ボーカル担当のhyde、ギター担当のken、ベース担当のtetsuya、ドラムス担当のyukihiroによる“ラルク”の愛称でも親しまれるロックバンド『L’Arc~en~Ciel』が1月18日と1月19日に東京ドームでライブイベント『L’Arc~en~Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION-hyde誕生祭-』を開催した。
(Day1レポ:「L’Arc~en~Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION-hyde誕生祭-」Day1開催)
以下、DAY2公式レポート部分。
Day2は前日より1時間早い17:00開演で、「CHASE」の間奏部分も無事に成功。「楽しませてもらいます!」と宣言したhydeはこの日、Day1以上に伸びやかに自由にパフォーマンスしているように見え、同時に、より深く曲の世界に入りこんでもいるように見えた。
「浸食 -lose control-」のドラマチックな展開は迫真の演奏で、この退廃美はL’Arc-enCielの真骨頂だと痛感する。「forbidden lover」の歌唱、演奏はより強い情感を湛えた表現に深化しており、スクリーン内で燃えさかる炎は、黒い背景ではなくメンバーの姿とオーバーラップする映像演出に変わったことで、より強い苦悩、痛みと悲しみを伝えた。前半パートは曲の入れかえはないものの、あらゆる面で微調整が施され、Day1との違いがそこかしこに見受けられた。あいさつでは、「L’Arc-en-Cielです、誕生祭へようこそいらっしゃいました。ライヴビューイングのみなさんも楽しんでますか?」(hyde)と、この日のみ実施されたライヴビューイングの観客へも心を寄せ、温かく呼びかけた。
地鳴りのようなyukihiroのドラムに沸きたったあと、静寂のなか再開を待っていると、「ウェーブが見たいなあ」という文字がスクリーンに映しだされた。Day1にはなかった演出である。あちこちでウェーブが同時発生し、緩やかな一体感が場内に生まれた。するとDay1同様yukihiroが赤いバラの花束を手に登場、前日に比べると花がより露わになった包み方に変っている。ドラムセットの前に花束を置き、「真実と幻想と」をプレイし始めたのだが、ギターにトラブルが発生したようでkenの音が序盤で聴こえてこない。すぐに問題は解消し、演奏を止めずにポーカー フェイスでリカバリーすると、アンサンブルは美しい調和を取りもどしたのだが、hydeの表情は微かにかげり、目には涙が浮かんでいく。曲が終わると、前日同様、「L’Arc-en-Cielは34周年になります。いろんなことがありまして、僕の人生もいろんなことがありまして……」と切りだし、「いつ終わるかわからないですね、みなさんの人生も、僕の人生も。だから愛おしいと思います」と語ると、目が益々潤んでいき言葉を詰まらせてしまう。見守るtetsuyaの心配がにじむ表情がスクリーンに映しだされた。「さっきもギターが鳴ってなくて、正直、(演奏を)止めようと思いました。でも、それを……なんとか形にしてきたな、と思って、続けました。だからね、こういう景色の、一つひとつが愛おしいと思います。最後がなければダラダラと目標もなく、締切もなく曲も出来ないし、終わりがあるから一生懸命輝いて生きるんだと思います。そんなことを想いながら歌詞を書いた曲です。みなさんもやりたいことがあったらすぐに始めて、会いたい人にはすぐに会いにいってください」と切々と、バンド活動のこれまでを重ねあわせて語ると、「ALONE EN LA VIDA」を声を震わせながら歌いとどけた。<足跡一つ 残せなくても この命はまだ 旅の途中>というフレーズが象徴的だが、この曲に表れているhydeの、大スターであるにも関わらず諦念のにじむ人生観、その上で日々を愛おしむ死生観に胸を締めつけられる。曲が世に出たのは18年前のことだが、現在のhyde、34年という時を紡いできたL’Arc-en-Cielというバンドが今奏でることで、新たな物語を読みとることができるのも、不思議なことである。
「みんな来てくれてありがとう。幸せ者です」と感謝を述べたあと、「しかしなんやったんあれ?ギターのあれ」と原因を問うと、ピックがネックに挟まっていたのが原因だったそうで、kenからマイクを通さず地声で直々に説明を受けたhydeは崩れおちるようにして爆笑。kenは全方位に手を合わせて謝り、tetsuyaもyukihiroも笑顔を見せた。「オチがついたところで(笑)、クラッカーの説明に行きます」と続いて5万人によるいっせいクラッカー タイムへ。メンバーもクラッカーを持ち、オーケストラ伴奏の「Happy Birthday to You」に合わせてリズムを取ったり指揮するように動かしたりと、楽しんでいるムードが伝わってきた。「感謝の気持ちを込めて次の曲は歌いたいと思います」とhydeが告げ、ステンドグラスが天井に投影されると、天へ向かって伸びるような白い光の柱が多数出現。パイプオルガンの調べが鳴りはじめ、Day1の「叙情詩」に代わって披露したのは「雪の足跡」だった。<一つ一つが大切な記憶>という歌詞が、このセットリストとMCの流れのあとでは、より深く心に染みわたった。
泣いたり笑ったり、Day2は感情を激しく揺さぶられるライヴだったが、リラックスした表情に変化してきたhydeは「さっき、ウェーブがカオスだったよね」と笑った。花束から話題を広げて「好きな花は?」「もし飾るなら?」などhydeからメンバーに質問。詳細は割愛させていただくが、三者三様の回答に強烈な個性が出た。hydeがお風呂のエピソードを唐突に語りはじめ、「湯が足らんな~」が「YOU GOTTA RUN」の語呂合わせでダジャレだと判明するとメンバーもファンも笑った。「Link」に代わってDay2は「READY STEADY GO」を盛りこんで終盤を盛りあげると、いよいよ最後の曲を迎えた。「昨日今日と集結してくれるなんて、本当に光栄です」と改めて感謝を述べるhydeに合わせて、メンバーも随所で拍手し、うなずいていた。
「今日は映画館でもやってるからね。つくづく幸せ者だと思います。何回かグッときましたが、なんとか乗りこえて……あと1曲で終わろうとしています。本当にありがとう。誕生祭だけど、あなたこそ、生まれてくれてありがとうございます。生まれてくれて、集まってくれて、それだけで最高のプレゼントになりました」とあいさつ、最後の曲「あなた」を届けた。センターステージでイヤー モニターをはずし、ファンの合唱に耳を澄ますとき、hydeは聴くというより全身で声を浴び、吸いこもうとするかのように大きく両手を広げていた。曲が終わり、いったんステージを去ったかに見えたkenが花束を持って再登場、hydeに手わたす場面にファンが嬌声を上げた。Day1はtetsuyaで今日はken……かと思いきや、tetsuyaも再度姿を現して花束とレッサー パンダのリュックをプレゼント。これで3人全員からhydeは花束をもらったことになる。「昨日のはリアルだったけど、これは普段使いできるからいいかな?と思って」と、さっそくhydeにレッサー パンダリュックを背負わせるtetsuya。hydeはその愛らしい姿で花道を歩きまわり、ファンにあいさつ。センターに立ち何度もお辞儀をして、「最後の「あなた」は、みなさんに歌っていただいて。いつもはみなさんに“向かって”歌うんですけど、5万人の人に歌ってもらって、贅沢。今日は来てくれてありがとうございました」と、大拍手のなかステージを去った。
この“L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde 誕生祭-”の模様は、4月にWOWOWで独占放送&配信されることが決定。スクリーンに特報が映しだされると場内には大歓声が響いた。詳細はWOWOW公式サイトをご確認いただきたい。続いて、「See you in 35th L’Anniversary Year」という文字が虹色のロゴと共に映しだされ、悲鳴のような歓喜の声と大拍手に包まれて、約3時間の公演は終了した。通常のライヴではリーダーの tetsuyaが「まったね~!」と再会の約束をファンと交わすのが恒例だが、今回はこの誕生祭を取り仕切ったhydeだけがステージに残る形となっていた。「まったね~!」のあいさつは、オフィシャル キャラクターのルシエルちゃんが終演後にアナウンスで代弁した。2日間の流れのなかで浮かびあがった物語に強く心を打たれた、“誕生祭”という試みは成功に終わった。35thに向けたL’Arc-en-Cielの動きを見守っていきたい。
(取材 文/大前多恵)