ヴィジュアル系ロックバンド『SID(シド)』が14日、無観客配信ライブ<SID LIVE 2021 ~結成記念日配信ライブ~>を開催した。
2004年1月14日にシドが現在の4人で活動を本格始動して、17回目の結成記念日を迎えたこの日。本当だったら同じ空間に集ってみんなで賑やかに盛大にお祝いしたいところだが、コロナ禍でそれが叶わないのが現状。しかし、それでも大切な記念日をファンと共に過ごしたいという想いから配信で開催された、シド史上初の結成記念日ライブ。初の試みとなった配信ライブは生とも異なる臨場感やライブ感、配信ならではのサウンドや演出で魅せ、4人の熱い想いがしっかりファンに届いた貴重で大切な一夜となった。
開演時間となり、薄暗い照明に照らされて映ったのはライブハウスのフロアまで広く使った無観客ならではのステージセット。SEが鳴り、ゆうや(Dr)、明希(Ba)、Shinji(Gt)、そしてマオ(Vo)と順に登場するメンバー。昨年の1月以来、シドとしてライブが出来ていなかった4人がステージに並ぶ。画面の前で見守るファンの中には、この光景だけで感極まってしまった人も多いはず。一瞬の静寂から、静かに力強く始まった1曲目は「涙雨」。一音一音、丁寧に気持ちを込めて鳴らされるサウンド、真っ直ぐな目でカメラを見据えて歌い出すマオの切なく美しいヴォーカル。激しく優しく感情を乗せた演奏とともに、伸びやかで感傷的な歌声が胸に刺さる。続いて、イントロのストリングス・サウンドにShinjiと明希がカメラに指差し合図し、軽快な歌と演奏で空気を一変したのは「アリバイ」。演奏することの楽しさや喜びを抑えきれない4人から笑顔が溢れる。後半パートでマオが両耳に手を当ててファンの合唱を誘うと、無観客の会場からファンの歌声が聴こえた気がした。
「初めてのシドの配信ライブに集まってくれてありがとうございます。みんなもこの会場にいるつもりで楽しんでくれたらと思います」とマオが短いMCを挟み、始まった曲は結成記念日のこの日にぴったりの「ANNIVERSARY」。ファンへのありがとうの気持ちを届けたこの曲に続き、アグレッシブな歌と演奏で魅せたのは「V.I.P」。ゆうやと明希が目で合図しながら鳴らす重厚なビートにShinjiがザクザクとリフを刻み、マオのたくましい歌声が響く。配信ながらビシバシ伝わるライブ感と普段は観ることの出来ない角度や距離感からの臨場感溢れる映像が気持ちを高揚させる。「前半から盛り上がってきましたね」とマオが満足そうに語ったMCでは、メンバーそれぞれが自己紹介。「久しぶりだし、元気な姿を見せたいと思ってます」とShinji。「みなさんのいる場所はおウチだけど、心は間違いなくライブハウスにいる」と明希。「おウチだと声が出せるので、思う存分叫んでください」とゆうやが言葉を送って家で見守るファンとの距離を縮めると、「みんなに会いたい気持ちをそのままにしておくのはイヤなので、曲にしました」というマオの曲紹介から、新曲「声色」を披露。画面の前の一人ひとりに届ける優しく温かい歌声、溢れる感情を表現したギターソロ。今の真正直な気持ちと感情を乗せた歌と演奏が胸に突き刺さる。
紫の照明が包む中でドラマチックに聴かせた「紫陽花」、メランコリックなギターと艶っぽい歌声が歌謡テイストを醸し出した「土曜日の女」と続き、「シドって本当に曲の幅が広いよね」と語るマオ。「初めてデモで聴いた時、ぶっ飛んだもんな」と、作曲者の明希と「土曜日の女」の思い出話をすると「まさか17年後、無観客ライブでやるとは思いもしなかったね」と感慨深げに語る。続いて「この曲をキッカケに俺たちのバンド人生は大きく変わったんじゃないか?と思います」と始まった曲は、08年リリースのメジャーデビュー曲「モノクロのキス」。積み重ねたキャリアとスキルで表現力や説得力を増した、現在の歌と演奏で魅せる13年目のキスが聴く者の胸を締め付ける。懐かしい曲たちに続いて披露されたのは、新曲「siren」。悲痛でエモーショナルな心の叫びがリアルに響くこの曲は、今だから表現できるシドの最新系サウンド。新旧楽曲が入り交じることで結成17年にしてなお曲の幅を広げ、進化変化し続けているシドの現在もよく見える。
演奏後、「siren」も収録された、昨年12月リリースのシングル「ほうき星」について和気あいあいと語った4人。「こっからいよいよ後半戦、行けるかい?」と始まったライブ後半は、メンバー紹介でファンの名前を呼ぶ声や歓声を待つと「聴こえる、お前らの声が聴こえるぞ!」とマオが笑顔を見せ、そのまま「循環」に突入。回っているファンの姿が見えているかのように指を回し微笑むマオ、会場を駆け回って自ら循環するShinjiと、ステージを広く使った自由すぎるパフォーマンスは配信ならでは。エネルギッシュかつ正確なゆうやのドラムプレイが光った「プロポーズ」、「さぁお前ら、拳上げる準備出来てるか?」と煽る明希が力強い掛け声とベースプレイで魅せた「dummy」と続き、激しさと熱量を増していく4人のステージは配信であることを忘れるほどの迫力とライブ感。「ラスト行くぞ!」のマオの叫びから始まった本編ラストは「Dear Tokyo」。「Dear お前ら!」と曲紹介して始まったこの曲は、<きっと大丈夫>と歌う歌詞にファンへのエールや熱いメッセージが込められていたと同時に、手拍子や合唱のパートが会えないファンとの一体感を感じさせた。「みんなに会いたいよ!」と叫ぶマオの声がファンにもどかしさを感じさせながら、幸福感に満ちたエンディングとなった。
アンコールは星空のように瞬くミラーボールの光の下、事前に募集したファンの歌声と共に熱唱した「その未来へ」でスタート。遠く離れていても曲を通じて繋がる心。ファンの美しすぎる歌声と歌に込めた気持ちを両手を広げて受け止めたマオは「今日のみんなの歌声はすごく心に響きました。乗り越えようね、今を一緒に。そして必ず会いましょう」と、感謝と約束の言葉を送った。会いたい気持ちとまた会える日への希望を込めた新曲「ほうき星」は、勇ましいバンドサウンドと願うように祈るように歌う前向きな言葉たちが胸に響く。この日最後となったMCでは「辛いこと、悲しいことがあった時、元気になれる場所が俺たちのライブ会場だったわけで、やり場のない気持ちがあると思う。時には逃げる場所も必要で、その逃げる場所がシドだったらいいなと思って配信ライブをやりました」と、ライブを開催した意味と意義を語ったマオ。「何かあったら、俺たちのところに帰ってきてください」と最後に届けた曲は「live」。たっぷり気持ちを込めた歌と演奏、壮大なサウンドで想いを届けたこの曲。<ここでまた逢おう>の言葉は力強く希望に溢れていた。
<SID LIVE 2021 ~結成記念日配信ライブ~>はニコニコ生放送、ローチケ LIVE STREAMING、イープラス Streaming+にて、1月19日(火) 23:59までアーカイブを視聴可能。通常チケットの販売期間はプラットフォームによって異なっており、ニコニコ生放送の視聴チケットは1月18日(月) 23:59までの販売となっている。詳細はシド オフィシャルサイトをチェックしよう。また、1月15日(金) 0:00より、ライブ登場SE「residence」の配信リリースがスタートした。ぜひ手にとって、配信ライブの余韻に浸ってほしい。
5月15日、16日には山梨・河口湖ステラシアターにて、昨年延期となってしまった<SID LIVE 2020 -Star Forest->の振替公演も決定しているシド。初の無観客配信ライブもこんな機会が無ければ観ることの出来なかった貴重なライブとなったが、今を乗り越えた先にある生のライブで再び会える日が本当に楽しみだ。ゼロを楽しもう、また始めよう。
文:フジジュン
写真:今元 秀明
SID LIVE 2021 ~結成記念日配信ライブ~
1月14日(木)
01. 涙雨
02. アリバイ
03. ANNIVERSARY
04. V.I.P
05. 声色
06. 紫陽花
07. 土曜日の女
08. モノクロのキス
09. siren
10. 循環
11. プロポーズ
12. dummy
13. Dear Tokyo
En01. その未来へ
En02. ほうき星
En03. Live