俳優・仲野太賀(27)、吉岡里帆(27)、寛一郎(24)が11日、東京・新宿ピカデリーで映画『泣く子はいねぇが』(監督:佐藤快磨/配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ)舞台あいさつ付き特別上映会を佐藤監督(31)とともに開いた。
新進気鋭の佐藤監督の劇場デビュー作となり、第68回サン・セバスティアン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞したオリジナル作品。秋田県・男鹿半島の伝統文化『男鹿のナマハゲ』から、“父親としての責任”、“人としての道徳”というテーマを描いている。親になることからも、大人になることからも逃げてしまった主人公・たすく(仲野)が、過去の過ちと向き合い、不器用ながらも青年から大人へ成長する姿を描いている。吉岡はたすくの妻・ことねを、たすくを支える親友・志波を寛一郎が演じている。
仲野は、登壇するなり会場を見回し、観客が1席空けながら大入りとなったことへ「劇場にこんなに人が観に来てくださっていることに感激しています。4、5年前から企画があって、ロケ地の男鹿に向かって、丁寧に丁寧に作りました。コロナの自粛期間に入る前に撮影が終わって」と、奇跡的なタイミングがあったことを回想する。佐藤監督も緊張しながらも「男鹿を訪ねたときにこのような光景は想像していませんでした」と、感激していた。
吉岡は撮影に入るまでの心情として「本作に呼ばれたのが、昨年の寒い時期で、監督に熱いお手紙を頂いて作品への切実な思いを感じまして、入る前から緊張感と、自分の役割をまっとうしないといけないなと思っていました」と緊張していたというが、始まってからは「監督が繊細に繊細に、信頼できるキャストのみなさまと積み重ねてきたという芯の強い作品だと感じました」と、結束を感じたそう。
役作りの話となると、キャスト3人とも本作の出演の話になった際に脚本の素晴らしさを挙げる。仲野は、「人間模様とか人間に対する愛おしさとか、温かさとともにユーモアもある。人間を描ける作家さんって稀有だなと思いましたし、僕が演じる父親になる覚悟のないまま父親になってしまったこと、なまはげというものによっていろんなものが共存しているすごく奇跡的なシーンだなと感じたんです。こんな強烈なラストシーンをとにかく演じてみたいと」と、突き動かされたといい、「この脚本だったら僕が等身大の姿で発揮できる最大のものだなと思いました。出来上がったものを観たときに正直自信作だなと思いましたし、これは佐藤監督のおかげですけど、なんだろうな……とても大切な作品になりました」と、静かながらも揺るぎない自信を見せた。
そんななか寛一郎は、「変な話じゃないですよ!(笑)」と前置きしつつ、ロケ地に温泉があるそうで、「次のシーンどうしようかという話を一緒に温泉に入ってするんですよ。裸のままセリフ合わせをするんですよ。2人で監督はこういうのを求めていると思うからやろうと話をするんですけど、次の日に監督にソローっとした感じでちゃぶ台士返しされるんです(苦笑)。そうされながら友情関係とか信頼関係を築いていきました」と、“裸のつきあい”で役のより深い把握や仲野との絆を築いたエピソードを話すと、仲野もうんうんとうなずきながら「毎晩、毎晩、きょうは最優秀“男鹿デミー賞”獲ったなって言って、次の日にまたボロボロになって帰ってくる(笑)」と、楽しげに振り返っていた。
イベント後半にはキャスト3人の幼少期の写真を披露するコーナーもあり盛り上がりつつ、仲野から「僕にとってこの作品は自分の俳優人生をこれから続けていくなかで、本当にこの作品と出会えたことである種、転機というか、自分のなかで覚悟が決まった作品になりました。キャスト・スタッフの方々と出会えたこともそうですし、撮影現場の日々があまりにも幸福と奇跡がある作品だったんです。出来上がったものを観たときに、力強いものが出来たんだんと喜びでいっぱいになりました。これからこの作品が巣立っていくというのがすごく感慨深いです。できれば、この作品を観てくださった方、1人1にと対話してお話を聞きたいくらい。そんな映画になっています」と、メッセージを寄せていた。
映画『泣く子はいねぇが』は20日より全国公開予定!