俳優・高良健吾(30)、多部未華子(29)、木村了(29)が21日、都内ホテルで中島貞夫監督(84)の最新作『多十郎殉愛記』(配給:東映 よしもとクリエイティブ・エージェンシー)製作発表会見を中島監督、中村伊知哉氏ととも開き、司会は清水圭が務めた。
幕末の京都が舞台。尊皇攘夷の夢を抱き長州を脱藩した剣の達人である下級武士・清川多十郎(高良)。しかし、現実は甘くなく長屋の用心棒をして日々の糧を得るのが精いっぱいな生活をしていた。そんなさなか新撰組に押され気味の見廻組から目をつけられ襲撃される多十郎。それは多十郎に好意を寄せる居酒屋「満つや」の雇われ女将・おとよ(多部)や国元から多十郎を慕ってやってきた数馬(木村)を巻き込む死闘となって広がっていく……という「ちゃんばらの継承」をメッセージにした時代劇に仕上がっている。
劇中の着物姿でキャストたちは登壇。巨匠である中島監督のもとでの撮影ということで、高良は、「現場で学んだことは監督からもそうでしたし、役者として以外のことも学ばせてもらいました。監督が教えてくれたこともたくさんありますけど、その監督の立ち姿で教えてくれたこともたくさんありました」と、多くの経験をしたという。
具体的には「殺陣は思いやり、それと信頼がないとできないということ。相手をケガさせちゃダメ、自分もケガしちゃダメというのは思いやり、信頼につながると思うんです。僕今回、斬る練習と斬られる練習をしたんですけど、斬られる方がとても難しいです。自分がうまく斬れたなというほとんどは斬られ役の方がうまかったというのを学びました。僕らは斬ることを学びますけど、斬られることも大事だなって感じました」という深い部分まで学び取ったそうだ。
その殺陣は3週間の準備期間で覚えていったそうで、中島監督は「ちゃんばらの斬る斬られるというのは間合いが難しいんです。この感覚を掴んでもらうために、3人のシーンを徹底的に鍛えて。3週間で十分かなと思って思っていましたけど、“高良ちゃん”を中心に若手たちも頑張ってくれて、なんとかきょうにこぎつけました」と、舞台裏を。
その“高良ちゃん”を聞いた高良は実はとても嬉しかったようで「ああ、懐かしいな監督の“高良ちゃん”って。人への向き合い方とか学ぶものがたくさんあります」と、ニッコリ。木村も「最初、役名で数馬、数馬と監督が呼んでいたんですけど、途中から木村ちゃんと言ってくれて。それで監督との距離が縮まって」と、ハートを掴まれたのだとか。
さらに、多部も所作の細かい演技指導を受けて時代劇を学ぶとともに、中島監督へ「1人1人が監督のために、監督が好きだから頑張るというのを感じる現場でした。毎日、監督のために気持ちが強くなって。私たちもすごく不思議な感覚で。現場にいられて幸せでした」といい、木村も「僕らが発したものを中島さんがキャッチしてつないでいってくれる。生きている現場だなと感じて、だからこっちも全力でやろうと」と、中島監督に惚れ込んでいたよう。
すると、清水が「それは恋かもしれませんよ」と、合いの手を入れる。その恋という単語は的確だったようで多部も「『これは一種の恋だよね』って高良くんと話していました(笑)」といい、高良も「“高良ちゃん”と言われるとキュンキュンっとするんです」と、うなずいた。
殺陣の思い出として、高良は中島監督の指導へ「けいこのときに杖が刀になって教えてくれるんです」と、みっちり教えてもらったという話や、中島監督から多部へ「受けの芝居がうまくて素直にできる役者さん。本当にちょっとした微妙な表現なんですけどうまいので、この人、天才かなと思うんです」と、才能を認め多部を恐縮させていた。
そして中島監督から「生きるか死ぬかの戦いをしているので、ふんどしが丸出しにしてやっています。そういう激しさ、格好いいというのはなんなんだろうというのをやってみました」と意気込み、高良も「今のこの時代の時代劇の展開というものに挑戦した時代劇ではなくて、いまこの時代に生きる役者たちが肉体の限界に挑戦した時代劇になっていると思います。そんな気持ちで中島組の時代劇をやってきました。一太刀、一太刀の重みや、なぜ斬ったか、なぜ斬らなかったかたというところまでこだわり抜いて作ったつもりです。時代劇が初めての方にも感覚的にすんなり入ってきて面白いなと思ってもらえると思いますし、細かいな時代劇と思ってもらえるようなものにもなっていると思います。自信があるので、ぜひ!」と、呼びかけていた。
映画『多十郎殉愛記』は2019年春公開予定!なお、今年10月11日に開幕する京都国際映画祭で初上映される。