『舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~』(演出:毛利亘宏)東京公演が1日、開幕。これにあわせて前日31日に行われた公式ゲネプロレポートおよび開幕コメントが公開となった。以下レポート全文。
舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~が開幕した。原作は、「バッカーノ!」でも知られる成田良悟の同名小説。
2010年にテレビアニメ化。その後も、2015 年に「デュラララ!!×2 承」、「デュラララ!!×2 転」、2016 年に「デュラララ!!×2 結」が放送されるなど人気を博したヒットシリーズがついに舞台で甦る。
平凡な日常の陰にひそんだ人間たちの歪んだ心理をサスペンスフルに描いた本作が、舞台でどのように表現されたか。その模様をレポートする。
まず心躍らされるのが、アニメで観た世界がそのまま目の前に広がっていることだ。馴染み深いあの台詞も、様々な登場人物の視点から切り取られていくストーリー展開も、アニメのまま。それもそのはず。脚本を手がけるのは、アニメシリーズの脚本も担当した鵺的の高木登。「デュラララ!!」の世界観をよく知る高木の手によって、2次元の世界が3次元へと見事に立体化されている。
さらに、ピアノとリコーダーの音色が印象的な「憧れの非日常」などアニメのサントラもそのまま使用されることで、一気に観客を「デュラララ!!」の世界へ。可動式の舞台装置には、池袋の景色が鮮やかに映し出される。デニーズに東急ハンズ。見覚えのあるサンシャイン60通りの風景が、「デュラララ!!」に夢中になったひとときを思い出させてくれる。
「デュラララ!!」の魅力である、個性豊かなキャラクターたちとの“再会”にも思わず胸が熱くなる。最初に登場するのが、岸谷新羅(安西慎太郎)。白衣姿のいでたちだけでなく、喋り方までアニメを彷彿とさせるもので、第一声を聞いた瞬間、興奮で肌が粟立ってしまった。
続いて現れるのが、「デュラララ!!」の核を担うセルティ・ストゥルルソン(佐野夏未)。猫耳のヘルメットに黒のライダースーツというインパクトあるビジュアルはもちろん健在。そして、ファンにとって注目のポイントであろうバイクシーンと首なしライダーという設定をどう表現するのかも舞台らしいアイデアでクリアしている。
黒装束をまとった3人のアンサンブルが力を合わせ、池袋の街を疾走する様子を完全再現。この黒装束がセルティの影をイメージさせるものになっているため、まるで違和感を与えない。そして、首がないというシーンに関しては、舞台本編を観てのお楽しみ。CV はアニメと同じ沢城みゆき。ちょっと低めの淡々としたセルティの声が流れるだけで感極まってしまうファンも多いことだろう。
平和島静雄(伊万里有)の自販機投げや、サイモン・ブレジネフ(磯貝龍乎)の絶妙なイントネーションもしっかり再現するなど、随所にアニメへのリスペクトが。その感動の最初のピークと言えるのが、オープニングだ。
軽快なドラムのビートと共に流れるのは、THEATRE BROOKの「裏切りの夕焼け」。炭酸が吹き出す門田京平(君沢ユウキ)、渡草三郎(影山達也)などタイトルバックを思い起こさせる演出に加え、間奏のタイミングで登場人物たちの会話が差し込まれるという演出もそのままで、ついガッツポーズをするように拳を握りしめてまった。
物語本編は、竜ヶ峰帝人(橋本祥平)を軸に、首なしライダーと失踪事件の謎の追いかける展開に。そこに折原臨也(猪野広樹)が暗躍することで、物語全体に漂う不穏さを深めていく。橋本のちょっとおどおどとした口調が、非日常に強い憧れを抱くものの平凡でおとなしい帝人のキャラクターにぴったり。猪野は、徐々に暴かれていく外道ぶりを嬉々と演じ、臨也の異常性を際立てていた。
物語の中で描かれるのは、強すぎる愛。大切な人を守りたい。それぞれのキャラクターが抱える想いは同じ。けれど、その方向性を誤った瞬間、愛は人を傷つけるものともなる。暴走した愛が巻き起こした事件が、どのような結末を迎えるのか。生身の人間たちが演じる「デュラララ!!」の世界をぜひ体感してほしい。
舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~は8月7日(土)まで日本青年館ホールにて上演。その後、愛知公演は8月13日(金)から15日(日)まで名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホールにて、大阪公演
は8月20日(金)から22日(日)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールにて上演される。
取材・文:横川良明
■開幕に寄せての出演者コメント
○竜ヶ峰帝人役:橋本祥平
本来なら昨年に公演していたはずの作品でしたが、悔しくも本番直前に中止となってしまいました。どこにもぶつける事が出来ないこの熱を鎮火せず、この日の為にずっと心にしまっておきました。そしてようやく引き出す時。昨年からの想いと合わせて膨れ上がったこの熱、そして愛を全力でみなさまにぶつけたいと思います。
演劇という非日常を楽しみにしてくださってる方々の為にも、非日常を求めて日常を頑張ってる方々の為にも、明日からの日常を頑張れるような作品を届けたいです。
○紀田正臣役:杉江大志
紀田正臣役の杉江大志です。
舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~、いよいよ、そしてやっと開幕です。素晴らしい作品に出来上がったと思います。
去年中止になって悔しい思いをした分より洗練された舞台に仕上がりました。
みなさんの期待を大いに越える非日常を体感しに劇場までいらしてください!
お待ちしております!
○園原杏里役:福島雪菜
コロナ禍の影響もあり、応援してくださっている方や舞台を楽しみにしてくださっていた皆様に、お会いできずもどかしい思いをしている中で、昨年のリベンジとして新キャストの方々も加わり改めて挑戦できること、すごく嬉しく思います。早くみなさまにお会いしたいです。
○セルティ・ストゥルルソン役:佐野夏未
まずは無事に幕が上がること、本当に嬉しく思います。セルティとして舞台に立てる日々をかみしめて最後まで気を抜かず全員で走り抜けたいです!みなさまにお会いできるのを楽しみにしております!
○岸谷新羅役:安西慎太郎
まずは、無事に幕を開けることができ、ホッとしています。
そして、最後まで誰一人欠けることなく走り切れることを願い、自分自身緊張感を持って過ごしていきたいです。
兎にも角にも、「デュラララ!!」の魅力を舞台を通して伝えることが使命だと思っております。
「岸谷新羅」懸命に演じさせて頂きます。
宜しくお願い致します。
○平和島静雄役:伊万里有
いよいよ、8月1日に開幕するデュラステ。やっとここまできました。待ちに待った開幕です。この日が来るのを本当に待ち侘びました。
場当たりをしてるとき、照明、映像、音響、衣装が組み合わさって本当に池袋の非日常がそこにあると実感しました。
ぜひ楽しみにしていて下さい。
○折原臨也役:猪野広樹
去年、上演するはずだったこの舞台。だからこそ初日を迎える喜びは2倍あります。
僕は今作からの参加ですが、みんなの思いを共有し、最後まで1公演もかけることなく駆け抜けられるよう願い、日々この「日常」を楽しみます!
なお、本作は2022年2月23日にBlu-ray&DVDとして発売することも決定しており、本編 DISC に加え、特典映像 DISC も付属。特典映像 DISC には、メイキングやバックステージ映像を収録。完全生産限定版は、三方背ケース・デジジャケットに特製ブックレットがついた豪華仕様!さらに、特典 DVDがもう1枚ついた、ANIPLEX+・アニメイト限定セットも発売される。
※記事内写真は(c)成田良悟/KADOKAWA/舞台「デュラララ!!」製作委員会