加藤シゲアキ3年半ぶりの舞台は“忖度”なオファーも「いち役者としてチャレンジさせてほしい」！木村拓哉と同じ役受けたのは「嫉妬してしまう」【会見やりとりロングめ・前編】

　アイドルグループ『NEWS』の加藤シゲアキ（33）が3日、東京・新国立劇場中劇場で主演舞台『モダンボーイズ』（演出：一色隆司）ゲネプロ前にメディア向けに会見を開いた。

　本作は1994年に木村拓哉が主演し、都政施行50周年記念公演として上演された、幻の名作ともいわれる青春群像劇となる。舞台は日中戦争直前、浅草のレビュー小屋。プロレタリア革命を志す学生で、ひょんなことから浅草エフリィという芸名でレビューの人気者となった矢萩奏が、小屋の座付き作家であった菊谷栄と出会ったことにより、生きる居場所を見つけ、自分にしかできない革命を見出していく物語。加藤は木村も演じた矢萩役を演じており、加藤にとって2017年に東京グローブ座にて上演された『グリーンマイル』以来、約3年半ぶりの舞台出演にもなる。

　会見は加藤、俳優・山崎樹範（47）、武田玲奈（23）、脚本を担当した横内謙介氏、演出を担当した一色氏とともに開催。以下、やりとり。

　司会：まずは1人ずつごあいさつをお願いします。
　横内氏：PARCO劇場さんから、古い戯曲みたいなものを上演する機会を作りたいと伺いまして、その中にこの『モダンボーイズ』を選んで頂いていたんです。27年前に書いた台本です。良いブラッシュアップの機会を頂いたなというふうに考えています。27年前も面白かったんですが、27年の間にいろいろな時の流れもあって、いろんな人たちとも出会いましたし、私自身もいろいろ経験してきて、そもそも戯曲としても一度手直ししたい部分もあって、その機会を頂いて、実現できたことを嬉しく思います。

　それとともに、直しのほとんどが大改訂になっちゃったんですけど、途中で加藤シゲアキさんがご出演されるという情報が入ってきて、だったらそれに合わせようと思ったんですけど、われわれスタッフ一同忖度した部分があったんです。『加藤さんがやられるんだったら菊谷栄の役の方がいいんじゃない』って話があったんです。菊谷は作家の役ですし。そういう忖度をしたんです。それで、どちらでも行けるようにとプランを出したら、加藤さんが『いや、木村拓哉さんのやられた役を継承したい。あわよくば、木村超えを狙いたい』と……。
　加藤：そんなことないです！（そんな気持ちを）抱いたこともないから！（苦笑）
　横内氏：そこでスペシャルな台本を作りたいなと。ブラッシュアップと、加藤さんと本当に僕は出ているんだと。とても大人なので、今回は大人のドラマにしたいなと。戯曲のブラッシュアップとともに、再改定しました。一色さんもち密に演出してくださって、役者さんもこんなに一字一句にこだわってくれるんだと作者冥利に尽きる舞台になったのではないかなと思います。

　一色氏：いろいろあったなかでやろうとなったときに、今の時期に足を運んでくださろうとするお客さま、元気をお届けできるような作品にしたいと思い、キャスト・スタッフ一丸となって取り組んでまいりました。加藤さんは、歌手もやり、作家もやり小説家もやり、そして今回役者としてやってくださっていますけど、率直なところけいこをやっていて、1日28時間あればあと2つか3つくらいできるんじゃないかというくらいのエネルギー・バイタリティを持っている人です。そのエネルギーすべてを、横内さんがクリエイトした舞台に注力してくれたときに、舞台上でマジカルなことが起こるということを確信しております。それをみなさんにお届けできることを本当に楽しみにしております。

　あと、武田さんとか山崎さん、本当にキャストのみんながこの骨太な台本をきちんと読み解いて、観てくださる方たちに思いを届けようと、日夜試行錯誤しながら、のたうちまわりながらまいりました。当初やっていくなかで、熱いものをみなさんにお届けできるのではないかなと確信しております。そのあたりも見どころになっているのでよろしくお願いします。

　加藤：この物語は昭和の初期、演劇を上演することがままならなない時代でそこをどうやってブレイクスルーして、作品を作っていくかという裏側を描いています。いまのこの時代とシンクロするところがあるのではないかと思います。試行錯誤しながらどうやって舞台を上演するかというのは、演劇界だけではなく、いまのすべてのエンターテインメント界が乗り越えないといけなくて、そこをこの舞台を通して、過去から倣うというか、ヒントがあるんじゃないかという想いを頂いてぜひということで、この作品に参加させて頂くことを決めたわけです。とにかく、本番の無事に幕が開くことに安心しておりますし、このままできたらと思います。みんな、健康に気をつけながら頑張っていきたいと思います。

　山崎：あの個人的なことですが、吉川英治文学新人賞（を加藤が上梓した小説『オルタネート』で）受賞、ありがとうございます！
　加藤：いや、違いますよ！
　一色氏：そういう舞台だと思われるのでやめてください（笑）
　山崎：きょうはこれさえ言えればいいと思ってきたので（笑）

　武田：私がいまここに立っていられるのは、スタッフのみなさんやキャストのみなさんが私のお芝居を観てアドバイスしてくれて、おけいこしてくれて、みなさんに助けて頂いたおかげだと思います。いまは自信を持って楽しんで幕を上げられればいいなと思います。

　報道：27年前に木村拓哉さんがやっていらっしゃった役と同じ役ですが、それを聞いたときは？
　加藤：そこは、あんまり言わないでほしいなと思いました（苦笑）。
　山崎：それは言われるやろ（笑）
　加藤：（笑）。最初はいわゆる企画書というか、こういうお話ですと頂いたときに、こうしたお話を聞きまして、正直なところ恐れ多いと思って。ですが、同時に同じ役に挑戦してみたいというのはあって、僕がジャニーズ事務所に入るきっかけになった先輩の1人でもありますし、本当にずっと憧れていた先輩で、こういった形で同じ役を演じることは正直なかなかないのではないかなと。誰かが、僕じゃない人がそれを演じていたら嫉妬してしまうのではないかと思ったので、ぜひともやらせてくださいと。先程、横内さんがおっしゃってくれましたが、作家というところで菊谷役の方がいいのではないかというお話があったんです。でもそこは僕としては、作家としてではなく、いち役者としてチャレンジさせてほしいというお願いをさせて頂きました。

　報道：木村さんには演じることは伝えられましたか？
　加藤：はい、伝えました。公の情報解禁でのタイミングでお耳にするのも失礼だと思いまして、1月ぐらいに映画のリハーサルをされていたところに、少しお時間を頂きまして、あいさつをさせて頂きました。それで、（木村は）知らないと思っていたので、役を演じさせてもらいますと言うつもりで行ったんですけど、僕を見た瞬間に『やるんでしょ？「モダンボーイズ」』と言われまして、僕の中ではギチギチですごく緊張していたんです。ギチギチに台本を作って、お仕事の合間ですし、簡潔にお伝えして帰ろうと思ったら、言われてしまって、僕の台本は総崩れしてしまって（苦笑）。“あっ、はい、はい……”という感じでアワアワしてしまって（苦笑）。どうやら、人から経由して聞いたらしくて、そういうことがあって、すごく温かく応援してくださって。『頑張ってくれ』、『体には気をつけてくれ』とお言葉を頂きました。

　報道：木村さんから具体的なアドバイスは？
　加藤：本当にそういったことはなく『頑張ってくれ』と。おそらくですけど、気にするなということだと思います。

　報道：やるからには木村さんを超える？
　加藤：いやいや！いやでも、本当に……。
　山崎：行っちゃう？（笑）
　加藤：（苦笑）。でも、映像資料として当時の上演されていたものを観たんですけど、21歳のころに演じられてて、とても本当に素晴らしくて、もし映像資料を先に観ていたら断っていたかもしれないほど完成されていました。正直に言って、超えるってことは不可能だなと思いました。なので、別の新しい人物を演じるつもりでこの役に臨まないと、この舞台は成功しないと。けいこ場では、一度先輩というのは頭の片隅の置かせて頂いて、自分なりに取り組ませて頂きました。
　一色氏：（小声で）でも、超えてますよ。
　山崎：いまのはよくないですよ！
　加藤：本当に緊張するんですから！

　報道：木村さんは観に来てくれますか？
　加藤：それは知らないですけど、いらっしゃる場合は言わずにいらっしゃってほしいなと思います（苦笑）

　【後編（加藤シゲアキ主演舞台けいこで「みんな人見知りで、これは大丈夫かなと思ったんです」から挽回できた理由とは？『本屋大賞』発表近づいても「舞台のことだけに集中したい」）へ】

　※会見ショート版記事
　・加藤シゲアキ木村拓哉にあいさつ行くも「僕の台本は総崩れ」「アワアワしてしまって」！小説「オルタネート」の吉川英治文学新人賞受賞もイジられる

　■あらすじ
　日中戦争前夜、浅草のレビュー小屋。座付き作家の菊谷栄に、同郷（青森）の友人・工藤がプロレタリア革命を志す同じく青森出身の学生・矢萩奏を紹介する。
　ある日、矢萩が警察に追われて劇場に逃げ込んでくる。菊谷と劇場の仲間たちは、矢萩に道化の扮装をさせて、警察から匿う。尋問を受け、菊谷はコーラスボーイだとごまかすが疑う特高刑事。仕方なく歌を披露する矢萩。故郷で合唱部だった矢萩の「My Blue Heaven」の歌声はすばらしかった。
　矢萩は劇場に身を隠すことになる。そこで思想活動のために封印していた音楽の才能が開花し、やがて矢萩は浅草エフリィの芸名でレビューの人気者となっていく。しかし不景気と戦争が切迫する時代。不要不急と言われる浮かれたレビューの世界に生きることに悩み揺れながら、そんな時代に劇場の扉を開き、歌い、踊り続けることの意味を、矢萩は菊谷や仲間たちとともに噛みしめてゆく。