俳優・堤真一、森田剛、西野七瀬、大東駿介、山崎一、伊藤蘭らが今年5月10日から上演予定の「COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12『みんな我が子』-All My Sons-」(演出:リンゼイ・ポズナー)に出演する。
ピューリッツァー賞・トニー賞を受賞した『セールスマンの死』、『るつぼ』などで知られるアメリカの劇作家アーサー・ミラーの代表作の1つとされる戯曲『みんな我が子』。1947年にアメリカ・ブロードウェイで初演となり、その後各国で上演され48年と87年には映画化もされている。第二次世界大戦後の一見円満そうなとある家族の葛藤と崩壊が描かれ、幸せをつかむためのとある選択が、人生を狂わせ、悲劇的なラストに至る物語となっている。
家族のためにただひたすらに生きる父ジョー・ケラー役を堤、戦争から戻らない次男ラリーの無事を信じ家族を愛する母ケイト役に伊藤、長男クリス役に2年ぶり舞台出演となる森田、ラリーの婚約者アン役に西野、アンの兄ジョージ役に大東、ケリー家の隣人ドクター・ジム役に山崎がキャスティングされた。
本作へ向けキャスト・スタッフからコメントが寄せられた。
○演出:リンゼイ・ポズナー
アーサー・ミラーは主に家族の物語を描いた偉大な劇作家です。『みんな我が子』は75年前の作品ですが、そのテーマは時代を超えて今の私たちに切実に響いてきます。
父と息子、夫と妻といった家族内での役割や関係性から、社会における責任までが描かれているのです。ある個人の犯した罪が、ひいては社会全体の腐敗や罪をもあぶり出し、人間の不完全さや脆さを浮き彫りにします。お客様も自分のことを振り返り、考えることができる作品になるのではないかと思います。
『十二人の怒れる男』はリモートでの演出でしたが、非常に楽しく仕事ができました。今度は俳優の皆さんと直接話をしながら、同じ空間で創作のプロセスを共にできることをとても楽しみにしています。
○堤真一(つつみ・しんいち)
アーサー・ミラーなら面白いに違いない、そう思って戯曲を読みましたが、こんなに難しい作品とは想像していませんでした。第二次大戦後のアメリカを舞台とした物語で、この父親の行為は、1947年の初演当時と現代とでは見方がまったく違って来るだろうと思います。「家族のためには仕方がなかった」という意見もあったであろう昔に比べ、今では絶対に許されない。それでも、この父親を単なる悪として表わすのはどうなのか。一昨年の舞台『十二人の怒れる男』をリモートで演出されたリンゼイ・ポズナーさんと、今回こそは稽古場で直に作品作りがしたいです
し、存分に話し合って稽古を進めていきたいですね。とてもヘビーな挑戦になるだろうと思います。
許されないはずのことが、まかり通っている。それは今の社会にも感じることだし、自身の生き方と照らし合わせてドキッとする人もいるかもしれません。見えているのに見ようとしないものが世の中にはたくさんある、そう気づける作品に出来たらいいなと思っています。
○森田剛
役者人生において大きく変わるタイミングに、この作品に出会えたことを嬉しく思っています。戯曲を読んで、家族だから許せることと許せないことがあり、近くにいるから見えるものと見えないものがある……、そういったことに強く惹かれました。親子や兄弟だからこその複雑な心情を、けいこ場で演出の方や共演の方々とじっくり話し合い、作品を立ち上げていければと思っています。文化や宗教などの違いはありますが、そこは意識することなく、同じ人間として、とても身近に感じられる話ではないかなと思います。
自分が思うこと、感じていることをはっきりと提示するのは苦手なほうではありますが、けいこではそこをちゃんとやっていきたいですね。そうしてみなさんの話を聞き、演出を受けながら、崩したり、構築したりを楽しんでやっていきたい。最終的に、この家の息子に見えたらいいなと、それだけですね。楽しみに待っていていただけたらと思います。
○西野七瀬
まだ一度しか舞台経験がない中で、お話をいただいた時は、私で大丈夫なのかな!?と、かなり驚きました。機会があればまたぜひ舞台をやりたいとは思っていたのですが、こんなにすごいお話をいただけるとは……。それでも、この作品をやることで絶対に多くを得られると思いましたし、私に、と言ってくださったことがとても嬉しくて、挑戦したいなと思いました。
共演の皆さんも初めてご一緒させていただく方が多く、舞台で確かな実績を積まれて来られた方々の中に、私が入ってどうなるんだろう!?と想像のつかないことばかりですが、けいこ場の空気にも出来るだけ早く慣れたいですね。演出のポズナーさんはとても優しい方だとお聞きしているので、少しホッとしています(笑)。初の会話劇で、海外戯曲ももちろん初めて。たくさんの“初めて”を楽しみながらやれるよう、頑張りたいと思います。
○大東駿介
堤真一さんは、いつかステージをご一緒できたら……とずっと夢見ていた大先輩です。森田剛さんは以前、『金閣寺』という舞台でご一緒して、多くを教わりました。森田さんのとてつもない集中力に痺れ、その背中に作品の核のような情景が見えた。あの体験は僕にとってすごく大切で、今の自分の基準になっていると感じますね。憧れのお二人とシアターコクーンの舞台に立てる、こんな夢のようなことが!と興奮しています。
僕は海外の戯曲も外国人の演出家も、とくにイメージを持ってやることはないですが、よりスムーズに進めるために、自分の人となりや考えは早めに伝えておきたいなと思っています。今回、いい意味でしんどい芝居になるんじゃないかなと(笑)。僕、芝居の疲労感が大好きなんですよ。精神を集中させていくその時間が好きで、カンパニーのみなさんとそれを共有出来るのが本当に楽しみですね。足を引っ張らないように頑張ります!
○山崎一(やまざき・はじめ)
新年を迎えてすぐ、僕がプロデュースする劇壇ガルバでアーサー・ミラーの『ザ・プライス』をやるんです。ここ数年、日本でもミラー作品の上演が本当に多くなりましたよね。世界的にも『セールスマンの死』などはしょっちゅう上演されていて、僕が思うに、ミラーは今の資本主義社会の崩壊を、70年以上も前に予兆した作家だからじゃないかと。この『みんな我が子』は、人間は間違いを犯すけれど、その後にどういう行動をとるかが大切なんだな…と感じた作品です。この素晴らしいメンバーでやったら、きっと面白くなるだろうなと。そして『十二人の怒れる男』ではリモート演出だったリンゼイ・ポズナーさんが、今回は直に来てどういう演出をされるか。すごくワクワクしていますね。
アーサー・ミラーの作品は、見終わった後に人生を感じさせ、さまざまなことを考えさせてくれます。その豊かな時間をぜひ劇場で体感していただきたいですね。
○伊藤蘭(いとう・らん)
時代背景も、文化も違う物語の中で生きるのはとても難しく乗り越えなければならない課題も多いですが、それだけやりがいのある舞台になると確信しています。今まで色々な母親役を演じてきましたが、今回はより等身大で人間味のある母親のように思います。ただ一見普通に見える母でも抱えている問題はかなり根深いのかなと。堤真一さんとは初共演です。いつも若々しいイメージの堤さんが父親役と聞いてとても新鮮に感じました。その役作りを間近で見られるのも楽しみです。
海外の演出家とのお仕事は過去にイギリス人のエイドリアン・ノーブルさんとご一緒した機会がありました。その時に学んだこと、日々のけいこで得たことは今でも私の指針となる事も多いので、今回もリンゼイさんとの貴重な経験を糧にできるよう心してけいこに臨みたいと思います。
「COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12『みんな我が子』-All My Sons-」東京公演は5月10日から30日まで全25回でBunkamura シアターコクーンにて、大阪公演は6月3日から8日まで森ノ宮ピロティホールにて上演予定!
■あらすじ
第二次世界大戦後の特需景気に沸くアメリカ合衆国の地方都市の夏のある日。
ジョー・ケラー(堤真一)は、飛行機の部品工場を経営し、戦争特需によって財を成し、家族で幸せそうに暮らしていた。
しかし、戦争で行方不明となり、いまだ帰還しない次男ラリーの残像が、妻ケイト(伊藤蘭)をはじめ家族に暗い影を落としていた。
嵐の次のある晴れた朝。ジョーと隣人のフランクとドクター・ジム(山崎一)が談笑している。
しかし、前夜の強風により、ラリーの記念樹が倒れてしまい、ケイトは不吉な予感に錯乱気味であった。
そこに一家の幼馴染のアン・ディーヴァー(西野七瀬)が数年ぶりにケラー家を訪ねてくる。
長男クリス(森田剛)は、還らぬラリーの婚約者であるアンに密かに恋焦がれ、互いに弟と婚約者を失ったもの同士、躊躇いながらも次第に心を通わせていく。
そこへアンの兄ジョージ(大東駿介)の突然の来訪―――。
実のところケラー家とディーヴァー家には深い確執があり、ケイトがラリーの死を信じない本当の理由の根本もそこにあったのだ。
家族の知らない、知られたくない真実が語られ始める―――。
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