俳優・大泉洋(45)、高畑充希(27)、三浦春馬(28)が27日、東京・丸の内ピカデリーで映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(監督:前田哲/配給:松竹)公開前夜舞台あいさつを前田監督とともに開いた。
第35回大宅壮一ノンフィクション賞、第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した実話を実写映画化。難病の筋ジストロフィー症を患い体が不自由ながら、障がい者施設を自ら飛び出し、約20年間にわたる自立生活を続け、夢に向かって生き続けた主人公・鹿野靖明(大泉)と、そんな真っすぐな生き方をする彼と出会って変わっていく人々の人生を描いた物語となる。
大泉は「並々ならぬ気合で撮影をしまして、並々ならぬ気合で宣伝活動をしてまいりました。きのうの夜9時から生放送に出て、今朝も早朝から生番組に出て、1人で24時間TVをやっているような気持ちです」と、さっそく“大泉節”ともいえるお茶目なコメントを寄せつつ、「並々ならぬ気合で初日を迎えたいと思います」と、あすの初日への強い思いを。
その“並々ならぬ”というフレーズがほかの3人も気に入ったようで、前田監督が第一声から「並々ならぬ」を使えば高畑は「私も並々ならぬ気合でこの服を来てきました」といえば、三浦も、「心を込めて作った作品がたくさんの人に知られていくんだなっって思うと、本当に幸せな気持ちでいっぱいです。監督が『この作品は宝物になりました』というんですけど、僕も最初に試写会でみたときに本当にいい作品になったなって感じたんです。この作品が年末年始、日本中を前向きな気持ちにさせてくれるのではないかと思い、並々ならぬ期待を寄せて、そんな期待をせずにはいられない映画になりました」と、真摯さと遊び心を織り交ぜたコメントを寄せ沸かせた。
作品を通して感じたことへ、大泉は「こういう場所でいいことってあんまり言ったことがないんです。よく映画に出演すると『ご自身変わったことありますか』と言われるんですけど、映画撮ったくらいで変わらないんだよというのがあるんです。ですが、この映画にかんしてはずいぶん大きなところが変わったというか……。娘には『人に迷惑かけなければ何してもいいよ』と言っていたんですけど、鹿野さんは、『だって、できないんだからしょうがないじゃない』って言ってて。この作品を通して、助けてほしいことがあったら助けてあげてほしいなって。助けてあげられる人になってほしいなって思うようになりました。この映画で考え方が変わった珍しい映画だったなと思いますね」と、しみじみと語った。
イベント後半には、ヒットを願って鏡開きを行ったが、中にはバナナジュースが。鏡開き前は「中から甘い匂いがするんですよ」と、ちょっと距離をとろうとしていた大泉だったが、中身を1口飲むと「超うまい!」と、そのまま一気飲みしてしまうほどと、結果喜んでいた。
そして最後に大泉から、約5分半にもわたる心に迫るスピーチを切々とすることとなった。
「きょうは観て頂いたお客さまということで、本当にこの撮影は鹿野さんに導かれ続けた撮影だったと思います。鹿野さんの部屋は本当に鹿野さんが住んでいた部屋で撮影できたり、宿も鹿野さんが泊まった宿でした。12月26日が鹿野さんの誕生日で、28日が公開日で、本当になんかすごいなって思うんです。
いまご覧になってくださったみなさんに、鹿野さんがどうやって亡くなっていったのかなというのもあるんです。ボランティアの方と生きてきて、ボランティアの方と片時も離れなかった鹿野さんが、亡くなる日に倒れまして病院に運ばれたわけなんです。鹿野さんはその日、もうダメかもとなったところで蘇って息を吹き返すんです。鹿野さんは基本、ボランティアには帰っていいよとは何があっても言わない人で、ついててくれって。ボランティアにはいてほしいという人らしいんですけど、その日に限っては『帰っていいよ』と言ったらしいです。ボランティアのみなさんを帰して、プロのヘルパーの方だけを1人残して病院に残ったんですね。鹿野さんはそのとき、きょうは『よく寝れそうだ』って言って。それで、鹿野さんはめったに言わなかったんですけれど、ヘルパーの方に『ありがとう』と言って眠ったらしいんです。そのまま鹿野さんは亡くなってしまったんです。
病院以外で亡くなっていたらボランティアの方はすごく後悔したと思うんですよね。プロがついていないときに亡くなったとしたら。病院だったら、もしかしたら助けられたかもしれないとそのときついていたらずっと後悔したんじゃないかと思うんです。でも、病院でボランティアの方を帰した後で、ヘルパーさんだけを残して亡くなっていったんですよね。ボランティアの方がみんな、『自分たちが助けられなかった』という後悔をしないで済んだと思うんですよ。この世の去り方も、あれだけわがままを言った鹿野さんが、最後はボランティアの方にわがままを言わずに去っていったんだなって思うと、なんかあらためて私は、この人を愛せずにはいられないと。この人を演じられて本当に良かったなと。
生きていれば59歳だったということで、生きている間はお話できなかったですけど、話してみたかったなって気持ちでいっぱいです。
いよいよあした、初日を迎えるということで、鹿野さんがずっと言い続けていたわがままというのは、やっぱり、動けない人たちの代弁だったと思うんですよね。自分が動けないぶん助けてほしい。助ければ、普通の人と同じことができるということで、そこを我慢して生きるよりも、勇気を持って助けてほしいと、そういう願いで鹿野さんはいろいろわがままを言っていたんだと思います。
この映画を観て頂いて、なんか人に迷惑をかけないというのが1番の美徳とされるこの国の中で、それだけじゃないのかなもなという考えが少し、なんか伝わればいいなと思いますし、みなさんが考えるきっかけになればいいなと思いますし、最終的にこの映画が同じ障がいを持つみなさんのためになればいいなと願っています。
今回はメッセージ性の強い映画なのかなと思っております。だけど、気難しくなく、楽しく、爽やかな映画にできあがっていると思いますので、みなさんに伝えてもらえれば。どうぞみなさんそれぞれに、みなさんに伝えて頂いて多くの方に観てもらえれば嬉しいですし、鹿野さんにもたくさんの方に観てもらえたよと報告したいなと思っています。みなさん後少し、力を貸して頂ければと思います。きょうはありがとうございました」
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は28日より全国公開!
※スピーチ全文は後ほど追記します。