アニメーション映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』(監督:中村健治/配給:ツインエンジン ギグリーボックス)公開記念舞台あいさつが3月15日に東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで開かれ薬売り役・神谷浩史、時田フキ役・日笠陽子、大友ボタン役・戸松遥、老中大友役・堀内賢雄、中村健治総監督、鈴木清崇監督が登壇した。
『モノノ怪』は、2006年に異例の高視聴率を記録した『怪~ayakashi~』の一編「化猫」から派生し、2007年に放送されたTVアニメシリーズ。謎の男・薬売りが、人の情念や怨念が取り憑いたモノノ怪が引き起こす怪異を鎮めるため、諸国を巡るという物語。「個を殺し集団に染まることを強いられる生き辛さ」というテーマで描いている。。2024年7月には映画『劇場版モノノ怪 唐傘』が公開されており、本作は全3章のうちの2章にあたる。
以下、公式レポート部分。
いよいよ公開を迎え、上映後の会場から大きな拍手が上がる中、それぞれが感無量の面持ちでステージに上がった。全三章構成の劇場版の第一章にあたる『劇場版モノノ怪 唐傘』に続いて、ミステリアスな主人公・薬売りを演じたのが神谷だ。『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』において進化・変化させたポイントに話が及ぶと、「(第一章と)地続きの話なので、ここを変えてやろうとは特に思っていません。薬売りは信念を持って大奥に侵入しているので、そこさえブレなければいいかなと思っていました」と大切にしているポイントを吐露。「第三章を見越して作っているので、最後に火鼠を祓う時に“すべての力を振り絞って祓う”ということはやらないでおこうと考えていました。その先にもまだなにかいるんだと思って、彼は動いている。第一章、第二章も、あまりにも力を入れすぎて、ここですべてを出し切ることはなるべく控えようと。引き算の芝居を心がけて、臨んでいました」と全三章としてのこだわりを口にしていた。
続けて、神谷は「周りがどれだけ動いていようが、薬売りだけは真ん中にいて、物語の真実を見つめているという役。ブレることはない」と薬売りについて分析。これには中村総監督も、「周りが変化しても、薬売りには変化してほしくない。周りの感情に引っ張られないように、凛としていなければいけない」役だと語り、神谷が制作陣の思いにしっかりと応えた演技をしてくれたと感謝を伝えていた。
天子の寵愛を一身に受ける町人出身の御中臈・フキを演じた日笠は、「天子様の前でもブチキレるくらい、激しい感情を出している役。大奥の中で、自分を道具にしているような情念を腹に抱えている役」だとキャラクターを紹介。戸松が演じる、名家出身で大奥最高職位の御年寄・ボタンとは対立する場面もある。日笠と一緒にアフレコができたと振り返った戸松は、「生でバチバチ。アフレコでも、のびのびとやらせていただいた」と日笠と笑顔を見せ合った。幕府の利権を取り仕切るボタンの父・老中大友役の堀内は、「台本を読んで、悪役だなと思った」とニヤリ。「この業界に40年ほどいますが、久々に大ピンチだと思った。極悪非道というわけではない。人間が権力を背負った時に、どう生きていくか。自分の手を汚さずに生きていこうとする悪って、どう演じればいいんだと思った」と試行錯誤したという。
堀内は「火鼠との対決のシーンでは、気絶するかと思った。アクションなどテンポも速いし、ハードなんですよ」と苦労もあった様子だが、シリーズの生みの親でもある中村総監督は、アフレコを見ていると「命が入った瞬間を見ている気がする」と役者陣の演技に惚れ惚れ。アフレコで役者の演技を耳にしてから、画やシーンを変えていくこともあると明かす。鈴木監督は「ボタンが父親に最後通告を突きつけるシーンは、戸松さんの演技では、僕の想定よりもかなりキッパリと父親を拒絶していた。こちらのほうが絶対にいいと思った。そこで画のほうを変えた」と具体的なシーンについて言及し、声優陣を驚かせていた。
鈴木監督は、オムニバスアニメ『怪~ayakashi~』の「化猫」から本シリーズに携わっているとのこと。『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』では監督を担い、「『怪~ayakashi~ 化猫』とテレビシリーズ『モノノ怪』では演出ではなく、撮影をやっていて。演出志望の若手でした。将来、こういう映像が作れたらいいなと憧れていたものに、17年を経て参加できるとは思っていなかった。感無量です」としみじみ。「多くの方に観てもらえる、すばらしい作品に携われて誇りに思います。全力を出させていただいた」と心を込めた。また中村総監督が、大奥の警備を司る坂下が「行けー!薬売りー!」と叫ぶシーンで鈴木監督の熱量と才能を実感したと話すと、神谷も「グッジョブ!」とサムズアップで鈴木監督の仕事ぶりを称える場面もあった。
続く第三章は『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』として、2026年春に全国公開されることが決定しており、第一章、第二章に引き続き大奥が舞台となる。第三章にも期待がかかる中、神谷は「エンタテインメントは、情報ではなく、体験だと思っています。この作品をご覧になって、人生が豊かになってくれたらうれしい」と願い、「劇場は、作品を楽しむだけの空間。貴重な体験を本作から受け取ってくれたら」とどっぷりと浸れる映画館での鑑賞をオススメ。
戸松も「スクリーンで観るのにぴったり。体感するような映画で、いろいろな登場人物の視点で観ていただけたらうれしい」と希望し、日笠は「今回は、親と子もテーマ。まやかしのように眠っている真実を見極めていただけたら、よりこの作品を楽しんでいただけるのかなと思っています」とメッセージを送った。そして堀内が「役者さんの演技がすごい。何回観ても泣けるし、すばらしいと思える。久々に震えるような作品に携わらせていただいた」と力を込める中、中村総監督は「みんな傷つきながら生きていくものだと思いますが、できるだけ自分を許してあげてほしいなという思いがあります。そういった面が伝わって、皆さんの癒しになったらと思っています。次もありますので、よろしくお願いします」と呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。最後には本作のシンボルのひとつである色鮮やかな炎のお面を持った観客と一緒にフォトセッション。イベントは、大盛況のうちに幕を閉じた。
※記事内画像は(C)ツインエンジン