俳優・池松壮亮(28)、蒼井優(33)、中村達也(53)、前田隆成(22)が24日、東京・渋谷のユーロスペースで映画『斬、』(監督:塚本晋也/配給:新日本映画社)初日舞台あいさつを塚本監督(56)とともに開いた。
塚本監督初の時代劇。幕末の激動期、浪人・杢之進(池松)やその隣人・ゆう(蒼井)は変革を感じつつも農村で平穏に暮らしていた。しかし、ある日、杢之進の剣の腕を見込んだ澤村(塚本)が農村に現れ、京都の動乱に参戦しようと持ちかけたことから、杢之進は農村から旅立ちを決める。しかし、その旅立ちが近づいたとき、無頼者(中村)たちが村に現れ……。時代の波に翻弄されながらも、人を斬ることに疑問をもつ杢之進と、彼にかかわる人々を通して、生と暴力の問題に迫った作品だ。
ついに初日を迎え、塚本監督は、「この映画は去年の春から始まりました。僕の企画としては短い期間で、一気に駆け抜けた感じです。その間に、音楽を担当されていた石川忠さんが亡くなったりして、ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門への出品もあり、いまこの瞬間にみなさんにお届けできて、思い出すといろんなことがあったなという感じです」と、万感の思いを。
池松へ本作の話が来たときのことへ、「プロットを新幹線で読んで小躍りしました。普段はそこまでいかないんですけど」と、特別に気持ちも高まったそうで、「本当に素晴らしかったんですよ、1本の刀のように洗練されていて、シンプルで、強度があって、絶対にこれをやらなければいけない。自分がやりたいと思いましたね」と、強く惹かれたという。
その惹きつけられた理由へ、「結構、伝えるのが難しいですけど」と前置きしつつ、「20代で俳優をやってきて、人より、日本映画というものに絞って、いいところも悪いところも見てきて、その日本映画をもって世界と対峙して、そこでいろいろ思うことというのは無力ながらも、何か自分がやりたいなとか、なんか力になれないかなとかなとか、なんか反撃できないかなとか、そういうこと全部含めて、20代を生きてきた祈りのようなものが、この映画の吐き出すエネルギーに自分の中でマッチしたんです」と、思ったままを口にする。
蒼井も「台本を読めば読むほど、ゆうを1人に捉えない方がいいなって感じたんです。シーンによって、違うキャラクターとして捉えて。いままでそういう映画をやってきてなかったので、塚本組ならそういう挑戦をしてもいいんじゃないかと思って。こんなに挑戦できる機会はないのでやってみようと思いました」と、挑戦した部分を語った。
池松と蒼井へは、お互いよく共演することからお互いの印象についてもトーク。池松は「よくお会いする人でしたけど、これだけ向き合ったのは初めてで、蒼井さんがいればみんなが映画に向かえるような空気を作ってくれる人なので助けてもらいました。ものすごく自由なせめぎあいをできたと思います」と、挑むような気持ちだったよう。
一方の蒼井は「池松くんと初めて会った時は12歳で本当にちっちゃくて(笑)。まったく12歳のときと印象は変わらないんです。もともと子供っぽくない子だったので、本当にいまのままちっちゃくなった感じで、あまり笑わない子どもでした(笑)」と、子供時代の話をしたため、池松は照れ笑い。それでも、蒼井は「本当に頼もしいなと思って、池松くんがいる日本映画界っていいなと思いました」と、頼りがいがあったよう。
そんな2人へ塚本監督は「すごい集中力で協力的な姿勢でやってくれて、2人が素晴らしかった」と、満足いくものになったよう。
ほかにも、トークでは塚本監督が熱い思いを語るあまり、ネタバレしかけてしまい苦笑いしつつ「衝撃的なラストを……」と、嘘か真か分からないようなコメントを寄せ笑いを誘っていた。
映画『斬、』は24日より公開中!