。
一揆の迫力は本物の松明を使用したり、実際に人を集めてなるべくリアルで撮影しつつも、VFXでその迫力を増すように補完。現場の迫力を増しつつ、違和感のない映像を作りあげた。
1カットアクションは、まずグリーンバックでの芝居をデジタルデータでキャプチャし、撮影方法を検証。美術チームが必要な足場を制作したり、逆に不要な部分を削ったりなどして調整。アクションチームはシミュレーションを元に殺陣を作り上げ、キャストは毎日のように練習と、カメラテストをした後に本番に臨むという、VFX技術をもとにまさに現場が一丸となって作り上げた。
VFXスーパーバイザーの野口光一氏は「VFXに丸投げではなく、各チームと相談ができる現場で設計していったことで、世界観がうまくいった」と語っている。また、300人ものエキストラが集う二条大通りの戦いのシーンは当初、時間や天候の制約がないスタジオの中での撮影が計画されていたが、ハリウッドとは異なり高さがあまりない日本のスタジオでは、照明が近くなることで自然光を表現することが不可能ということで、オープンセットで実施することになったという。ちょうど太秦の映画村の建て替えのため更地になる予定の場所があったことで実現した、奇跡のタイミングでもあったのだ。
また本作の重要な要素である『用心棒』(1961)や『マッドマックス』(1979)のような荒廃した世界観については、大泉が「ジェットファンの音でセリフが聞こえない」というエピソードを各所で披露している通り、背景で常に煙があがっていたり、木が揺れていたりするためCG合成には特段の苦労があった。しかし野口は、入江監督の思い描く世界観を作り上げるため「前面にどうだ!というエフェクトもあるが、本作ではバックグラウンドのVFX」を心掛けていたという。また本作のVFXは神央薬品、NHKアート、白組、VOXELなど、多くのVFX制作会社が携わり生み出されている。
■VFXメイキング映像/YTリンク
https://youtu.be/mZ3QX4AxVGw
※記事内写真は(c) 2016 垣根涼介/新潮社(c)2025『室町無頼』製作委員会