『幽☆遊☆白書』新作アニメーション『TWO SHOTS』『のるか そるか』の最速上映会が10月6日、TOHOシネマズ新宿で開かれ浦飯幽助役・佐々木望、飛影役・檜山修之、阿部記之監督が登壇した。
本作は『レベルE』や『HUNTER×HUNTER』といった人気作を世に放っている漫画家・冨樫義博氏が1990年から94年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載していた作品が原作。TVアニメは92年10月から95年1月まで放送された。霊界探偵として死から蘇った主人公・浦飯幽助と、その仲間である桑原和真、蔵馬、飛影の前に立ちはだかる敵妖怪とのバトルなどをドラマチックに描いているアクションアドベンチャーだ。
イベント前、手渡されたチケットには“浦飯”と書かれたスタンプが押され、スタッフ陣のイベントにかける高い熱量をうかがわせる。まずは、『幽☆遊☆白書』の第1話、『TWO SHOTS』、『のるか そるか』の順番で上映。25年前と変わらないキャラクターたちが紡ぐ物語に、涙しながら楽しむ観客の姿も見られた。
25年前にオンタイムで観ていたという観客が半数ほどというなかTVアニメシリーズOP『微笑みの爆弾』をBGMに、拍手に迎えられて3人が登場。まずは、第1話の思い出をトークすることとなり佐々木は「まず、どう幽助に取っ掛かろうかと思って、夢中でやっていたのであまり記憶にないんです」と、全力で取り組んでいたそう。
さらに、佐々木は、「家でリアルタイムでオンエアを観て、自分のやった幽助が、すっごい子どもっぽいなって感じて。これでいいんだろうかってドキドキしたんです。最初の数回は探り探りでやっていたような感じですね。でも、作品が終わった後に音響監督の水本さんから『幽助、良かったよ。よくやったよ』と言われたんです。『最初はどうしようかと思ったんだよ。心配だったんだよ』ともおっしゃってて、それも幽助の成長過程だったのかなって」と、しみじみ。
檜山は「僕は幽助を轢く運転手役、後に蔵馬を演じる緒方恵美もちょい役で出演していました。作品に慣れるという意味もあってこういう形でキャスティングされていたんじゃないかと思います」と、懐かしんだ。
阿部監督はといえば若手の頃に『幽☆遊☆白書』を担当することとなり、自身と同い年くらいのスタッフが集まったといい「監督をやるというより、みんなで一緒に作っていこうよという感じでしたね」と、当時のことを回想。
続けて、『TWO SHOTS』『のるか そるか』の話題へ。20数年ぶりの『幽☆遊☆白書』の収録だったが佐々木はアフレコについて「先月TV版の最終話をやって、今月また会いましたというくらいな雰囲気で、粛々とやってて。抱き合ったりとかはなかったですね(笑)」と、時間の経過を感じさせないものだったのだとか。
それというのも「25年間外に出ていたのが役としてこのアフレコ現場で再び入り直したというより、ずっと出演者みなさんの中に途切れずにキャラクターが生きていて、それが収録で出てきたという感じなんだと思います」と佐々木がいえば、檜山も「どこかで『幽☆遊☆白書』がずっとやっていて、たまたま出番がなかったくらいな感じというか」と、深々とうなずいた。
逆に、25年という時間を感じたのは『TWO SHOTS』の収録だったという檜山は「僕と緒方以外は新しいキャストのみなさんで、その人たちを通じて、『幽☆遊☆白書』の新作をやっているんだって感じでした」とも。
ちなみに阿部監督によると『TWO SHOTS』はTV放送当時から映像化してほしいというファンの声があり、「できる機会がなくて積み残しになっていて、それをやってくれないかという話になっていました」といい『のるか そるか』は、原作でやっていない話で主要キャストが出てきてなおかつ必殺技も出せるということでチョイスしたそうだ。
イベント後半には、webで募集した、どのキャラクターの対戦が印象的だったかのベスト10を発表する『ベストマッチ』コーナーが開催。佐々木は結果を見ながら「幽助の戦う相手に先輩の声優さんが多かったので、キャリアが全然違うのでかなわないよなって思っていたんです。けれど役として全力を向ける相手が先輩方だというのは、腕が鳴るというかワクワクしましたし、先輩に対して絶対にセリフをとちれないぞとも思っていたので、いい意味でいつも張りつめた緊張感を持っていました」と、胸躍る経験だったよう。
また、当時のアフレコへ佐々木は「収録当日に台本をもらうので、スタジオに行くまで自分がどれくらいしゃべるのか、誰と戦うのか分からないんです。」と明かし、「今日の飛影は『フン』だけだとかね」と、檜山も笑みを浮かべる。台本を当日渡されることに対し、佐々木は「役者本人たちも次の展開が分からなくて、勝ちたいと思っても勝つか負けるのか分からなかったし、その戦いに誰が参入するのかも知らないまま臨めたのは、リアル感があってよかったと思います」と、メリットがあったとも語っていた。
ほかにも、原作にはいないコエンマ(cv.田中真弓)の秘書をしている鬼・ジョルジュ早乙女(cv.西村知道)なるキャラクターが生まれた秘話についても語られることがあり、檜山が「西村さんはもともと作品のナレーションを担当されていて、ジョルジュは兼役だったんです。最初は秘書の鬼という役名だったのですが、長くやっているうちに真弓さんが台本にもないのにジョルジュって呼び出して(笑)。下の名前はブースで声優同士で雑談しているときに早乙女でいいんじゃないかと盛り上がって決まった感じです(笑)」とノリで決まったようで、佐々木も「何週間後かの台本にジョルジュって書いてありました(笑)」と、当時の思い出に花を咲かせる。
しかし、裏話はそれだけにとどまらず、桑原和真役を演じた千葉繁はアドリブが多く、台本にアドリブ用の補足の台詞などを書き込んでいたそう。そのため、台本通りの演技を頼まれた際に、もとの台詞が分からなくなり、その回は台詞の少なかった檜山が台本を貸してあげたという思い出を披露。それを聞いて佐々木は「掛け合いをしているときに、『いまどこをやってるんですか、千葉さん!』ってかく乱されてしまうんですよ」と、懐かしげだった。
イベント終盤には「自身にとっての『幽☆遊☆白書』とは」という質問が。阿部監督は「初監督作品でこういう作品をやったので、いまもこういう作品のお話を頂くことが多くて、“友情・努力・勝利”が来るというのが宿命になったかなって。たまには女の子がいっぱい出てくる作品をやってみたいです(笑)」と、冗談めかしたり、檜山は「無名だった檜山修之という名前を世に知らしめてくれた作品に間違いないです。『幽☆遊☆白書』以前と、以降では演じる役柄をダイナミックに変えてくれた作品だと思います」と、声優人生の転機の1つになったとしみじみ。
そして佐々木は「幽助のオーディションを受けたのが声優になって6年経っていたんです。それまでは、大人しめなお坊ちゃんの役とか、人を諭すような感じで、できのいい少年が多かったんです。それが幽助に決まって、優等生でもお坊ちゃんでもなくて、少年ですけどワイルドな感じで。幽助に出会ったのは、その後の転機というか、広がりになり、キャリアの中でも大事なものを占めている作品です。2年以上にわたって、内から熱く燃えてセリフを言った作品だったので、思い入れもあります。その思い出も自分の財産というか、大切なものになりました」と、思いの丈を伝えていた。
最後にED楽曲がかかるなか、佐々木から「これは1つの区切りなので、ずっと愛して応援してくだされば嬉しいです。『のるか そるか』をみなさんと同じ会場で同じように座って観られたことが嬉しかったです。また、何かの機会で『幽☆遊☆白書』でお会いできる機会があれば嬉しいです」と、メッセージを残し、その場を後にしていた。
『幽☆遊☆白書』完全新作アニメーション『TWO SHOTS』『のるか そるか』は10月26日発売の『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX 最終巻 [魔界編] 』の映像特典にて!