俳優・北山宏光が11月7日より上演予定の舞台『醉いどれ天使』(演出:深作健太)を主演することが4月16日に発表となった。
黒澤明監督と俳優・三船敏郎が初めてタッグを組んだ同名映画を舞台化した作品。映画が公開された1948年4月から約半年後、ほぼ同じキャストとスタッフが集結し、舞台作品として上演され、2021年に再び舞台化された。今回は新たなスタッフ・キャストにより2025年舞台版『醉いどれ天使』として上演する。
1948年、2021年の舞台版それぞれの作品が持つ魅力を引き継ぎつつ、新たな視点で『醉いどれ天使』の世界を紡ぐ。映画でも印象的なダンスシーンをはじめ、ライブならではのフィジカルでエネルギッシュな表現を盛り込んだ。脚本は、2021年版に続き蓬莱竜太氏が。演出は深作健太氏が務める。
北山は三船が演じた闇市を支配する若いやくざ・松永役を演じる。松永に扮装したビジュアルも公開となり、もがき葛藤しながらも生きる松永の姿を彷彿とさせるような仕上がり。なお、松永と対峙する酒好きで毒舌な貧乏医師・真田らほかのキャストは後日発表を予定している。
今回の発表にあわせ黒澤プロダクション、演出の深作健太氏、北山からそれぞれコメントが寄せられた。以下、全文。
●黒澤プロダクション
このたび、映画『醉いどれ天使』が再び舞台として甦ることを、心より嬉しく思っております。
本作は、戦後の混沌とした時代において、黒澤明が人間の強さと弱さ、そして希望を描いた記念すべき作品であり、俳優・三船敏郎との最初の邂逅でもあります。
舞台という新たな表現の場において、現代の感性と技術をもってこの物語がどう描かれるのか、大きな期待を寄せております。
黒澤が遺したメッセージが、今を生きる人々の心に届くことを願っております。
●演出:深作健太氏
黒澤明監督の名作〈映画〉を〈演劇〉として再構築する。
重責に押し潰されそうな仕事をあえてお引き受けした最大の理由は、蓬莱竜太さんによる素晴らしい脚本でした。
〈新しい戦前〉ともいわれる現代。戦後80年の節目となる年に、焼跡の瓦礫を振り返る事は、とても意味のある事だと思えるのです。まるで野良犬のように、ひと握りの希望を求めて〈闇市〉をうろついた人間たち。その根底にある〈滅びの美学〉は、映画『仁義なき戦い』の中でも描かれた父・深作欣二の青春時代ともつながっています。
モノクロの舞台セットの中で、才能あふれる北山宏光さんと御一緒に、まったく新しい極彩色の松永像を創り出す事ができたら。そして深作組の盟友・西川裕一さんが舞台上で奏でる、生きた音風景にも御期待ください。
●北山宏光
時代を超えてこの令和に素晴らしい歴史ある作品に携われる事をとても光栄に思います。ストレート舞台は約6年ぶりになりますが、緊張と責任、喜びと期待で身の引き締まる想いです。混沌の時代を生き抜いた松永と、それを取り巻く人々の命のエネルギーをステージで演じ届けられる事にとても感謝しています。
観た後の帰り道で思わず感動のため息が出てしまう、そんな作品をキャスト一丸となって作り上げていきたいと思います。ぜひ会場に足を運んでください。
舞台『醉いどれ天使』東京公演は11月7日から11月23日まで明治座にて、名古屋公演は11月28日から11月30日まで御園座にて、大阪公演は12月5日から12月14日まで新歌舞伎座にて上演予定!
<あらすじ>
当たり前のように存在していたすべてが失われた、敗戦後の東京。
戦争で帰る場所を失った人々は、荒れ果てた都市に流れ着き、闇市でその日その日を生き延びていた。
ある夜、銃創の手当てを受けに、闇市の顔役・松永が真田の診療所を訪れる。
真田は闇市の界隈に住む人々を診る町医者で、酒に溺れ口は悪いが、心根は優しく一流の腕の持ち主。
顔色が悪く咳込む松永を、診療所に住み込みで働く美代も心配する。
一目見て肺病に侵されていると判断した真田は治療を勧めるが、松永は言うことを聞かずに診療所を飛び出し、闇市の様子を見回るのだった。
居酒屋で働く同郷の幼馴染のぎんは、そんな松永を心配しつつも、密かに想いを寄せるようになっていた。
しかし、着々と病魔が松永を蝕み、ダンサーの奈々江は彼から離れていく。
戦後の混乱の中、松永の采配によって落ち着きを保っていた闇市だったが、松永の兄貴分の岡田が出所し、闇の世界の力関係に変化が起きていくのであった…。