作家・朝井リョウ氏の小説『正欲』が2023年に映画化され、『新しい地図』稲垣吾郎、“ガッキー”の愛称で親しまれる俳優・新垣結衣が出演することが12日、発表となった。
第22回小説すばる新人賞を小説『桐島、部活やめるってよ』で受賞し、2013年には『何者』で直木賞も受賞している朝井氏。本作は2021年3月に発売されるやいなやその内容が波紋を呼び、第34回柴田錬三郎賞を受賞した話題作として知られている。
家庭環境、性的指向、容姿――さまざまに異なった“選べない”背景を持つ人たちを同じ地平で描写しながら、人が生きていくための推進力になるのは何なのかというテーマを炙り出していくストーリー。メガホンをとるのは『あゝ、荒野』(2017)、『前科者』(2022)を手掛けた岸善幸監督、脚本は港岳彦氏が担当する。
稲垣は横浜検察庁に務める検察官であり、自分の力でマイホームを持ち、妻と子を養う寺井啓喜(てらい・ひろき)役を。新垣は島
のショッピングモールで契約社員として働く桐生夏月(きりゅう・なつき)役を演じる。小学校不登校の息子が世間から断絶されてしまう可能性を恐れる寺井と、自ら世間との断絶を望む夏月が、いつ、どこで、どのように交わっていくのか……。生きることと死ぬことが目の前に並んでいるとき、生きることを選ぶきっかけになり得るものをひとつでも多
く見つけ出したい――映画に込める想いをどう昇華させていくのかが見どころになっている。
なお作品は現在撮影中となっており、10月下旬にクランクアップを予定している。
本作へ向け、稲垣、新垣、岸監督、原作の朝井氏からコメントが寄せられた。
○稲垣吾郎
脚本を読み終えた時、この作品に関われる事を嬉しく思いました。難しい題材にチャレンジする、監督、スタッフのみなさまとともに丁寧に演じていきたいと思います。
○新垣結衣
原作を読んで、何かを問われたような気持ちになりました。それは、「何が正しいか」とかそういう単純なものではないような、でも実はとてもシンプルなことのような気もしました。考え続ける事、想像し続ける事をいつも以上に大切にしながら、制作に臨めたらと思っています。岸監督とは初めてご一緒しますが、初顔合わせから親身に役についての相談などを聞いてくださり、とても心強く、感謝しています。撮影では、自分なりに、夏月達が生きる世界を必死に生きたいと思います。
○監督・岸善幸
原作の衝撃と感動がずっと消えません。朝井さんの“視点”が生み出した登場人物たち、その感情をどう表現するべきか、模索が続いています。稲垣吾郎さん、新垣結衣さんをはじめとするキャストのみなさんとの対話を重ねて、少しずつ輪郭が浮かび上がってきたところです。人と人のつながりを描こうと思います。大切なのに、難しい、つながり。世界から「普通ではない」と片づけられてしまう人たちの、歪みのないつながりを描こうと思います。
○原作・朝井リョウ
言葉にするとは線を引くということです。明確に名付けがたい感情や現象に無理やり輪郭を与えてしまうのが、言葉です。
映画には、表情、声色、沈黙など、言葉以外のものが沢山映ります。それらが、私が書きながら取りこぼしていったものたちを一つでも多く拾い上げてくれることを願っています。
そして、この物語の核が、いい映画を創るという意思以外の部分で歪められることのないよう、緊張感とともに祈っています。
※稲垣吾郎過去記事
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