映画『ミッドナイトスワン』(監督:内田英治/配給:キノフィルムズ)の舞台あいさつが29日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで開かれ『新しい地図』で俳優・草なぎ剛、内田監督、音楽を担当した渋谷慶一郎氏が登壇した。
本作は、草なぎ演じる新宿の街で生きるトランスジェンダーの凪沙(なぎさ)と、親から愛を注がれることなくネグレクトされ生きてきた中学2年生の少女・一果(いちか)の間に芽生える“切なくも美しい現代の愛の形”を描く“疑似母子”のオリジナルラブストーリー作品となっている。舞台あいさつが開催されるのは、公開直後の9月27日に行った舞台あいさつ以来、2度目。
全国137館で同時生中継されるなか、劇中音楽に乗せて3人が登壇し、拍手が飛び交った。草なぎはグレーチェックの上下で合わせて登場し「公開10周目を迎えてみなさまの前で、ステージに立てて嬉しく思っています。(作品を)受け取ってくれる方、1人1人の感想も頂いています。みなさまのおかげで本当にいい映画になったなと感動しています」と、胸いっぱいといった様子。
さらに、草なぎは、「公開して10週目ですが、芸能生活していて10週目で舞台あいさつするの初めてですよ……いやあったかな(苦笑)。草なぎ剛代表作と(SNSの)ハッシュタグつきで言ったのが本当にそうなって」と、感無量。
そんな草なぎだが、実は公開前には内田監督を励ましていたそうで、「監督が最初に『後ろ盾がない……』と、言っていたんですが、『大丈夫ですよ、監督、大丈夫ですよ』と言っていたんです。ねっ、大丈夫でしょ?」と、内田監督に笑みを向けつつ、「監督は『原作は難しい』『オリジナルだしマイノリティー的要素が多いから難しいかもしれない』と言っていたのですが、むしろそれがいいんですよ。最初に脚本を呼んだときに、感じたことのないものを感じて、なんで泣いているのか分からなかったのですが、それが良くて。それを映像として、演技として伝えたかったんだなと思います」と、本作への思いを。
一方、渋谷氏は、本作サウンドトラックの裏話をはじめ、「サウンドトラックって全然売れなくて、『200枚くらいしか売れないですよ』と言われたんです。だから、1000枚売れたらお祝いしようと言っていたんです。1日20枚くらい売れればいいかなと思っていたのですが、発売日にSNSで発売するといったら、一気に売れ続けて、1000枚が1日で売れちゃって(笑)。スタッフは1人しかいないので、僕も梱包手伝いました」と、嬉しい悲鳴をあげていたのだとか。
しかし、とにかく手が足りなかったようで渋谷氏は、「僕が梱包してるんじゃないか疑惑が出ていたのですが、それを明かして苦労しているようにとらわれるのが嫌だったので、その声を無視して。追加オーダーした人が届かなくて、『詐欺なんですか!?』というような声も届いて(苦笑)。Amazonに送る分とかがなくなっちゃんです」と、発売当時のことを振り返る。
渋谷氏は本作の音楽を1週間で作り上げたといい、「メインテーマはするすると出てきて、あとは部分で全体は覚えてないです」と、相当に集中していたというのだが「楽譜も1枚も書いていないんです。頭で覚えているだけで。そうしたら、動画サイトで楽譜を見て弾いている人がいて(笑)。最近は音楽を聴いて楽譜を起こして販売しているところもあるので、僕も楽譜を見たら買おうと思って」と、まさかの製作者が楽譜を買う気持ちがあることも話して笑いを誘っていた。
本作は2度、3度と鑑賞する“追いスワン”現象も起こっているそうだが、草なぎも「私も追いスワンしますよ。みなさん2回目のほうが感動して、2回目より3回目、僕も観る度に違うところで感動しているんです。内容はわかってるのに、なんで泣くのかなと思って。新しい感動が湧き出てくるというか」と、2度目、3度目でも新鮮に楽しめることもアピール。
その後、クリスマスの話題となり、草なぎは今年の予定を聞かれ最初は「嫌です」と話していたが、これに司会が「20代なら、いろいろとありそうですけど、そうですよね。こんな質問をしてすみません」と、言い出す。すると草なぎは「バカにしないで!僕、まだ、アイドルだよ」と、グイグイと主張しつつ、「『ミッドナイトスワン』のスタッフの方と少人数で密にならない、厚着してグランピングで鍋とか」とプランを。続けて、来年の抱負を問われ、「来年もミッドナイトスワンを広げていこうという気持ちがあって……」と、前回のイベントから恒例(?)のSNSのハッシュタグ“#ミッドナイトスワン大ヒット”をつけるよう呼びかけていた。
終盤の記念撮影中に草なぎは「『ばるぼら』も公開中!」と、『新しい地図』稲垣吾郎と二階堂ふみがW主演している作品のこともちゃっかりPR。そして草なぎから「全国の中継でご覧になっている方もありがとうございます。僕もいろんな想いがあって、10週目を迎えています。年齢問わず訴えかけるものがあるなと思っていて、人ひとりの大事な気持ちというのが、凪沙と一果を通して伝えられているからなのではと思っています。生きていくのは自由だよというのと、偏見とか差別みたいなものがなくなればなという気持ちが込められています。みなさんの人生において、いいきっかけになる作品になれば僕らは嬉しいです。世界に羽ばたいていってほしいい作品でもありますし、遠くまで行かなくてもみなさんに身近に感じてもらえる作品になると、嬉しいです。今後とも『ミッドナイトスワン』をよろしくお願いします」と、メッセージを寄せていた。
映画『ミッドナイトスワン』は公開中!
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※記事内画像は(c)2020 Midnight Swan Film Partners