女優・大竹しのぶ(63)、『関ジャニ∞』大倉忠義(35)、杉野遥亮(25)、池田成志(58)が今年6月より上演がスタートするCOCOON PRODUCTION 2021 DISCOVER WORLD THEATRE vol.10『夜への長い旅路』(演出:フィリップ・ブリーン)に出演することが18日、発表となった。
ノーベル文学賞受賞、ピュリッツァー賞4度受賞で“アメリカ近代劇の父”と称される劇作家ユージン・オニール。そんなオニール氏の遺作となった作品で、オニール自身の青春時代における、凄惨な家族の姿を描いた自伝劇といわれる本作は、彼の死後、妻によって発表され、4度目のピュリッツァー賞を獲得となった作品だ。悲劇的な家族の歴史を、人間の真実を突く普遍のドラマに昇華させ、自らの人生に“赦し”を与えるメッセージは、日本のみならず、世界中で繰り返し上演されている。
今回、キャストが発表。モルヒネ中毒に冒されて常に精神が不安定な母メアリー役で大竹が主演。アルコールに溺れ、父親の脛をかじって放蕩を繰り返す長男ジェイミーに大倉、結核を患っている次男エドマンドに杉野、アイルランド系移民で、金銭に対して異常な執着を持つ俳優の父ジェイムズ・タイロンに池田。オニール家をほぼ忠実に再現したとされるタイロン家の、夏のある一日の物語。オニール自身が投影された次男エドマンドの視点のみならず、母、兄、父、家族4人の個々の内面が深く掘り下げられ、それぞれの抱える哀切や怒り、後悔や絶望、そして家族間の愛憎、確執が、巧みな会話の応酬で表出された家庭劇となっている。
本公演へキャスト陣からコメントが寄せられた。
●大竹しのぶ
ユージン・オニールの作品は『喪服の似合うエレクトラ』(04年上演)以来、2度目の挑戦です。今回も精神を病みそうな作品で(笑)、“頬に手を触れる”とか“肩にかける”といった繊細なト書きの1つ1つに、孤独と愛があふれていると感じます。演出のフィリップがその意味を全部わかるように説明してくれると思うので、とても寂しいお話だけど、すごく幸せな舞台になると思います。フィリップのけいこ場は、ほかの方へのノートを聞くだけでも鳥肌が立つくらい、本当に発見が多くて楽しいです。どんな道を通ってもいつかは到達点に辿り着ける、そう信じてみんなで旅をしているような感覚。今回も役者4人とフィリップで、濃密な旅に出かけることになるだろうと楽しみにしています。
家族のスリリングな会話劇から、今、その場で起こっている現実、愛や人生を目の当たりにしていただきたい。
何か大きなものをズシッと受け止めた……、そんな感触を与えられる舞台を目指したいと思います。
●大倉忠義
以前から、大竹しのぶさんに「一緒に舞台をやりたいね」とお声をかけていただいていたんです。今回やっと実現する!と思って、詳しい話を聞く前に「やります!」と即答し、後になって作品の内容や演出の方についての情報を知って、これはものすごいハードルだぞ……と若干ひるみました(笑)。でも映像にはなかなかない、演劇だからこそ出来る内容だと思うし、この作品にどっぷり浸かることで、自身のレベルアップにつなげていかなくてはと。しのぶさんと同じ舞台に立ちたい人は山ほどいると思うので、こんな素敵な場所に誘っていただけて、本当にありがたいなと思います。
今、多くの方がつらい状況にいると思います。芝居のテーマは重いかもしれないけれど、始まりから終わりまで、つらい現実をちょっとでも忘れて没入できる……、そんな体験をしていただけたら嬉しいですね。みなさんに豊かな時間を提供できるよう、頑張りたいと思います。
●杉野遥亮
いつかは舞台をやりたいと思っていたので、今回の機会に感謝し、すごくワクワクしています。同世代の俳優仲間に初舞台をシアターコクーンで…と話したら「え~!」、しかも大竹しのぶさんと……「ええ~!」さらに演出の方がイギリス人で…「えええ~!」というもっともな反応が(笑)。とにかくコトが大きすぎて、一周回って逆にフラットな気持ちになってきました。何も出来ないんだから怖がることもない、頑張るしかない。わからないことは「わからない」と言って、迷わずに聞いていこうと思っています。
作品は難しいけれど、このコロナ禍で僕も家族について見つめ直すところがありました。自分たちが楽しくいられる空間って何だろう、自分らしく生きるには……と考えた時にこのお話を読んで、けっしてかけ離れた物語じゃない、共感できるものは確かにあるなと感じて。今はとにかく、嘘や後悔なく一生懸命生きることをこの作品への準備と考えて、日々を過ごしていこうと思っています。
●池田成志
大竹しのぶさんと舞台を…と声をかけていただき、嬉しさと同時に怖いなという気持ちがありました。本当に豹変してしまう、スゴい役者さんですからね。で、どんな作品?と思ったら、これまた非常に深い、それぞれが
鬱屈を抱える家族のお話で。コロナ禍の今、こんな重い話を~と思うかもしれませんが、僕は、演劇は多様であるべきだと思っています。僕自身、昨年末はとっても下品な明るい芝居をしていたけれど(笑)、今度は180度違う舞台に参加できる。その幸せを噛み締めて挑みたいですね。
演出のフィリップさんについては、彼の作品に2度出演している三浦春馬君とお仕事でご一緒した時に「どんな人?」と聞いたことがあって。「メチャいい人ですよ!」ってすごく信頼していましたね。きっと舞台に対して誠実な人だろうからとても楽しみです。6月に社会がどうなっているかはわからないけれど、僕らはしっかり準備をしてお客様をお待ちします。劇場にいるあいだだけはコロナのことは忘れていただきたい。そんな時間をお届けできればと思っています。
COCOON PRODUCTION 2021 DISCOVER WORLD THEATRE vol.10『夜への長い旅路』東京公演は2021年6月にBunkamuraシアターコクーンにて、京都公演は2021年7月に京都劇場にて上演予定!
■STORY
1912年、夏のある日の朝。俳優ジェイムズ・タイロンの別荘の居間で、家族が朝食後の団欒を楽しんでいる。しかしその会話から徐々に明らかになるのは、彼らの実像、家族を覆う暗い陰である。父ジェイムズは異常な吝嗇家であり、母メアリーは麻薬の常習者、長男ジェイミーは酒と女にだらしない放蕩息子で、次男エドマンドは肺を病んでいる。メアリーは昔、幼い息子ユージンを亡くしたことで罪の意識にさいなまれていた。その後にエドマンドを出産し、産後の病気をきっかけにモルヒネ中毒に陥ってしまったのだ。家族の確執が次第にあぶり出されていく中、再びモルヒネに手を出したメアリーが幻覚に襲われ始めて……。