『交響曲ガールズ&パンツァー コンサート』(指揮:栗田博文)生配信ライブが19日、埼玉・さいたま市大宮ソニックシティで開催された。
戦車を使った武道『戦車道』が大和撫子のたしなみという世界で、女子高校生たちが『戦車道』を繰り広げるハートフルタンクストーリーとして、2012年から13年にかけTVアニメが放送され人気を博した“ガルパン”の略称で知られる『ガールズ&パンツァー』。TVアニメのその後を描いた『ガールズ&パンツァー 劇場版』も15年11月に公開され1年以上上映され続けるという異例の大ヒットを飛ばし、25億円を超える興行収入というアニメ映画史にも名前が残るものとなった。本作『最終章』は劇場版のさらにその後を全6話で描くもので、2017年12月に第1話、19年6月に第2話が上映され21年春には第3話が劇場公開予定となっている。
今回のイベントは、作品の音楽をクローズアップ。音楽を手掛ける浜口史郎氏自らが全六楽章からなる交響曲として再構築し、音楽で“ガルパン”の世界を再現した意欲作となっている。
ホールには、東京フィルGuPオーケストラのメンバーがそろい、栗田氏の一礼からコンサートがスタート。『交響曲ガールズ&パンツァー コンサート』は、音楽を通して『ガルパン』のストーリー性を感じることができるよう構成されており、さらにドラマチックなイメージを膨らませることができる演出として、スクリーンには西住みほ、そして大洗女子学園の軌跡を振り返る描き下ろしイラストによるイメージストーリーが映し出された。
第一楽章『戦車道行進曲』では、勇壮な前奏とともに全国大会優勝旗をかかげる『あんこうチーム』の姿が映し出され、演奏がスタート。TVシリーズ第1話本編に至る直前の黒森峰女学園を離れ、みほがひとり大洗女子学園に到着する姿、沙織と華との出会い、そして再び戦車道を選ばなければならなくなるまでのイメージストーリーが展開。楽曲は、初期のみほの沈んだ気持ちから始まり、仲間との出会いで少しずつ明るくなっていく心の変化とシンクロしているように、寂しげな曲調から明るい曲調へと変わって行く。
第二楽章『新しい生活と決意』は、タイトルどおり新しい仲間と再び戦車道をはじめるみほの心境の変化と新たな決意を表現。優花里、麻子との出会いと交流を経て、明るい笑顔を取り戻すみほの心の移り変わりを、日常シーンを彩る軽快な楽曲で見せて行く。そして、楽曲の後半では、新たな決意を感じさせる激しい曲調への変化と共に、聖グロリアーナ女学院との戦いまでが映し出される。
第三楽章『戦車道全国高校生大会』は、全国大会に向かう大洗女子学園の前向きな思いを体現した楽曲。イメージストーリーは、全国大会を前に大洗女子学園の各チームが、自分たちの乗り込む戦車を前に並んで撮った記念写真のようなイラストが写し出される。
そして、第四楽章『数々のピンチの果てに』は、戦闘中にかかる重厚な楽曲とともに、イメージストーリーは全国大会の激戦を振り返る形で、ライバルチームの隊長の姿、そして激闘を思い出させる名シーンで構成。優勝に至るまでの様子が、重厚さから勇壮さへと変化する曲調で表現され、組曲の中盤での大きな盛り上がりのポイントとなっている。
第五楽章『それぞれの想い』からは、『ガールズ&パンツァー 劇場版』で描かれた、再びの廃校の危機による悲しさ、そしてそれを救うべく集うライバル校たちの登場による心強さを表す楽曲が展開。本楽章のイメージストーリーは、ライバル校のメンバーたちが大洗女子学園の制服を着て、試合会場に向かうまでのシチュエーションが描かれており、落ち着いた曲調に合わせて劇場版の裏側を補完するようなファン必見のイラストになっている。
交響曲を締めくくる第六楽章『最後の戦い~フィナーレ』は、大学選抜チームと大洗女子学園とそれに協力するライバル校たちの激闘を振り返る12分にわたる長尺の楽曲。危機と逆転が入れ替わる目まぐるしい戦いを表現するように、楽曲も多数の盛り上がりが用意された構成となっており、イメージストーリーと重ねることで、劇場版の後半で展開された手に汗握る戦いを音楽で追体験できる。
全六楽章で演奏されていくなか、約60枚という大ボリュームの描き下ろしイラストで展開するイメージストーリーが重なることで、“ガルパン”の世界により深く浸れる仕上がりを見せていた。
そして、交響曲の演奏が終わったところで、これまでのコンサートと同様に楽しそうに指揮をしていた栗田氏から、画面の向こうでコンサートを楽しんでいるファンのみなさんにごあいさつ。「最初に聴いていただいた6つの楽章からなる『交響曲ガールズ&パンツァー』は、作曲家・浜口史郎さんがこれまで『ガールズ&パンツァー』のために書き下ろした曲を自ら交響曲に再構成したものです。TV、映画を通じてみなさんが知り尽くしている名曲の数々がストーリー性のある配置になっていて、お楽しみいただけたのではないかと思っています」と、コメントを寄せる。
さらに栗田氏は「これまでのオーケストラ・コンサートで何度も申し上げてきましたが、今回もよろしければ、画面の前でご唱和ください。 ガルパンはいいぞ!オーケストラはいいぞ!今、視聴してくださっているみんなもいいぞ!」と画面の前のファンとともに声を合わせる一幕も。
栗田氏のあいさつに続いて演奏されたのは『ガールズ&パンツァーのための狂詩曲』。ライバル校たちのイメージを重ねて劇中で演奏された、世界の名曲たちをメドレー形式で再編成したもので、アップテンポな演奏アレンジも加わることで、オーケストラの演奏ながらもノリノリな気分になれる楽しい楽曲で、後半への橋渡し的な味わいとなった。
そして、ここから後半戦へ突入。華やかなドレスをまとった、アーティスト・佐咲紗花がステージに登場。「みなさん、画面越しに楽しんでいただけているでしょうか? 今日は、お知らせがあった通り、急きょ出演見合わせとなったChouChoさんの代わりに、TVシリーズの主題歌、そして劇場版の主題歌を私が歌わせていただきます。画面の向こうに届くように彼女の思いを乗せて歌わせていただきます。ぜひ、みなさんの心に届きますように」と、コンサート用におちついた曲調にアレンジされたTVシリーズの主題歌『DreamRiser』と劇場版主題歌『piece of youth』の2曲を、オーケストラ演奏をバックにしっとりと歌い上げることに。
ひと呼吸置き、続いて自身の楽曲である『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話~第3話主題歌の『Grand symphony』を披露。佐咲は「先日発表になった通り、いよいよ『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話が2021年春に劇場上映されることが決定しました。『Grand symphony』を劇場で聞けるのは一旦最後になってしまいますが、ぜひ、来年の春を楽しみにしていただければと思います」と、語り、オーケストラ演奏ということもあり、アップテンポな曲調はそのままながら、よりシンフォニックにアレンジされた曲を熱唱した。
ここで、佐咲と栗田氏によるトークへ。
佐咲:栗田さんとはガルパンオーケストラをもう何度目なのかというほど指揮されていらっしゃいますが、いつも栗田さんが嬉しそうに、して楽しそうに指揮をしてくださる背中を私も嬉しいなと思いながら見ています。
栗田:おかげさまで、ガルパンじいさんとして楽しんでおります(笑)。
佐咲:今回は、いろんな視点からカメラが演奏している風景を切り取ってくれているので、いつもの客席から見るひとつの視点とは違う形で楽しんでいただけているのではないかと思います。
栗田:今度はみなさんにはぜひこの会場に安心して来ていただいて、ますます楽しんでいただける日が来ることを心から切望しております!
そして、いよいよラストの楽曲に。TVシリーズのエンディングテーマ『Enter Enter MISSION!』を佐咲が歌い上げ、『交響曲コンサート』は終了となった。
本コンサートの模様は2020年9月27日23時59分までアーカイブ配信(申込受付ページURL:https://www.b-ch.com/contents/feat_girls-und-panzer-concert/)を楽しむことができる。さらに、Blu-ray Disc化され2021年3月26日より発売もされる。
※記事内写真は(c)GIRLS und PANZER Finale Projekt